レビー小体型認知症の幻視と転倒予防
看護師国家試験 第105回 午後 第100問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(81歳、女性)は、6年前にレビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)と診断された。Aさんは雨の中を1人で外出して自宅に戻れなくなり、同居している娘に発見された。その夜、娘が話しかけたときのAさんの反応が鈍くなったため、かかりつけの病院を受診し、細菌性肺炎(bacterial pneumonia)と診断され入院した。呼吸器疾患の既往はない。 入院後7日、症状が軽快し明日退院することが決まった。消灯前にAさんが部屋にいないため探すと、小刻みにすり足で歩いているところを発見した。看護師がどうしたのか質問すると「そこに小さい子どもがいるので見に行きたい」と、思いつめた表情で話した。 このときのAさんへの対応で最も適切なのはどれか。
- 1.転倒の危険を説明する。
- 2.行きたい場所へ付き添う。
- 3.子ども時代の思い出を尋ねる。
- 4.子どもはどこかへ行ってしまったと説明する。
対話形式の解説
博士
退院前日のAさんが消灯前に部屋からいなくなり、廊下を小刻みにすり足で歩いていた。『小さい子どもを見に行きたい』と思いつめた表情で話しておる。
アユム
小刻み歩行とすり足はパーキンソニズムですよね。
博士
その通り。筋強剛・小刻み歩行・すり足・姿勢反射障害・無動が特徴で、とても転倒しやすい状態じゃ。
アユム
そこに幻視が加わっているから、強い目的意識で歩いて危険ですね。
博士
鋭い観察じゃ。幻視の内容は『小さい子ども』で、本人にとっては非常にリアルに見えておる。では選択肢を見ていこう。1の『転倒の危険を説明する』はどうじゃ?
アユム
認知機能が低下していると説明では止められませんし、強く制止すると抵抗して転んでしまうかもしれません。
博士
その通り。説得や制止は効果が低いうえ危険じゃ。2の『行きたい場所へ付き添う』が正解じゃ。
アユム
幻視を否定せずに付き添うことで、安全と思いの尊重が両立するんですね。
博士
まさにそこがポイント。『一緒に見に行きましょう』と言って歩調を合わせれば、転倒予防にもなるし、途中で自然に病室へ戻る機会も作れる。これをvalidation(受容的関わり)と呼ぶ。
アユム
3の『子ども時代の思い出を尋ねる』は?
アユム
話題を逸らすことで、『今見えている』という訴えを無視したことになって不信感が生まれますね。
博士
正解。レミニセンス(回想法)は別の場面では有効じゃが、幻視で思いつめているときは不適切じゃ。4の『子どもはどこかへ行ってしまった』は?
アユム
間接的に否定していますし、思いつめた表情のAさんをさらに不安にさせますね。
博士
その通り。時には妄想へと発展させる危険もある。幻視対応の三原則を覚えておこう。『否定しない・受容する・環境調整』じゃ。
アユム
付き添った後はどうケアすればいいですか?
博士
軽食やお茶で落ち着かせる、室内を明るくして影や模様を減らす、排泄・痛み・脱水・不安などせん妄の誘因がないか確認する、じゃ。退院前日は環境変化の不安で症状が強まることもある。
アユム
家族への指導はどうすればよいですか?
博士
自宅でも同じ対応原則を伝え、転倒予防の環境整備(段差解消・照明・手すり)と、パーキンソニズムの悪化時は主治医に相談するよう説明する。
アユム
否定せず付き添う、これが核心なんですね。
博士
その通り。認知症看護はその人の世界を尊重することから始まる。
POINT
レビー小体型認知症では繰り返す幻視とパーキンソニズムが合併しやすく、転倒リスクが高い状態です。幻視を否定せず『一緒に見に行きましょう』と付き添うことが、思いを受容しつつ安全を確保する最適な関わりで、自然に病室へ戻す機会も得られます。説明・話題変更・否定はいずれも不安や混乱を招くため不適切です。validation(受容的関わり)と環境調整が認知症看護の二本柱となります。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(81歳、女性)は、6年前にレビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)と診断された。Aさんは雨の中を1人で外出して自宅に戻れなくなり、同居している娘に発見された。その夜、娘が話しかけたときのAさんの反応が鈍くなったため、かかりつけの病院を受診し、細菌性肺炎(bacterial pneumonia)と診断され入院した。呼吸器疾患の既往はない。 入院後7日、症状が軽快し明日退院することが決まった。消灯前にAさんが部屋にいないため探すと、小刻みにすり足で歩いているところを発見した。看護師がどうしたのか質問すると「そこに小さい子どもがいるので見に行きたい」と、思いつめた表情で話した。 このときのAさんへの対応で最も適切なのはどれか。
解説:正解は 2 です。Aさんはレビー小体型認知症の幻視(小さい子ども)とパーキンソニズム(小刻み・すり足歩行)を呈しており、強い目的意識をもって歩いています。否定すれば混乱や不安を招き、説得しても小刻み歩行では転倒リスクが高い状態です。幻視を受け入れて『一緒に見に行きましょう』と付き添うことで、Aさんの思いを尊重しつつ安全を確保でき、最も適切な対応となります。
選択肢考察
-
× 1. 転倒の危険を説明する。
認知機能の低下と幻視に強く動機づけられている状態では、説明だけで行動を止めるのは困難です。強引に制止すれば抵抗や転倒を招きます。
-
○ 2. 行きたい場所へ付き添う。
幻視を否定せず気持ちを受け止め、付き添うことで転倒予防と安心感の提供を同時に達成できます。行動を観察しつつ自然に病室へ戻す機会も得られ最適です。
-
× 3. 子ども時代の思い出を尋ねる。
話題を逸らす対応で、現に見えているものを無視したと受け取られ不信感や混乱を招きます。『今ここ』の訴えに応じる姿勢が必要です。
-
× 4. 子どもはどこかへ行ってしまったと説明する。
幻視を間接的に否定する発言で、思いつめた表情のAさんの不安を増強させ、時に妄想へ発展させる可能性があります。
レビー小体型認知症のパーキンソニズムは筋強剛・小刻み歩行・すり足・姿勢反射障害・無動が特徴で、転倒・骨折のリスクが非常に高いです。幻視への対応の基本原則は『否定しない・受容する・環境調整』で、付き添って一緒に確認したり、安全な場所に誘導する『validation(受容的関わり)』が有効です。帰室後は軽食やお茶で落ち着かせ、室内を明るく整え影や模様を減らす、排泄や不安の原因がないか確認する、といった対応も有効です。退院前日は環境変化への不安で症状が強まることもあるため家族への指導も重要です。
レビー小体型認知症の幻視とパーキンソニズムを合併した患者への『受容的関わり』と『安全確保』を両立する対応を問うている。
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