咳で漏れるのはなぜ?腹圧性尿失禁と骨盤底筋の深い関係
看護師国家試験 第114回 午前 第19問 / 必修問題 / 日常生活援助技術
国試問題にチャレンジ
骨盤底筋訓練が有効な尿失禁はどれか。
- 1.流性尿失禁(overflow incontinence of urine)
- 2.機能性尿失禁(functional incontinence of urine)
- 3.切迫性尿失禁(urge incontinence of urine)
- 4.腹圧性尿失禁(stress incontinence of urine)
対話形式の解説
博士
今日は尿失禁の分類と治療を整理するぞ。タイプによって対応が全く違うから、しっかり押さえるのじゃ。
サクラ
尿失禁って4種類でしたっけ?
博士
その通り。腹圧性・切迫性・溢流性・機能性の4つじゃ。今日のテーマは骨盤底筋訓練が有効なのはどれか、じゃな。
サクラ
骨盤底筋…って下腹部の筋肉ですよね?
博士
骨盤の底にハンモックのように張って、膀胱・子宮・直腸を下から支える筋肉群じゃ。これが緩むと、お腹に力が入った瞬間に尿道を閉じきれずに尿が漏れる。これが腹圧性尿失禁じゃよ。
サクラ
咳やくしゃみで漏れるってやつですね。
博士
その通り。妊娠・出産で骨盤底筋が伸びたり、加齢や肥満で支持力が落ちたりすることで起こる。だから女性に圧倒的に多い。
サクラ
骨盤底筋訓練ってどうやるんですか?
博士
肛門・腟・尿道を「キュッ」と締めて3〜5秒キープし、ゆっくり緩める。これを1日30〜80回くらい繰り返す。ケーゲル体操とも呼ばれておるな。
サクラ
すぐに効くんですか?
博士
即効性はない。最低2〜3か月続けて初めて効果が出てくる。看護師は患者が継続できるよう、生活に組み込む工夫を指導するのが腕の見せ所じゃ。
サクラ
他の尿失禁では効かないんですか?
博士
切迫性尿失禁は過活動膀胱が原因で、膀胱が勝手に収縮する病態。治療は抗コリン薬やβ3作動薬、膀胱訓練(排尿間隔を少しずつ延ばす訓練)が中心じゃ。
サクラ
溢流性尿失禁は?
博士
前立腺肥大症や神経因性膀胱で膀胱がパンパンに溜まり、溢れて漏れる状態。原因疾患の治療や間欠的自己導尿(CIC)が必要で、骨盤底筋訓練では解決しない。
サクラ
機能性尿失禁は?
博士
認知症や運動機能障害で「トイレに間に合わない」状態じゃ。膀胱は正常だから、トイレを近くに置く・衣類を脱ぎやすくする・定時排尿を促すなどの環境調整が中心になる。
サクラ
タイプを正しく見極めることが治療の第一歩なんですね。
博士
その通り。同じ「漏れる」でも、原因と対応がまったく違う。看護師は排尿日誌を活用して、いつ・どのくらい・どんな状況で漏れるかを評価することが鑑別の鍵じゃ。
サクラ
あと、患者さんが恥ずかしがって相談しにくいテーマでもありますよね。
博士
そこも大事な視点じゃ。羞恥心に配慮し、プライバシーを守った環境で、生活への影響を一緒に考える姿勢が信頼関係を作る。尿失禁ケアは医療技術と人間性の両方が問われる領域なのじゃよ。
POINT
腹圧性尿失禁は骨盤底筋群の支持力低下により、咳やくしゃみなど腹圧上昇時に尿道閉鎖が不十分となって尿が漏れる病態で、骨盤底筋訓練(ケーゲル体操)が第一選択の保存療法です。一方、切迫性尿失禁は過活動膀胱、溢流性尿失禁は下部尿路閉塞や神経障害、機能性尿失禁は認知・運動機能障害が原因で、それぞれ異なる治療アプローチが必要です。骨盤底筋訓練は2〜3か月の継続で効果が現れるため、看護師は患者が日常生活に組み込めるよう具体的な指導を行います。尿失禁は羞恥心から相談されにくいテーマであり、プライバシー保護と尊厳に配慮した関わりが信頼関係構築の基盤となります。排尿日誌を活用したタイプ鑑別と、生活全体を見据えたケアが質の高い排泄支援につながります。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:骨盤底筋訓練が有効な尿失禁はどれか。
解説:正解は 4 の腹圧性尿失禁(stress incontinence of urine)です。腹圧性尿失禁は、咳・くしゃみ・笑い・重い物を持つなど腹圧が急に上昇した際に、骨盤底筋群の支持力低下によって尿道が十分に閉じられず尿が漏れる病態です。妊娠・出産や加齢、肥満により骨盤底筋が緩むことで起こり、女性に多くみられます。骨盤底筋訓練(ケーゲル体操)は弛緩した骨盤底筋を鍛えることで尿道閉鎖圧を高め、漏れを改善する第一選択の保存療法です。
選択肢考察
-
× 1. 流性尿失禁(overflow incontinence of urine)
溢流性尿失禁は前立腺肥大症や神経因性膀胱で膀胱に尿が過剰貯留し溢れ出る病態。原因疾患の治療や間欠的自己導尿(CIC)が中心で、骨盤底筋訓練は無効。
-
× 2. 機能性尿失禁(functional incontinence of urine)
認知症や運動機能障害でトイレに間に合わない状態。膀胱や尿道自体に異常はないため、環境調整(トイレ近接配置、衣類の工夫)や排尿誘導が対応の中心。
-
× 3. 切迫性尿失禁(urge incontinence of urine)
過活動膀胱による強い尿意切迫感で漏れる病態。抗コリン薬・β3作動薬や膀胱訓練(排尿間隔の延長)が治療の中心で、骨盤底筋訓練は補助的役割。
-
○ 4. 腹圧性尿失禁(stress incontinence of urine)
骨盤底筋の支持力低下が原因。骨盤底筋訓練(ケーゲル体操)が第一選択の保存療法であり、効果は2〜3か月の継続で現れる。
尿失禁は4分類が国試頻出。①腹圧性(骨盤底筋低下、女性多)、②切迫性(過活動膀胱)、③溢流性(下部尿路閉塞・神経障害)、④機能性(認知・運動機能低下)。両者を併せ持つ「混合性尿失禁」も実臨床では多い。骨盤底筋訓練は仰臥位や座位で肛門・腟・尿道を3〜5秒締めて緩める運動を1日数十回繰り返す。効果発現には2〜3か月の継続が必要。難治例ではTVT手術(中部尿道スリング)や尿道下スリング手術が選択される。看護師は排尿日誌の活用、骨盤底筋体操の指導、衣類・パッドの選択支援、患者の羞恥心への配慮ある関わりが大切である。
尿失禁の4分類のうち、骨盤底筋訓練が第一選択となるのは骨盤底筋の弛緩が原因の腹圧性尿失禁であることを問う問題。
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