高齢者の低栄養アセスメント
看護師国家試験 第105回 午前 第96問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(94歳、男性)は、要介護1で、妻(84歳)と2人暮らしであった。肺炎(pneumonia)で入院治療していたが本日退院し、介護老人保健施設に初めて入所した。現在の障害高齢者の日常生活自立度判定基準はランクB-2、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準はランクⅡaである。食欲は良好で、食事の姿勢や動作は自立している。部分義歯で不具合はなく、口腔内の異常はない。 入所時の身長170cm、体重50kg。1か月間で体重が3kg減少した。血液検査データは、血清アルブミン3.2g/dL、CRP0.1mg/dL。反復唾液嚥下テストは30秒間で4回である。 Aさんの状態のアセスメントで適切なのはどれか。
- 1.流動食が必要である。
- 2.炎症反応が続いている。
- 3.認知症(dementia)による摂食行動の問題がある。
- 4.タンパク質・エネルギー低栄養状態〈PEM〉である。
対話形式の解説
博士
94歳のAさんは肺炎治療後に老健入所じゃ。身長170cm・体重50kgでBMIは約17.3、1か月で3kg減っておる。
アユム
BMI17.3は低体重ですね。体重減少3kgは体重の6%で、1か月で5%以上減っているから高度の体重減少ですね。
博士
よく理解しておるな。さらに血清アルブミン3.2g/dL、CRP0.1mg/dL、RSSTは30秒で4回じゃ。
アユム
アルブミンは3.5g/dL未満で低栄養の指標ですよね。CRPは0.3mg/dL以下なので炎症は落ち着いている、RSSTは3回以上が正常なので嚥下は問題なし、と読み取れます。
博士
パーフェクトじゃ。正解は4のタンパク質・エネルギー低栄養状態〈PEM〉じゃな。
アユム
1の流動食はどうでしょう。
博士
嚥下機能が保たれ、義歯も適合、口腔内も問題なし。流動食にする根拠がないのう。むしろ経口からしっかり食べてもらうことが大事じゃ。
アユム
2の炎症反応が続いているは。
博士
CRPが0.1mg/dLだから炎症は沈静化しておる。肺炎治療は成功したと判断できるな。
アユム
3の認知症による摂食行動の問題は。
博士
認知症高齢者の日常生活自立度ランクⅡaは「家庭外で多少の見守りが必要」レベル、食事動作は自立で食欲良好と記載があるから摂食行動の問題はない。摂食障害が出てくるのはランクⅢ以降じゃ。
アユム
PEMがあると高齢者にはどんな影響が出ますか。
博士
易感染性、褥瘡、サルコペニア、フレイル、免疫低下、創傷治癒遅延、そして再肺炎のリスクも高まる。早期の栄養介入が重要じゃ。
アユム
具体的な介入方法は。
博士
食事量増加の工夫、間食や補食の追加、経口栄養補助食品(ONS)の活用、栄養士による献立調整、必要なら経管栄養も検討する。タンパク質は1.0〜1.2g/kg/日を目安にする。
アユム
リハビリとの連携も大事ですね。
博士
その通り。栄養とリハビリは車の両輪じゃ。栄養改善とともに筋力トレーニングを組み合わせてサルコペニアを予防する。
アユム
肺炎後は代謝が亢進しているから余計に栄養が必要なのですね。
博士
感染症・手術・外傷などは代謝を亢進させるからエネルギー必要量も増える。老健入所時のこのタイミングで積極的に介入することが自宅復帰の鍵じゃよ。
POINT
Aさんは身長170cm・体重50kg(BMI17.3)、1か月で3kg(6%)減少、血清アルブミン3.2g/dLとタンパク質・エネルギー低栄養状態〈PEM〉の指標が複数揃っています。RSST4回で嚥下機能は正常、CRP0.1mg/dLで炎症は沈静化、認知症自立度ⅡaでADLも食欲も保たれており、他の選択肢は否定されます。高齢者のPEMは易感染性・褥瘡・フレイルの原因となり、栄養補助とリハビリの早期介入が重要です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(94歳、男性)は、要介護1で、妻(84歳)と2人暮らしであった。肺炎(pneumonia)で入院治療していたが本日退院し、介護老人保健施設に初めて入所した。現在の障害高齢者の日常生活自立度判定基準はランクB-2、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準はランクⅡaである。食欲は良好で、食事の姿勢や動作は自立している。部分義歯で不具合はなく、口腔内の異常はない。 入所時の身長170cm、体重50kg。1か月間で体重が3kg減少した。血液検査データは、血清アルブミン3.2g/dL、CRP0.1mg/dL。反復唾液嚥下テストは30秒間で4回である。 Aさんの状態のアセスメントで適切なのはどれか。
解説:正解は 4 です。Aさんは身長170cm・体重50kg(BMI17.3で低体重)、1か月で3kgの体重減少(6%減、高度)、血清アルブミン3.2g/dL(低値)という所見からタンパク質・エネルギー低栄養状態〈PEM〉と判断できます。肺炎治療後で代謝亢進と食事量低下が続いた結果と考えられます。
選択肢考察
-
× 1. 流動食が必要である。
反復唾液嚥下テスト(RSST)は30秒間に3回以上が正常で、Aさんは4回あり嚥下機能は保たれています。義歯の不具合もなく、流動食にする必要はありません。
-
× 2. 炎症反応が続いている。
CRP0.1mg/dLは基準範囲内(一般に0.3mg/dL以下)で、肺炎後の炎症は沈静化しています。
-
× 3. 認知症(dementia)による摂食行動の問題がある。
認知症高齢者の日常生活自立度ランクⅡaは「家庭外で多少見守りが必要」レベルで、食事の姿勢・動作は自立しており食欲も良好です。摂食行動の問題は認められません。
-
○ 4. タンパク質・エネルギー低栄養状態〈PEM〉である。
BMI17.3の低体重、1か月で6%の体重減少、血清アルブミン3.2g/dL(3.5g/dL未満)はいずれも低栄養の指標で、PEMと判断できます。
高齢者の栄養評価指標には、(1)BMI:18.5未満で低体重、(2)体重減少:1か月で5%以上・6か月で10%以上は高度、(3)血清アルブミン:3.5g/dL未満で低栄養、3.0g/dL未満は高度低栄養、(4)MNA-SF(簡易栄養状態評価表)などがあります。PEM(Protein-Energy Malnutrition)はエネルギーとタンパク質双方の欠乏状態で、高齢者では易感染性、褥瘡、サルコペニア、フレイルを招くため早期介入が必要です。食事量増加、補食、栄養補助食品、必要に応じて経管栄養の検討も行います。
高齢者の栄養状態・嚥下機能・炎症・認知症の評価指標を正しく読み取り、適切なアセスメントを行えるかを問うています。
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