緩和ケアの本質—QOLを中心に据える全人的アプローチ
看護師国家試験 第112回 午前 第6問 / 必修問題 / 看護における倫理と法律
国試問題にチャレンジ
緩和ケアの目標で正しいのはどれか。
- 1.疾病の治癒
- 2.余命の延長
- 3.QOLの向上
- 4.在院日数の短縮
対話形式の解説
博士
今回は緩和ケアの目標を問う必修問題じゃ。言葉のイメージに引きずられて『終末期=緩和ケア』と誤解しやすいので、まず定義から押さえるぞ。
アユム
緩和ケアの目標はQOL向上、でいいんですよね?
博士
その通り。WHO(2002年)の定義に『QOLを向上させるアプローチ』と明記されておる。核心を一語で表す問題じゃ。
アユム
疾病の治癒や延命は目標じゃないんですね?
博士
違う。治癒を目指すのは根治治療(キュア)、延命は延命治療の目的。緩和ケアは『どれだけ長く』ではなく『どれだけその人らしく生きられるか』を問うのじゃ。
アユム
でも末期がんのイメージが強くて…。
博士
よくある誤解じゃ。2002年のWHO定義以降、緩和ケアは『診断時から治療と並行して』行うものと位置付けられておる。日本でも2007年のがん対策基本法で同様に位置付けられた。
アユム
Total Painって聞いたことがあります。
博士
シシリー・ソンダースが提唱した『全人的苦痛』の概念じゃ。①身体的苦痛、②精神的苦痛、③社会的苦痛、④スピリチュアルペインの4側面を包括的に捉える。
アユム
スピリチュアルペインって具体的には?
博士
『なぜ自分が病気に』『生きる意味とは』といった存在や意味をめぐる苦痛じゃ。傾聴と共感、語りの場の提供が中心的な支援となる。
アユム
緩和ケアはどんな場で提供されるんですか?
博士
一般病棟の緩和ケアチーム、緩和ケア外来、緩和ケア病棟(PCU)、在宅緩和ケア、ホスピスなど多様じゃ。療養場所の選択を支援するのも看護の役割じゃ。
アユム
在院日数の短縮は関係ないんですか?
博士
緩和ケアの目標ではない。ただし、本人・家族の希望に応じて在宅移行を支援する過程で結果的に短縮されることはある。あくまで『結果』であり『目標』ではない。
アユム
がん以外にも緩和ケアは行うんでしょうか?
博士
心不全、COPD、認知症、神経難病など非がん疾患の緩和ケアも近年重視されておる。WHO定義も『生命を脅かす病』全般を対象としておるぞ。
アユム
早期緩和ケアが予後を改善するという話も聞きました。
博士
2010年のTemelらの研究(NEJM)で、進行非小細胞肺がん患者への早期緩和ケア導入群が、通常治療群よりQOLが高く、平均生存期間もむしろ延長したと報告された。これは緩和ケア観を塗り替える画期的な研究じゃった。
アユム
看護師は緩和ケアでどう関わるべきですか?
博士
苦痛アセスメント、症状マネジメント、家族ケア、意思決定支援(ACP)、グリーフケアなど多岐にわたる。『その人らしさ』を守る最前線の役割じゃ。
POINT
緩和ケアの目標は『QOL(生活の質)の向上』であり、WHOは2002年の定義で、生命を脅かす病に直面する患者と家族の身体的・心理社会的・スピリチュアルな苦痛を早期に評価・対応することを核心に据えています。疾病の治癒や余命の延長、在院日数の短縮は目標ではなく、緩和ケアは終末期に限定されず診断時から治療と並行して提供される点が現代的理解の鍵です。全人的苦痛(Total Pain)の概念に基づき、身体・精神・社会・スピリチュアルの4側面を包括的にケアし、早期緩和ケアはQOL向上だけでなく生命予後にも良い影響を与えることが報告されています。看護師は症状マネジメント、家族ケア、意思決定支援(ACP)、グリーフケアなど多面的な役割を担い、『その人らしさ』を最期まで支える実践が求められます。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:緩和ケアの目標で正しいのはどれか。
解説:正解は 3 の『QOLの向上』です。WHO(世界保健機関)は2002年に緩和ケアを『生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価し対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチ』と定義しています。つまり緩和ケアの究極の目標は『QOLの向上』であり、疾病の治癒や余命の延長、在院日数の短縮を第一の目的とはしません。また、緩和ケアは終末期に限定されず、がんなどの診断時から治療と並行して提供されるべきものとされています。
選択肢考察
-
× 1. 疾病の治癒
治癒を目指すのは根治的治療(キュア)の目標。緩和ケアは治癒ではなく、苦痛緩和を通じたQOLの向上を目標とする。ただし治癒的治療と並行して行われる点は重要。
-
× 2. 余命の延長
延命治療の主目的であり、緩和ケアの目標ではない。近年は早期緩和ケアが予後改善に寄与する報告もあるが、それでも目的は苦痛緩和とQOL向上である。
-
○ 3. QOLの向上
WHO定義の核心そのもの。身体的苦痛だけでなく、心理社会的・スピリチュアルな痛みにも包括的に介入し、患者・家族の生活の質を高めることを目指す。
-
× 4. 在院日数の短縮
医療経済的な指標であり、緩和ケアの目標ではない。むしろ患者と家族の希望に応じた療養場所の選択(在宅・ホスピス・病院)を支援することが緩和ケアの役割。
WHOは緩和ケアを『診断時から始まり、治療と並行して提供されるもの』と位置付けており、『終末期ケア=緩和ケア』ではない点に注意が必要である。Total Pain(全人的苦痛)という概念は、身体的・精神的・社会的・スピリチュアルな4側面の苦痛を包括的に捉えるもので、シシリー・ソンダース(ホスピスの創始者)が提唱した。わが国では2007年のがん対策基本法で『がんと診断されたときからの緩和ケア』が基本施策に位置付けられ、緩和ケアチーム・緩和ケア外来・緩和ケア病棟の整備が進められている。
緩和ケアの目的がQOLの向上にあること、そして終末期に限らず診断時から行うものであることを押さえる必修問題。
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