看取り期の家族への声かけ
看護師国家試験 第103回 午前 第102問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(85歳、男性)は、5年前に脳梗塞(cerebral infarction)を発症し右片麻痺があり、要介護3の認定を受けた。Aさんの子どもは遠方に住んでおり、腰痛のあるAさんの妻(80歳)が1人で介護している。Aさんは、週2日通所介護を利用している。 3年後、Aさんは誤嚥性肺炎(aspiration pneumonia)で入退院を数回繰り返したことからADLが低下し、要介護5になった。そのため、Aさんの妻の腰痛が悪化し、Aさんは介護老人福祉施設に入所した。入所後1か月が経過し、Aさんは発熱、傾眠傾向が続いている。 Aさんの妻は医師から死期が近いと説明を受け動揺した。Aさんの妻は「自宅で看取ることができず、夫に悪いと思っています」と施設の看護師に話した。 Aさんの妻への声かけで最も適切なのはどれか。
- 1.「あなたがしっかりしましょう」
- 2.「自宅で看取るようにしましょう」
- 3.「長い間、十分介護をしてきましたよ」
- 4.「私たちが看取りますので大丈夫ですよ」
対話形式の解説
博士
Aさんは介護老人福祉施設に入所し、死期が近いと言われたところじゃ。妻は『自宅で看取れず夫に悪い』と話しておるの。
アユム
長年介護してきた妻が、最後の最後で自分を責めているんですね。
博士
そうじゃ。実際は腰痛悪化で在宅が限界になっての入所、どうしようもなかった経過じゃ。
アユム
看護師としてどんな言葉をかけたらいいですか。
博士
正解は3の『長い間、十分介護をしてきましたよ』じゃ。これまでの労をねぎらい、努力を肯定する声かけが妻の自責を和らげるのじゃ。
アユム
1の『あなたがしっかりしましょう』はだめですか。
博士
動揺しておる相手にプレッシャーをかけるだけで、共感がないからの。
アユム
2の『自宅で看取るようにしましょう』は。
博士
腰痛で介護が破綻して入所した経緯を無視した提案じゃ。現実的でないし、追い詰めることになるのじゃ。
アユム
4の『私たちが看取りますので大丈夫ですよ』は優しそうですが。
博士
一見そう見えるが、自宅で看取れなかった妻の罪悪感を逆に強めてしまうおそれがあるのじゃ。
アユム
共感と肯定が大切なんですね。
博士
その通り。指示的な言葉ではなく、傾聴と労いで寄り添うのが看取り期の家族支援の基本じゃ。
アユム
これまでの介護を認めることで、妻の心も少し軽くなりますね。
博士
うむ。看取りは患者だけでなく家族へのケアも一体で考えるのじゃぞ。
POINT
看取り期の家族支援では、自責の念や後悔を抱きやすい家族の感情を受け止め、これまでの介護を肯定的に評価することが重要です。指示的・断定的な発言は避け、共感的な傾聴と労いの言葉によって心理的負担を軽減します。家族の意思決定と悲嘆過程を支えることが看護師の役割となります。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(85歳、男性)は、5年前に脳梗塞(cerebral infarction)を発症し右片麻痺があり、要介護3の認定を受けた。Aさんの子どもは遠方に住んでおり、腰痛のあるAさんの妻(80歳)が1人で介護している。Aさんは、週2日通所介護を利用している。 3年後、Aさんは誤嚥性肺炎(aspiration pneumonia)で入退院を数回繰り返したことからADLが低下し、要介護5になった。そのため、Aさんの妻の腰痛が悪化し、Aさんは介護老人福祉施設に入所した。入所後1か月が経過し、Aさんは発熱、傾眠傾向が続いている。 Aさんの妻は医師から死期が近いと説明を受け動揺した。Aさんの妻は「自宅で看取ることができず、夫に悪いと思っています」と施設の看護師に話した。 Aさんの妻への声かけで最も適切なのはどれか。
解説:正解は 3 です。妻はこれまで長年、腰痛を抱えながら老老介護を続け、現実的に在宅看取りが困難となって施設入所に至ったにもかかわらず、自責の念を抱いています。看護師は感情を否定せず、これまでの介護の労をねぎらい、妻の選択を肯定する声かけによって心理的支援を行うことが重要です。
選択肢考察
-
× 1. 「あなたがしっかりしましょう」
動揺している妻にプレッシャーを与え、感情を抑え込ませる発言で、共感的態度に欠けています。
-
× 2. 「自宅で看取るようにしましょう」
腰痛悪化により在宅介護が困難となって入所した経緯があり、現実的に不可能な選択を提案するのは不適切です。
-
○ 3. 「長い間、十分介護をしてきましたよ」
高齢で腰痛を抱えながら長年介護してきた妻の労をねぎらい、努力を認める言葉です。自責の念の軽減と心理的安寧につながります。
-
× 4. 「私たちが看取りますので大丈夫ですよ」
施設で看取ると断定すると、自宅で看取れなかった妻の罪悪感をかえって強める可能性があり、寄り添う言葉になりません。
看取り期の家族支援では、(1)感情の表出を妨げない、(2)これまでの介護を肯定する、(3)罪悪感を軽減し意思決定を支える、ことが基本です。『〜すべき』『しっかりして』など指示的な言葉は避け、傾聴と共感を中心に対応します。
看取り期に自責の念を抱く家族介護者への共感的な声かけとして適切なものを選べるかを問う問題です。
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