ラポールとは?ー看護師と患者の信頼関係を築く技法
看護師国家試験 第106回 午前 第37問 / 基礎看護学 / 看護の基本となる概念
国試問題にチャレンジ
患者と看護師の関係において、ラポールを意味するのはどれか。
- 1.侵されたくない個人の空間
- 2.人間対人間の関係の確立
- 3.意図的な身体への接触
- 4.自己開示
対話形式の解説
博士
今日は「ラポール」という用語を学ぶぞ。心理学でも看護でも重要なキーワードじゃ。
サクラ
ラポールって、よく聞きますけど、正確には何ですか?
博士
もともとはフランス語で「橋を架ける」という意味から来た心理学用語で、援助者と対象者の間に築かれる相互信頼の関係を指す。
サクラ
「信頼関係」と言い換えてもいいですか?
博士
基本的にはそう。ただし一方的に信頼するのではなく、相互に尊重し合い、心を開いて関わり合える状態がラポール。
サクラ
看護ではどう位置づけられているんですか?
博士
ジョイス・トラベルビーの『人間対人間の看護』が有名じゃ。看護師は「看護師と患者」という役割を超え、「人間と人間」として関わり合うべきという立場で、ラポールをその関係の最終段階として位置づけた。
サクラ
それが選択肢2の「人間対人間の関係の確立」なんですね。
博士
その通り。トラベルビーの看護過程は①最初の出会い→②同一性の出現(互いを役割ではなく個人として認識)→③共感→④同感→⑤ラポール、という5段階じゃ。
サクラ
選択肢1の「侵されたくない個人の空間」は違いますよね?
博士
それは「パーソナルスペース」じゃ。エドワード・ホールが提唱した概念で、密接距離(〜45cm)、個体距離(45cm〜1.2m)、社会距離(1.2〜3.6m)、公衆距離(3.6m〜)に分けられる。看護師は密接距離に入ることが多い仕事じゃから、信頼関係なしに近づくと警戒を生む。
サクラ
選択肢3のタッチングは?
博士
意図的に相手に触れることで安心感や親近感を伝える非言語コミュニケーション技法じゃ。ラポール形成を助ける「技術」ではあるが、ラポールそのものではない。
サクラ
選択肢4の自己開示は?
博士
自分の経験や感情を相手に伝えること。看護師がほどよく自己開示すると、患者も心を開きやすくなる。これもラポール形成の要素の一つじゃな。
サクラ
ラポールを築くには、具体的にどうしたらいいんですか?
博士
傾聴、共感、誠実な態度、非言語コミュニケーション(アイコンタクト・うなずき・表情)、適切なパーソナルスペースの尊重、守秘義務、約束を守ることなどじゃ。
サクラ
コミュニケーションの「傾聴」と「共感」は別物なんですか?
博士
傾聴は相手の話を遮らず心を向けて聴くこと、共感は相手の感情を自分のことのように感じ、それを相手に伝え返すことじゃ。両方そろって信頼が育まれる。
サクラ
逆にラポール形成を妨げるものって?
博士
評価的態度、助言の押し付け、否定、上から目線、多忙ぶりを前面に出す、プライバシー軽視などじゃな。
サクラ
看護師は技術だけじゃなくて、関係性を築く力も求められるんですね。
博士
その通り。技術的ケアも、ラポールがあって初めて患者が受け入れる。ラポールは看護の土台じゃ。
POINT
ラポール(rapport)はもともと心理学用語で、援助者と対象者の間に築かれる相互的な信頼関係を指します。看護学ではトラベルビーの『人間対人間の看護』で看護過程の最終段階として位置づけられ、「人間対人間の関係の確立」がラポールの本質です。混同されやすい概念として、パーソナルスペース(侵されたくない個人の空間)、タッチング(意図的身体接触)、自己開示(自分の経験を伝えること)があり、それぞれラポールを支える技術・要素ではあっても、ラポールそのものではありません。ラポールを築くには傾聴・共感・誠実な態度・非言語コミュニケーション・プライバシー尊重が不可欠で、看護実践のあらゆる場面でその土台になります。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:患者と看護師の関係において、ラポールを意味するのはどれか。
解説:正解は 2 です。ラポール(rapport)はもともと心理学用語で、援助者と対象者の間に築かれる相互的な信頼関係を指します。看護学ではジョイス・トラベルビーが著書『人間対人間の看護』の中で看護過程の最終段階として位置づけ、「観察者と対象者」ではなく「人間と人間」として互いを認め合い信頼しあう関係こそ看護の基盤であるとしました。したがって「人間対人間の関係の確立」がラポールに該当します。
選択肢考察
-
× 1. 侵されたくない個人の空間
これは「パーソナルスペース(個人空間)」の説明。文化や相手との関係性によって距離が変わる。ラポールとは別概念。
-
○ 2. 人間対人間の関係の確立
ラポールの本質は、肩書きや役割を超えて人間として向き合い、信頼しあう関係。トラベルビーの看護理論における中核概念でもある。
-
× 3. 意図的な身体への接触
これは「タッチング」の説明。非言語的コミュニケーションの一つで、安心感を与える手技。ラポール形成を助ける技術ではあるが、ラポールそのものではない。
-
× 4. 自己開示
自己開示は自分の感情・考え・経験を相手に伝えること。ラポール形成の過程で重要な要素だが、ラポールそのものを指す用語ではない。
トラベルビーの看護過程は①最初の出会い(original encounter)→②同一性の出現(emerging identities)→③共感(empathy)→④同感(sympathy)→⑤ラポール(rapport)の5段階。ラポールは信頼関係が築かれ患者のニーズに効果的に応えられる最終段階として位置づけられる。看護における関連概念:パーソナルスペース(個人空間)、タッチング、自己開示、アサーティブコミュニケーション、傾聴、共感などは国試で頻出。ラポール形成の要素として、非言語的サイン(アイコンタクト、うなずき)、適切な距離、傾聴、共感表現、誠実さなどが挙げられる。
心理学・看護学における「ラポール」の定義を、混同しやすい類似概念(パーソナルスペース・タッチング・自己開示)と区別して理解できるかを問う問題。
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