パーキンソン病の排尿障害!残尿を見逃さない観察眼
看護師国家試験 第106回 午後 第90問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aさん(82歳、男性)は、介護付の有料老人ホームに入居している。10年前まで会社を経営していた。プロ野球や世界経済に興味があり、友人とインターネットを用いて交流するのを楽しみにしている。Parkinson〈パーキンソン〉病( Parkinsonʼs disease )で、現在Hoehn-Yahr〈ホーエン・ヤール〉の重症度分類でステージⅡ。両側の上下肢の静止振戦や動作緩慢がみられる。食事は自分の居室に運んでもらって食べている。身の回りのことは1人でできる。1人での外出も可能だが、転倒に対する恐怖が強いため1日中室内で過ごしている。 Aさんは「最近、尿が出始めるまでに時間がかかるので、排尿時は自分で下腹部を押しています。尿がすっきり出ません」と言う。泌尿器科を受診したところ、 Parkinson〈パーキンソン〉病( Parkinsonʼs disease )による自律神経障害と診断された。 Aさんの現在の状況から最も考えられるのはどれか。
- 1.残尿がある。
- 2.膀胱が萎縮している。
- 3.蓄尿障害が生じている。
- 4.骨盤底筋群の筋力が低下している。
対話形式の解説
博士
前の問題に続きAさんの事例じゃ。今度は排尿の訴えについて考えるぞ。
アユム
Aさんは「尿が出始めるまで時間がかかる」「下腹部を押して排尿」「すっきり出ない」と訴えていますね。
博士
その通り。この3つの症状に共通するのは何じゃ?
アユム
「出にくい」という方向性ですね。
博士
正解。下部尿路機能障害は大きく「蓄尿障害(溜められない)」と「排出障害(出せない)」に分けられるんじゃ。
アユム
Aさんは「出せない」側の排出障害ですね。
博士
うむ。排尿遅延・腹圧排尿・残尿感は排出障害の典型的三徴じゃ。膀胱内に尿が残っている状態、つまり「残尿」を強く示唆する。
アユム
なぜパーキンソン病で排尿障害が起こるんですか?
博士
パーキンソン病では運動症状のほかに自律神経症状も合併するんじゃ。膀胱排尿筋の収縮を司る副交感神経の障害で、排尿筋の収縮力が低下して尿を出しきれなくなる。
アユム
他に自律神経症状ってありますか?
博士
便秘、起立性低血圧、発汗異常、流涎などが代表的じゃ。
アユム
選択肢2の膀胱萎縮はどうですか?
博士
膀胱萎縮は容量が小さくなって頻尿を来す病態。Aさんは頻尿ではなく排尿困難なので不該当じゃな。
アユム
選択肢3の蓄尿障害は?
博士
蓄尿障害は「溜められない」側で、頻尿・尿意切迫・尿失禁が主症状。Aさんとは方向性が逆じゃ。
アユム
選択肢4の骨盤底筋群の筋力低下は?
博士
これは腹圧性尿失禁、つまりくしゃみや咳で尿が漏れる病態で、主に女性に多い。Aさんの症状とは一致しない。
アユム
よって答えは「残尿がある」ですね。
博士
その通り。
アユム
残尿があると何が問題なんですか?
博士
残尿は尿路感染症の温床となり、進行すると水腎症や腎機能低下も招く。高齢者では放置できない問題じゃ。
アユム
どんな対応が必要ですか?
博士
まず残尿測定じゃ。ポータブルエコーで膀胱容量を測ったり、導尿で実測したりする。治療は薬物療法(αブロッカーで尿道抵抗を下げる、コリン作動薬で排尿筋収縮を促す)や清潔間欠導尿、いわゆるCICじゃ。
アユム
CICって患者さん自身が行うんですよね?
博士
うむ、自己導尿として指導する。Aさんは手指の振戦があるので手技の獲得には工夫がいるじゃろう。
アユム
看護師としては何を観察すればいいですか?
博士
排尿パターン、1回尿量、残尿の有無、発熱、尿性状、水分摂取量など総合的に評価する。UTI徴候を早期発見することが大切じゃ。
アユム
パーキンソン病は運動症状だけでなく、自律神経症状まで幅広く見る必要があるんですね。
POINT
パーキンソン病では自律神経障害により膀胱排尿筋の収縮力が低下し、排尿困難・腹圧排尿・残尿感などの排出障害を来します。Aさんの症状はいずれも残尿の存在を示唆しており、蓄尿障害や骨盤底筋の筋力低下とは方向性が逆です。残尿は尿路感染症・水腎症・腎機能低下の原因となるため早期発見と管理が重要で、残尿測定、薬物療法、清潔間欠導尿などが対応の選択肢となります。パーキンソン病は運動症状だけでなく自律神経症状(排尿障害・便秘・起立性低血圧・発汗異常)まで多彩な症状を伴うため、看護師は全身にわたる包括的な観察と支援を行う必要があります。症状から病態を推論する力は老年看護・神経内科看護の中核的スキルです。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:Aさん(82歳、男性)は、介護付の有料老人ホームに入居している。10年前まで会社を経営していた。プロ野球や世界経済に興味があり、友人とインターネットを用いて交流するのを楽しみにしている。Parkinson〈パーキンソン〉病( Parkinsonʼs disease )で、現在Hoehn-Yahr〈ホーエン・ヤール〉の重症度分類でステージⅡ。両側の上下肢の静止振戦や動作緩慢がみられる。食事は自分の居室に運んでもらって食べている。身の回りのことは1人でできる。1人での外出も可能だが、転倒に対する恐怖が強いため1日中室内で過ごしている。 Aさんは「最近、尿が出始めるまでに時間がかかるので、排尿時は自分で下腹部を押しています。尿がすっきり出ません」と言う。泌尿器科を受診したところ、 Parkinson〈パーキンソン〉病( Parkinsonʼs disease )による自律神経障害と診断された。 Aさんの現在の状況から最も考えられるのはどれか。
解説:正解は 1(残尿がある)です。Aさんは「尿が出始めるまで時間がかかる(排尿開始遅延)」「下腹部を押して排尿している(腹圧排尿)」「すっきり出ない(残尿感)」という排尿困難=排出障害の典型症状を訴えています。これはパーキンソン病による自律神経障害で膀胱排尿筋の収縮力が低下し、膀胱内に尿が残っている状態(残尿)を示しています。蓄尿障害(頻尿・尿失禁)や膀胱萎縮、骨盤底筋の筋力低下(腹圧性尿失禁)はいずれもAさんの症状と合致しません。
選択肢考察
-
○ 1. 残尿がある。
排出障害の主要徴候。排尿遅延・腹圧排尿・残尿感はいずれも膀胱内に尿が残留していることを示唆する。自律神経障害により排尿筋収縮が不十分となった結果。
-
× 2. 膀胱が萎縮している。
膀胱萎縮は膀胱容量の減少により頻尿を来す状態。Aさんは頻尿ではなく排尿困難を訴えており、むしろ残尿による膀胱の拡張が示唆される。
-
× 3. 蓄尿障害が生じている。
蓄尿障害は尿を溜めておく機能の障害で、頻尿・尿意切迫・尿失禁を呈する。Aさんの症状は「出せない」側の排出障害であり、方向性が逆。
-
× 4. 骨盤底筋群の筋力が低下している。
骨盤底筋筋力低下は腹圧性尿失禁(くしゃみや咳で漏れる)を来す病態で、主に女性に多い。Aさんの排尿困難症状とは一致しない。
下部尿路機能障害は大きく「蓄尿障害(溜められない)」と「排出障害(出せない)」に分けられる。蓄尿障害は過活動膀胱・腹圧性尿失禁などで頻尿・失禁が主症状。排出障害は前立腺肥大症・神経因性膀胱などで排尿遅延・腹圧排尿・残尿・尿閉を来す。パーキンソン病では自律神経障害により両者が混在しうるが、本例は排出障害優位。残尿は尿路感染症・水腎症・腎機能低下の原因となるため、残尿測定(ポータブルエコーや導尿)、清潔間欠導尿(CIC)、薬物療法(αブロッカー、コリン作動薬)などで管理する。パーキンソン病の自律神経症状には他に便秘・起立性低血圧・発汗異常などがある。
パーキンソン病の自律神経障害による排尿症状を鑑別する問題。排出障害と蓄尿障害の違い、症状から病態を推論する力が試される。
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