リハ職種の役割分担を見極める
看護師国家試験 第105回 午後 第36問 / 基礎看護学 / 看護の基本となる概念
国試問題にチャレンジ
Aさん(56歳、男性)は、脳梗塞(cerebral infarction)の後遺症のためにリハビリテーションをしている。食事中に箸がうまく使えずイライラしている。 この状況で看護師が最も連携すべき専門職はどれか。
- 1.精神保健福祉士
- 2.社会福祉士
- 3.理学療法士
- 4.作業療法士
対話形式の解説
博士
今日は105回午後155問、脳梗塞後遺症で箸がうまく使えないAさんの事例を考えよう。
アユム
博士、Aさんは56歳男性、脳梗塞後遺症で箸が使えずイライラしているんですね。
博士
そうじゃ。この事例のポイントは『箸が使えない』という具体的な困りごとが何の障害によるものかを見極めることじゃ。
アユム
手指の細かい動きができないということですね。
博士
その通り。これを巧緻動作障害あるいは上肢の微細運動障害という。正解は4の作業療法士じゃ。
アユム
なぜPTではなくOTなんですか?
博士
リハビリ職種の役割分担を整理しよう。PT(理学療法士)は寝返り・起立・歩行など『基本動作』、OT(作業療法士)は食事・整容・家事など『応用動作・作業』、ST(言語聴覚士)は言語・発声・摂食嚥下を担当するんじゃ。
アユム
箸の操作は応用動作ですね。
博士
そう。さらにOTは自助具の選定や代償動作の指導も行う。太柄の箸やユニバーサルカフなど、工夫の幅が広いんじゃ。
アユム
選択肢1の精神保健福祉士はどうですか?
博士
PSWは精神障害者の社会復帰支援が専門じゃ。Aさんのイライラは巧緻動作障害という身体的原因から生じる二次的な情動反応で、精神疾患ではない。
アユム
選択肢2の社会福祉士は?
博士
福祉サービス利用や経済・社会的問題の相談援助が中心で、食事動作そのものへの介入は専門外じゃ。
アユム
選択肢3の理学療法士は基本動作担当でしたね。
博士
うむ。脳梗塞なら歩行訓練などでPTも関わるが、『箸』に限定すればOTの領域じゃ。
アユム
イライラへのケアはどう考えますか?
博士
作業療法の成功体験を積むことで自己効力感が高まり、情動も安定していく。原因にアプローチすれば結果として情動も改善するという発想が大切じゃ。
アユム
多職種連携でチームアプローチですね。
博士
その通り。脳卒中リハは医師・看護師・PT・OT・ST・栄養士・MSWなどのチームで行うのが標準じゃ。
アユム
自助具の例も覚えておくと役立ちそうです。
博士
太柄スプーン、万能カフ、滑り止めマットなど、OTが選定する自助具は多い。在宅復帰支援でも重要じゃ。
POINT
脳梗塞後遺症で箸が使えないAさんの課題は上肢の巧緻動作障害であり、日常生活動作の作業面を支援する作業療法士(OT)が最も適切な連携先です。PTは基本動作、STは言語・嚥下、OTは応用動作と役割分担されており、箸操作訓練や自助具選定はOTの中核業務です。イライラは巧緻動作障害からの二次的情動反応と捉え、作業の成功体験を積ませるエンパワメント的介入が有効で、多職種チームでの包括的支援が望まれます。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:Aさん(56歳、男性)は、脳梗塞(cerebral infarction)の後遺症のためにリハビリテーションをしている。食事中に箸がうまく使えずイライラしている。 この状況で看護師が最も連携すべき専門職はどれか。
解説:正解は 4 です。Aさんは脳梗塞後遺症により箸を使うという上肢の巧緻動作(手指の微細運動)に障害が生じ、食事というADL(日常生活動作)の遂行が困難になってイライラという情動反応を呈しています。箸の使用は食事動作という『作業』の一部であり、作業療法士(OT: Occupational Therapist)の専門領域です。OTは身体障害・精神障害・発達障害・老年期障害などを対象に、日常生活動作や仕事・余暇などの作業を通じてその人らしい生活の再獲得を支援する専門職で、巧緻動作訓練、自助具の選定、動作指導などを担当します。
選択肢考察
-
× 1. 精神保健福祉士
精神保健福祉士(PSW)は精神障害者の社会復帰や生活支援を行う専門職で、イライラしているからといってまず連携する職種ではありません。イライラの原因は巧緻動作障害にあります。
-
× 2. 社会福祉士
社会福祉士は福祉サービス利用や経済・社会的問題の相談援助を担う専門職で、食事動作そのものへの介入は専門外です。
-
× 3. 理学療法士
理学療法士(PT)は寝返り・起立・歩行など基本動作や関節可動域・筋力・麻痺改善など身体機能の基本的回復を担当します。手指の巧緻動作訓練はOTの領域であり、PTよりOTが優先されます。
-
○ 4. 作業療法士
作業療法士は食事・着替え・家事・仕事など生活上の『作業』の再獲得を支援します。箸操作の訓練や自助具の選定、代償動作の指導が可能で、この事例で最も連携すべき職種です。
リハビリテーションの職種分担を整理すると、PT(理学療法士)は基本動作(寝返り・起立・歩行)と身体機能、OT(作業療法士)は応用動作(食事・整容・家事)と精神・発達領域、ST(言語聴覚士)は言語・発声・摂食嚥下を担当します。脳梗塞後遺症では片麻痺・高次脳機能障害・嚥下障害などが複合するため、PT・OT・ST・看護師・医師・栄養士による多職種チームでの包括的アプローチが必要です。イライラには作業の成功体験を積むエンパワメント的介入が有効です。
リハビリテーション職種(PT・OT・ST)の役割分担を理解し、症例の課題(巧緻動作障害)に適した連携先を選べるかが問われています。
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