高齢者は薬が効きすぎる—老年期の身体変化と薬物動態
看護師国家試験 第114回 午後 第8問 / 必修問題 / 人間の特性とライフサイクル
国試問題にチャレンジ
老年期の身体機能の変化で正しいのはどれか。
- 1.耐糖能は向上する。
- 2.尿濃縮力は向上する。
- 3.薬物代謝は遅延する。
- 4.肺の残気量は減少する。
対話形式の解説
博士
今日は老年期の身体機能変化について学ぶぞ。選択肢を見ながら一つずつ検討していこう。
アユム
「向上する」と「遅延する」「減少する」が混ざっていますね。
博士
そうじゃ。老年期は基本的に「機能低下」と覚えるとよい。耐糖能は向上するか低下するか?
アユム
糖尿病が増える年代だから…低下しますよね。
博士
その通り。インスリン分泌の低下、インスリン抵抗性の増大、筋肉量減少で糖取り込み能力も落ちる。だから高齢者は2型糖尿病が多い。
アユム
尿濃縮力は?
博士
これも低下する。腎血流量や糸球体濾過量、尿細管機能のすべてが落ちるから濃い尿が作れなくなる。結果として高齢者は脱水になりやすい。
アユム
夏場の熱中症リスクが高いのもそのためですね。
博士
うむ。さらに口渇感の鈍化も加わって脱水が顕著になる。看護師は水分摂取の声かけが重要じゃ。
アユム
肺の残気量は減少するんですか?
博士
これは逆じゃ。肺胞や気道の弾性が低下し、呼気時に十分吐き切れず残気量は「増加」する。一方で肺活量は低下するから、結果としてガス交換効率が悪くなる。
アユム
残るのが薬物代謝の遅延…これが正解ですね。
博士
そうじゃ。肝血流量の低下、肝細胞数の減少、薬物代謝酵素CYP450系の活性低下、さらに腎機能低下による排泄遅延が重なる。
アユム
だから高齢者は薬の血中濃度が上がりやすいんですね。
博士
その通り。さらに体内水分量の減少と脂肪量の増加で分布容積も変わる。脂溶性薬物(ベンゾジアゼピン系睡眠薬など)は作用が遷延しやすい。
アユム
ポリファーマシー問題もこれと関係していますね。
博士
鋭いの。高齢者は複数疾患を持ち多剤併用になりがちじゃが、薬物相互作用や有害事象のリスクが高まる。6剤以上で有害事象が増えるという報告もある。
アユム
看護師として薬剤管理のとき、何を注意すればいいですか?
博士
副作用の早期発見、服薬アドヒアランス、内服の確実な実施、定期的な処方見直しの提案じゃな。腎機能(eGFR)から薬剤投与量を調整する視点も大切じゃ。
アユム
老年期の身体機能変化は薬物動態だけでなく、看護全般に影響しますね。
博士
うむ。サルコペニア、フレイル、転倒、嚥下機能低下、感覚機能低下…どれも生活機能に直結する。包括的な老年看護の視点が必要じゃ。
アユム
「機能低下」を基本に、各臓器系の特徴をセットで整理して覚えます。
POINT
老年期では加齢により全身の生理機能が低下します。なかでも薬物動態の変化は重要で、肝血流量・薬物代謝酵素活性の低下と腎排泄機能の低下により、薬物代謝・排泄が遅延し血中濃度が上昇しやすくなります。耐糖能低下、尿濃縮力低下、肺残気量の増加(肺活量低下)も加齢の代表的変化で、糖尿病・脱水・呼吸機能低下の背景となります。看護師は高齢者の身体的特徴を理解し、副作用の早期発見、水分摂取支援、ポリファーマシー対策、転倒予防など多面的な支援を行います。「老年期=機能低下」を基本軸に、各臓器系の具体的変化を整理することが必修問題対策の鍵です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:老年期の身体機能の変化で正しいのはどれか。
解説:正解は 3 です。老年期では加齢に伴い肝血流量・肝細胞機能が低下し、薬物代謝酵素(特にCYP450系)の活性も低下します。さらに腎機能低下により薬物排泄が遅延するため、薬物の血中濃度が高くなりやすく、作用増強や副作用発現のリスクが高まります。これに加えて体内総水分量の減少と脂肪量の増加が分布容積を変化させ、脂溶性薬物の作用が遷延しやすくなります。
選択肢考察
-
× 1. 耐糖能は向上する。
加齢に伴いインスリン分泌の低下、インスリン抵抗性の増大、筋肉量減少による糖取り込み低下が生じ、耐糖能は低下する。高齢者で2型糖尿病が多い理由。
-
× 2. 尿濃縮力は向上する。
腎血流量・糸球体濾過量の低下と尿細管機能の低下により尿濃縮力は低下する。脱水を起こしやすい原因。
-
○ 3. 薬物代謝は遅延する。
肝血流量低下・肝細胞減少・CYP活性低下、腎機能低下による排泄遅延により薬物代謝・排泄が遅延し、副作用リスクが上昇する。
-
× 4. 肺の残気量は減少する。
肺胞・気道の弾性低下と呼吸筋力低下により残気量は増加する。一方で肺活量は低下するため、ガス交換効率が悪化する。
老年期の主な生理機能変化を整理すると、循環器系:最大心拍数低下・血管硬化・血圧上昇傾向、呼吸器系:肺活量低下・残気量増加・換気効率低下、腎泌尿器系:糸球体濾過量低下・尿濃縮力低下・夜間尿増加、消化器系:唾液・胃酸分泌低下・腸蠕動低下、内分泌:インスリン抵抗性増加・耐糖能低下、神経系:神経伝導速度低下・短期記憶低下、感覚器:視力・聴力低下、骨格筋:筋肉量・筋力低下(サルコペニア)など。これらは全身に及び、薬物動態・栄養状態・転倒リスクに直結する。
高齢者の薬物動態の特徴を問う問題。「肝・腎機能低下→代謝・排泄遅延→副作用増加」のロジックを押さえる。
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