転倒予防と自立促進の両立——要支援2の高齢者に『立ちくらみ確認』をすすめる理由
看護師国家試験 第109回 午前 第68問 / 老年看護学 / 高齢者の生活を支える看護
国試問題にチャレンジ
Aさん( 82 歳、女性)は、要支援 2 である。Aさんの屋内での転倒予防と自立の促進のため、自宅で介護する家族への指導で適切なのはどれか。
- 1.車椅子での移動とする。
- 2.移動時にスリッパを使用する。
- 3.手すりがない場所での歩行を避ける。
- 4.移動の前に立ちくらみの有無を確認する。
対話形式の解説
博士
今日は82歳の要支援2のAさんの在宅ケアについて考えるぞ。屋内での転倒予防と自立促進を両立させるにはどんな指導が適切か、というテーマじゃ。
アユム
要支援2ってどのくらいの状態なんですか?
博士
要支援2は立ち上がりや歩行に何らかの支えが必要だが、排泄や食事はおおむね自立している状態じゃ。日常生活全体は自分でできるが、筋力やバランスがやや低下しておる。
アユム
選択肢を見ると、どれも転倒予防に関係しそうで迷いますね。
博士
大事なのは『転倒予防』と『自立促進』を同時に達成することじゃ。過保護にしすぎると筋力低下や廃用症候群を招き、かえって転倒しやすくなるのじゃよ。
アユム
車椅子での移動に切り替えるのはどうですか?
博士
要支援2で歩けるのに車椅子にしてしまうと、歩行機会が失われて筋力があっという間に落ちる。自立促進の真逆の対応じゃ。
アユム
スリッパはどうですか?楽そうですが。
博士
スリッパは転倒リスクを高める典型的な履物じゃ。滑る、脱げる、つま先を引っかける。踵のある靴や滑り止め付きの室内履きが推奨される。
アユム
手すりがない場所での歩行を避けるのも、一見すると安全そうですが…
博士
歩行機会を過度に制限するとフレイルが進行する。手すりの設置など環境整備を進めつつ、可能な範囲で歩行を続けることが重要なのじゃ。
アユム
残る選択肢は『移動前に立ちくらみを確認する』ですね。
博士
これが正解じゃ。高齢者は加齢による循環調節機能の低下に加え、降圧薬や睡眠薬、抗不安薬などで起立性低血圧を起こしやすい。立ちくらみに気づかず動き出すと一瞬で倒れてしまうのじゃよ。
アユム
立ち上がる前にゆっくり動作し、ふらつきがあれば少し座って様子を見る、という習慣が大事なんですね。
博士
うむ。高齢者の転倒リスク要因は内的要因(筋力低下・バランス低下・起立性低血圧・認知機能低下・多剤併用)と外的要因(段差・滑る床・暗い照明・不適切な履物)に分けられる。
アユム
原因が複合的なんですね。
博士
だから予防策も複合的になる。手すり・段差解消・照明・履物・運動習慣・薬剤見直しなどを総合的に進めるのじゃ。
アユム
転倒は骨折から寝たきりへの入り口になることも多いですもんね。
博士
その通り。転倒予防は単なる安全対策ではなく、QOL維持の最重要課題の一つじゃ。
POINT
要支援2の高齢者に対する転倒予防指導では、運動機能を過度に制限せず、起立性低血圧などのリスク要因を個別に排除することが重要です。移動前に立ちくらみの有無を確認することは、高齢者に多い循環調節機能低下や降圧薬・睡眠薬の影響による転倒を防ぐ有効な方法です。車椅子への切り替えや手すりのない場所での歩行回避は筋力低下を招き自立を阻害、スリッパは滑りやすく転倒リスクを高めるため不適切です。転倒は骨折・寝たきり・ADL低下の大きな引き金となるため、内的要因と外的要因の両面から環境・運動・薬剤を総合的に見直す必要があります。看護師は『安全』と『自立』のバランスを意識した指導で、高齢者の生活の質を支える役割を担います。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:Aさん( 82 歳、女性)は、要支援 2 である。Aさんの屋内での転倒予防と自立の促進のため、自宅で介護する家族への指導で適切なのはどれか。
解説:正解は 4 です。要支援2は立ち上がりや歩行に何らかの支えを要するが、日常生活の多くは自立している状態である。屋内での転倒予防と自立の促進を両立させるためには、運動機能を過度に制限せず、転倒のリスク要因を個別に排除する指導が求められる。高齢者は加齢による循環調節機能の低下、降圧薬や睡眠薬などの影響で起立性低血圧を起こしやすい。移動の前に立ちくらみの有無を確認し、症状があれば座って様子をみる、ゆっくり立ち上がるなどの対応が転倒予防に直結する。
選択肢考察
-
× 1. 車椅子での移動とする。
要支援2は歩行が可能な状態であり、車椅子に切り替えると残存する歩行機能が急速に低下する。廃用症候群や筋力低下を招き、自立の促進という目的に反する。
-
× 2. 移動時にスリッパを使用する。
スリッパは滑りやすく脱げやすいため、むしろ転倒リスクを高める履物である。屋内では踵のある歩きやすい靴や滑り止め付きの室内履きを選ぶべきである。
-
× 3. 手すりがない場所での歩行を避ける。
歩行機会を過度に制限すると筋力低下やフレイルの進行を招く。手すり設置などの環境整備を進めつつ、可能な範囲で歩行を継続することが自立促進につながる。
-
○ 4. 移動の前に立ちくらみの有無を確認する。
高齢者は起立性低血圧を起こしやすく、立ちくらみに気づかず動き出すと転倒リスクが高まる。移動前にふらつきや立ちくらみの有無を確認し、症状があればゆっくり立ち上がるなどの対応が有効な転倒予防策となる。
高齢者の転倒は骨折・寝たきり・ADL低下の大きな引き金となる。転倒リスク因子は内的要因と外的要因に分けられる。内的要因は加齢に伴う筋力・バランス・視力低下、起立性低血圧、認知機能低下、複数疾患や多剤併用(特に降圧薬・睡眠薬・抗不安薬)など。外的要因は段差・敷物のめくれ・滑りやすい床・暗い照明・不適切な履物など。予防策として、手すりや段差解消、照明の工夫、滑りにくい履物の選択、適切な運動習慣(ウォーキング・バランス訓練・下肢筋力トレーニング)、薬剤の見直しなどが推奨される。介護予防事業では転倒予防教室や体操教室が地域で開催されており、要支援者も積極的に利用することができる。
要支援2の高齢者の『転倒予防』と『自立促進』を両立させる指導を問う問題。過保護にせず、起立性低血圧などのリスク要因を個別に排除する視点が鍵。
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