レビー小体型認知症の幻視への対応
看護師国家試験 第105回 午後 第99問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(81歳、女性)は、6年前にレビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)と診断された。Aさんは雨の中を1人で外出して自宅に戻れなくなり、同居している娘に発見された。その夜、娘が話しかけたときのAさんの反応が鈍くなったため、かかりつけの病院を受診し、細菌性肺炎(bacterial pneumonia)と診断され入院した。呼吸器疾患の既往はない。 入院当日、抗菌薬の点滴静脈内注射が開始された。投与開始直後からAさんが輸液ラインを指し「虫がいる」と大きな声を上げている。 このときの看護師の対応で最も適切なのはどれか。
- 1.虫がいないことを説明する。
- 2.点滴静脈内注射を中止する。
- 3.Aさんをナースステーションに移動する。
- 4.輸液ラインをAさんから見えない状態にする。
対話形式の解説
博士
Aさんは点滴開始直後に輸液ラインを指して『虫がいる』と大声を上げた。どう対応するのが最適か考えよう。
サクラ
レビー小体型認知症の特徴的な症状ですよね、幻視。
博士
その通り。三徴を覚えておるか?
サクラ
認知機能の変動、繰り返す具体的な幻視、パーキンソニズムです。
博士
完璧じゃ。幻視の内容は子どもや動物、虫が多いのが特徴で、本人にとっては現実として見えている。ここが対応の鍵じゃ。
サクラ
『本当に見えている』という前提で関わるんですね。
博士
その通り。幻視への対応原則は『否定しない、安心させる、環境を整える』じゃ。では選択肢を見ていこう。1の『虫がいないことを説明する』はどうじゃ?
サクラ
本人には見えているので、否定されると混乱や不安が増しますね。
博士
その通り。頭ごなしに否定するのは関係を悪くする。2の『点滴を中止する』は?
サクラ
細菌性肺炎で抗菌薬が必要ですから、自己抜去の切迫がない今の段階で中止するのは治療の中断になります。
博士
正解。治療を続けながら工夫で対応するのが原則じゃ。3の『ナースステーションに移動』は?
サクラ
場所を変えてもラインは見えたままですし、環境が変わるとせん妄を悪化させる恐れもあります。
博士
その通り。高齢者は馴染みの環境で落ち着く。4の『輸液ラインを見えないようにする』が正解じゃ。
サクラ
ラインをタオルや衣類で覆えば、幻視の原因になる刺激が消えるんですね。
博士
その通り。同時に自己抜去の予防にもなる。治療も継続できて一石二鳥じゃ。
サクラ
幻視を起こしやすい環境調整って他にどんな工夫がありますか?
博士
照明を明るくして影を減らす、模様の多いカーテンを避ける、不要な物を視界に置かない、などじゃ。模様や影が幻視の素材になりやすい。
サクラ
薬物療法で気をつけることはありますか?
博士
重要な点じゃ。レビー小体型認知症は抗精神病薬に過敏性があり、ハロペリドールなど定型抗精神病薬で錐体外路症状や意識障害が強く出る。BPSDへの薬物療法は専門医が少量から慎重に選ぶ必要がある。
サクラ
『否定せず、環境で解決する』が基本姿勢なんですね。
博士
その通り。認知症看護の核心じゃ。
POINT
レビー小体型認知症では繰り返す具体的な幻視が中核症状で、本人には実在として見えています。点滴ラインを虫と見間違えているため、ラインを衣類で覆い視界から外す環境調整が最適で、治療継続と不安軽減、自己抜去予防を同時に達成できます。否定は混乱を招き、治療中止は病状悪化を招くため不適切です。抗精神病薬への過敏性もあり、薬物療法より環境調整が第一選択となります。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(81歳、女性)は、6年前にレビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)と診断された。Aさんは雨の中を1人で外出して自宅に戻れなくなり、同居している娘に発見された。その夜、娘が話しかけたときのAさんの反応が鈍くなったため、かかりつけの病院を受診し、細菌性肺炎(bacterial pneumonia)と診断され入院した。呼吸器疾患の既往はない。 入院当日、抗菌薬の点滴静脈内注射が開始された。投与開始直後からAさんが輸液ラインを指し「虫がいる」と大きな声を上げている。 このときの看護師の対応で最も適切なのはどれか。
解説:正解は 4 です。レビー小体型認知症では繰り返す具体的な幻視が中核症状で、本人には実在するように見えています。輸液ラインを虫と見間違えているため、ラインを衣類やタオルなどで覆って視界から外す環境調整が最も効果的です。幻視を否定する、治療を中止する、ナースステーションに移動するなどはいずれも原因に働きかけておらず、Aさんの不安を増したり必要な抗菌薬治療を妨げる可能性があります。
選択肢考察
-
× 1. 虫がいないことを説明する。
レビー小体型認知症の幻視は本人にとって現実で、言葉で否定すると不安や混乱を増強させます。共感的に受け止めたうえで環境を調整するのが基本です。
-
× 2. 点滴静脈内注射を中止する。
細菌性肺炎は抗菌薬投与が必要な状態で、自己抜去の切迫リスクがない現段階で中止すべきではありません。治療を継続しながら環境を工夫します。
-
× 3. Aさんをナースステーションに移動する。
場所を変えても輸液ラインは見えたままで幻視の原因は解消しません。また高齢者を馴染みのない環境に移すとせん妄を誘発する恐れもあります。
-
○ 4. 輸液ラインをAさんから見えない状態にする。
ラインを視界から外せば幻視の刺激源がなくなり、不安軽減と自己抜去予防に直結します。治療も継続でき最も適切な対応です。
レビー小体型認知症の三徴は①認知機能の変動②繰り返す具体的な幻視(子ども・動物・虫が多い)③パーキンソニズムです。その他にレム睡眠行動異常症、自律神経症状(起立性低血圧・便秘)、抗精神病薬への過敏性があります。幻視への対応原則は『否定しない・安心させる・環境を整える』です。照明を明るくして影を減らす、模様の多いカーテンや物品を避ける、不要な物を視界に置かない、などが有効です。抗精神病薬(特に定型抗精神病薬)は錐体外路症状や意識障害を起こしやすく慎重投与が必要です。
レビー小体型認知症の幻視への適切な対応として、否定せず環境調整で刺激源を取り除くアプローチを選べるかを問うている。
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