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インスリン療法の落とし穴 低血糖との戦いをマスターせよ

看護師国家試験 第114回 午後 第17問 / 必修問題 / 薬物の作用と管理

国試問題にチャレンジ

114回 午後 第17問

インスリン療法で正しいのはどれか。

  1. 1.毎回同じ部位に注射する。
  2. 2.有害事象は低血糖である。
  3. 3.就寝前は超速効型製剤を使用する。
  4. 4.2型糖尿病(type 2 diabetes mellitus)の治療法として必須である。

対話形式の解説

博士 博士

今回はインスリン療法について学ぶぞ。1型糖尿病と2型糖尿病、インスリンが必須なのはどっちか分かるかな?

サクラ サクラ

1型ですよね。膵臓のβ細胞が壊れてインスリンが出なくなるから。

博士 博士

正解じゃ。1型糖尿病ではインスリン療法が生命維持に必須。2型糖尿病ではまず食事療法と運動療法、必要なら経口薬を使う。インスリンは最終手段ではないが、必須ではない。

サクラ サクラ

選択肢4は2型糖尿病で必須となっていますが、これは間違いですね。

博士 博士

その通り。2型でもインスリンを使うことはあるが、必須とは言えん。

サクラ サクラ

では選択肢2の「有害事象は低血糖」はどうですか?

博士 博士

これが正解じゃ。インスリン療法で最も頻繁に起こり、最も気をつけるべき有害事象が低血糖じゃ。

サクラ サクラ

低血糖の症状って、どんなのがありますか?

博士 博士

血糖値が70mg/dL以下になると交感神経症状として冷汗、動悸、手指振戦、空腹感、顔面蒼白などが出る。さらに50mg/dL以下になると中枢神経症状で頭痛、意識障害、けいれん、昏睡となる。

サクラ サクラ

対処法はどうするんですか?

博士 博士

意識があればブドウ糖10g程度を経口摂取。意識がなければブドウ糖静注やグルカゴン筋注じゃ。患者には常にブドウ糖を携帯させ、家族にも対処法を指導する。

サクラ サクラ

選択肢1の「毎回同じ部位に注射」はダメなんですよね?

博士 博士

ダメじゃ。同じ場所ばかりに打っていると皮下脂肪が硬くなったり厚くなったりする「リポハイパートロフィー」が起こり、インスリンの吸収がムラになる。

サクラ サクラ

じゃあどうローテーションすればいいんですか?

博士 博士

腹部、上腕、大腿、臀部などを計画的に変える。さらに同じ部位の中でも数センチずつずらして打つ。吸収は腹部が一番速いから食事との関係も意識する必要がある。

サクラ サクラ

選択肢3の「就寝前は超速効型」も間違いですよね?

博士 博士

超速効型は10〜20分で効き始めて3〜5時間で切れる、食直前に打つインスリンじゃ。就寝前に打ったら夜中に低血糖を起こしてしまうぞ。

サクラ サクラ

就寝前は何を使うんですか?

博士 博士

基礎分泌を補う持効型溶解インスリン(グラルギン、デグルデクなど)じゃ。1日通して安定した低濃度のインスリンを供給して空腹時血糖を抑える。

サクラ サクラ

Basal-bolus療法ってよく聞きますね。

博士 博士

それじゃ。持効型を1日1回、超速効型を毎食前という4回打ちで、生理的なインスリン分泌に近づける治療法じゃ。1型糖尿病の標準治療になっておる。

サクラ サクラ

看護師としては低血糖の早期発見と教育が中心ですね。

博士 博士

その通り。シックデイ対応、運動前の補食、アルコール摂取時の注意なども含めて、患者の生活全体を見据えた支援が大切じゃ。

POINT

インスリン療法は外因性インスリンで血糖を是正する治療で、最も頻度が高く重大な有害事象は低血糖です。同一部位への反復注射はリポハイパートロフィーを生じるためローテーションが必要で、超速効型は食直前、就寝前は持効型溶解インスリンを使うのが原則です。インスリン療法が必須なのは1型糖尿病であり、2型糖尿病では食事・運動・経口薬が第一選択で必須ではありません。看護師は注射手技の指導、注射部位の観察、低血糖症状と対処法の教育、シックデイ対応など、患者のセルフマネジメントを支援する幅広い役割を担います。

解答・解説

正解は 2 です

問題文:インスリン療法で正しいのはどれか。

解説:正解は 2 の「有害事象は低血糖である。」です。インスリン療法は外因性インスリンを補充することで血糖値を是正する治療法で、1型糖尿病では生命維持に必須、2型糖尿病でも経口血糖降下薬で十分なコントロールが得られない場合や妊娠・周術期などに用いられます。最も頻度が高く重要な有害事象は低血糖で、インスリン量過多・食事摂取量不足・激しい運動・アルコール多飲などで誘発されます。低血糖は冷汗・動悸・手指振戦・空腹感などの交感神経症状から始まり、進行すると意識障害・けいれん・昏睡を起こし、放置すれば不可逆性の脳障害や死亡に至る危険な状態です。

選択肢考察

  1. × 1.  毎回同じ部位に注射する。

    同一部位への反復注射はリポハイパートロフィー(皮下硬結・脂肪肥厚)を生じ、インスリン吸収が不安定になる。腹部・大腿・上腕・臀部などの注射部位を計画的にローテーションすることが原則。

  2. 2.  有害事象は低血糖である。

    インスリン療法で最も頻度が高く臨床的に重要な有害事象は低血糖。患者・家族にブドウ糖の携帯と低血糖時の対処を指導する必要がある。

  3. × 3.  就寝前は超速効型製剤を使用する。

    超速効型は作用発現10〜20分・持続3〜5時間で食事直前に使用するもの。就寝前には基礎分泌を補う持効型溶解インスリン(または中間型)を使用するのが基本。超速効型を就寝前に使うと夜間低血糖を起こす危険がある。

  4. × 4.  2型糖尿病(type 2 diabetes mellitus)の治療法として必須である。

    2型糖尿病では食事療法・運動療法・経口血糖降下薬が第一選択であり、インスリン療法は必須ではない。インスリン分泌が枯渇している場合や著明高血糖時、妊娠時、周術期などに導入される。インスリン療法が必須となるのは1型糖尿病。

インスリン製剤は作用時間で5種類に大別される。①超速効型(リスプロ・アスパルト・グルリジン):食直前、②速効型(レギュラー):食前30分、③中間型(NPH)、④持効型溶解(グラルギン・デテミル・デグルデク):1日1〜2回基礎分泌補充、⑤混合型。基礎−追加療法(basal-bolus療法)では持効型1回+食前の超速効型3回が標準的。注射部位の吸収速度は腹部>上腕>大腿>臀部の順に速い。低血糖時は意識があればブドウ糖10g経口、意識がなければグルカゴン筋注または50%ブドウ糖静注で対応する。

インスリン療法の基本的な注意点を問う問題。最重要かつ最頻の有害事象は低血糖であることを核心に、注射部位ローテーション、製剤の使い分け、適応疾患の違いを整理する。