COPD患者がインフルにかかった!訪問看護師が最初に見るのは?
看護師国家試験 第106回 午後 第55問 / 地域・在宅看護論 / 症状・疾患・治療に応じた看護
国試問題にチャレンジ
Aさん(65歳、男性)は、肺気腫( pulmonary emphysema )で在宅酸素療法を受けている。ある日、Aさんの妻(70歳)から「同居している孫がインフルエンザ( influenza )にかかりました。今朝から夫も 体が熱く、ぐったりしています」と訪問看護ステーションに電話で連絡があったため緊急訪問した。 訪問看護師が確認する項目で優先度が高いのはどれか。
- 1.喀痰の性状
- 2.胸痛の有無
- 3.関節痛の有無
- 4.経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO 2 〉
対話形式の解説
博士
今回は在宅看護の状況設定問題じゃ。ABCの優先順位という救急看護の基本が問われておる。
サクラ
Aさんは肺気腫で在宅酸素療法中ですよね。そこにインフルエンザが加わったら…。
博士
うむ、最悪のシナリオじゃ。COPDはインフルエンザ罹患で容易に急性増悪を起こし、呼吸不全から死亡に至ることもある。
サクラ
COPDの急性増悪ってどんな状態ですか?
博士
普段の症状が急激に悪化し、呼吸困難の増悪・喀痰の増量・膿性痰という三徴が出る。気道感染で起こることが多いのじゃ。
サクラ
肺気腫って、肺胞の壁が壊れてスカスカになる病気でしたよね。
博士
その通り。ガス交換の場が失われておるため、予備能が非常に少ない。ちょっとした感染でも一気に呼吸不全に傾く。
サクラ
だからこそSpO2を一番に見る必要があるんですね。
博士
救急看護の基本はABC、すなわちAirway・Breathing・Circulationじゃ。呼吸状態が最優先。SpO2が低下していれば即座に医師報告じゃ。
サクラ
でも酸素を使っているから、流量を上げればいいんじゃないですか?
博士
それが危険な落とし穴じゃ。COPDはCO2ナルコーシスのリスクがある。酸素を増やしすぎるとCO2が溜まって意識障害を起こすのじゃ。
サクラ
CO2ナルコーシス…初めて聞きました。
博士
慢性的に高CO2状態にある患者は、酸素が低いこと(低酸素刺激)で呼吸中枢が刺激されておる。そこに高濃度酸素を与えると、その刺激がなくなって呼吸抑制が起きるのじゃ。
サクラ
怖いですね。だから医師の指示のもとで酸素調整が必要なんですね。
博士
そう。他の選択肢を見ていこう。喀痰の性状は?
サクラ
感染時の膿性痰を確認する大事な項目だけど、生命予後には直結しませんね。
博士
胸痛、関節痛も大事じゃが、まず生命を守る観察を優先する。
サクラ
インフルエンザの関節痛は有名ですけど、確かに優先度は低いですね。
博士
あと、予防の重要性も覚えておこう。COPD患者はインフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンの接種が強く推奨されておる。
サクラ
家族内感染予防も大事ですね。今回は孫から感染したようなので…
博士
その通り。家族内ではマスク、手洗い、部屋の分離、抗インフルエンザ薬の予防投与など多面的な対策が必要じゃ。
サクラ
在宅看護では「重症化の見極め」が命を左右するんですね。
POINT
COPDで在宅酸素療法を受けている患者がインフルエンザに罹患した場合、急性増悪から呼吸不全に陥るリスクが極めて高いため、訪問看護師はまず呼吸状態、すなわちSpO2の確認を最優先します。喀痰・胸痛・関節痛も情報として必要ですが、ABCの原則に従えば呼吸評価が最上位です。同時にCO2ナルコーシスの危険があるため安易な酸素増量は避け、医師の指示のもとで対応することが重要です。日頃からのワクチン接種、家族内感染対策、急性増悪時の連絡体制の整備といった予防的関わりも訪問看護師の大切な役割であり、重症化を未然に防ぐ視点が在宅ケアの本質です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:Aさん(65歳、男性)は、肺気腫( pulmonary emphysema )で在宅酸素療法を受けている。ある日、Aさんの妻(70歳)から「同居している孫がインフルエンザ( influenza )にかかりました。今朝から夫も 体が熱く、ぐったりしています」と訪問看護ステーションに電話で連絡があったため緊急訪問した。 訪問看護師が確認する項目で優先度が高いのはどれか。
解説:正解は 4 です。Aさんは肺気腫(COPD)で在宅酸素療法を受けている慢性呼吸器疾患患者であり、インフルエンザ感染は容易にCOPDの急性増悪を引き起こし、生命を脅かす呼吸不全に進展するリスクが極めて高い状態です。訪問看護師が最も優先して確認すべきは呼吸状態、すなわちSpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)であり、低下していれば医師への連絡や酸素流量の調整、救急搬送の判断につながります。
選択肢考察
-
× 1. 喀痰の性状
感染時には喀痰の量や膿性化など変化が出るため大切な観察項目ではあるが、生命予後に直結する呼吸状態の評価が優先される。喀痰の性状は呼吸状態確認の後に続ける。
-
× 2. 胸痛の有無
激しい咳で筋肉痛が生じることや肺炎併発時に胸膜痛が出ることもあるが、呼吸状態評価が先。胸痛の訴えは問診で合わせて確認すればよい項目である。
-
× 3. 関節痛の有無
インフルエンザでは全身倦怠感・関節痛・筋肉痛が出るが、生命に直結する症状ではない。Aさんの場合は呼吸不全リスクのほうが優先度がはるかに高い。
-
○ 4. 経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO 2 〉
COPD+在宅酸素療法中の患者がインフルエンザに罹患した状況では、急性増悪によるII型呼吸不全が最大のリスク。SpO2の確認が最優先となり、低下があれば速やかに医師報告・救急対応を検討する。
COPDの急性増悪はウイルス・細菌感染(特にインフルエンザ、RSウイルス、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌など)で誘発されやすく、呼吸困難増悪・喀痰増量・膿性痰が三徴。普段より低いSpO2値、補助呼吸筋の使用、口すぼめ呼吸の増加、チアノーゼ、傾眠・意識障害(CO2ナルコーシス)に注意する。在宅酸素使用中の増悪時は自己判断で酸素流量を増やすとCO2貯留を悪化させる危険があるため、医師の指示を仰ぐことが原則。予防には毎年のインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンが重要で、家族内感染対策(マスク・手洗い・隔離)も欠かせない。
COPD+在宅酸素療法患者の感染症罹患というハイリスク状況でのトリアージ問題。「ABCの優先」「呼吸状態を最優先」という救急看護の基本原則を問う。
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