リンパ浮腫の患側ケアは優しく守るが合言葉
看護師国家試験 第107回 午後 第87問 / 地域・在宅看護論 / 症状・疾患・治療に応じた看護
国試問題にチャレンジ
Aさん( 65歳、女性 )は、5年前に乳癌( breast cancer )の左胸筋温存乳房切除術と左腋窩リンパ節郭清術を受けた。1年前に大腿骨転移のため日常生活動作< ADL >に一部介助が必要となり、訪問看護を利用し在宅で療養している。Aさんの左上腕内側の皮膚をつまむと健側より厚みがある。 訪問看護師がAさんに指導する左上腕のケア方法で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 1.指圧する。
- 2.皮膚の露出は少なくする。
- 3.保湿クリームを塗布する。
- 4.ナイロン製タオルで洗う。
- 5.アルカリ性石けんで洗浄する。
対話形式の解説
博士
Aさんは左腋窩リンパ節郭清を受けて5年、左上腕内側の皮膚が厚くなっておる。何が起きておるかわかるかな。
サクラ
リンパ浮腫ですね。リンパ節を取ったことでリンパ液の流れが悪くなっているんだと思います。
博士
その通りじゃ。ケアの基本は皮膚を守ることと感染を防ぐことじゃ。
サクラ
では選択肢1の指圧はどうですか。
博士
強い圧は組織を傷めるから不適切じゃ。ドレナージをするなら専門家の指導下でのみじゃな。
サクラ
選択肢2の皮膚の露出を少なくする、これはどうでしょう。
博士
虫刺されや擦り傷から蜂窩織炎になると一気に悪化するから、露出を控えるのは正しい。
サクラ
長袖や手袋の着用が推奨されるんですね。
博士
選択肢3の保湿クリーム塗布はどうじゃ。
サクラ
皮膚のバリア機能を保つために重要ですよね。正しい指導です。
博士
選択肢4のナイロンタオルは。
サクラ
擦りすぎて角質を傷つけそうなので、綿タオルで優しく洗う方が良いですね。
博士
選択肢5のアルカリ性石けんはどうか。
サクラ
皮脂を奪って乾燥を招くので、弱酸性の低刺激の物が望ましいです。
博士
よくできた。正解は2と3じゃ。
サクラ
患側での血圧測定や採血も避ける必要がありますよね。
博士
その通り。発赤や熱感があれば蜂窩織炎を疑って早めに受診を促すのじゃよ。
POINT
乳癌の腋窩リンパ節郭清後はリンパ浮腫を起こしやすく、患側上肢の皮膚保護と感染予防が最重要です。正解は2と3で、露出を控え保湿してバリア機能を保ち、弱酸性の石けんで優しく洗うのが基本です。強い指圧やナイロンタオル、アルカリ性石けんは避けます。患側での血圧測定や採血も控え、蜂窩織炎の徴候があれば早期に受診につなげましょう。
解答・解説
正解は 2 ・ 3 です
問題文:Aさん( 65歳、女性 )は、5年前に乳癌( breast cancer )の左胸筋温存乳房切除術と左腋窩リンパ節郭清術を受けた。1年前に大腿骨転移のため日常生活動作< ADL >に一部介助が必要となり、訪問看護を利用し在宅で療養している。Aさんの左上腕内側の皮膚をつまむと健側より厚みがある。 訪問看護師がAさんに指導する左上腕のケア方法で正しいのはどれか。2つ選べ。
解説:正解は 2 と 3 です。腋窩リンパ節郭清後の患側上肢はリンパ浮腫を起こしやすく、皮膚の厚みが増していることからもその状態が示唆されます。皮膚を保護して感染・外傷を防ぐことが最重要で、露出を控える、保湿してバリア機能を保つ、弱酸性の石けんで優しく洗うといった日常的なスキンケアが基本となります。
選択肢考察
-
× 1. 指圧する。
強い指圧や深いマッサージは組織を傷つけリンパ液貯留を悪化させる恐れがあります。実施するなら医療者指導下でのリンパドレナージに限定します。
-
○ 2. 皮膚の露出は少なくする。
虫刺され・擦過傷・日焼けは蜂窩織炎のリスクを高めます。長袖や手袋で患側上肢を保護することが推奨されます。
-
○ 3. 保湿クリームを塗布する。
保湿により皮膚のバリア機能を維持し、亀裂や感染を予防します。尿素配合などの保湿剤を用い、毎日のスキンケアに取り入れます。
-
× 4. ナイロン製タオルで洗う。
ナイロンタオルは角質層を傷つけ皮膚バリアを破綻させます。やわらかい綿タオルや素手で泡立てて優しく洗うのが望ましいです。
-
× 5. アルカリ性石けんで洗浄する。
アルカリ性石けんは皮脂を奪い乾燥を助長します。弱酸性で低刺激の石けんを選び、よく泡立てて使うのが適切です。
リンパ浮腫は患側上肢の血圧測定・採血・静脈ライン挿入も避けるのが原則です。予防と悪化防止には、弾性スリーブの適切な使用、肩より上に腕を挙上する体位、適度な運動(ウォーキング・軽いストレッチ)が有効です。発赤・熱感・疼痛があれば蜂窩織炎を疑い、早期に受診を促します。
乳癌腋窩郭清後のリンパ浮腫管理は、皮膚を保護し保湿する優しいスキンケアと感染予防が基本です。
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