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高齢者の再転倒を防ぐ生活指導じゃ

看護師国家試験 第107回 午前 第98問 / 老年看護学 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

107回 午前 第98問

Aさん( 75歳、女性 )。1人暮らし。脳梗塞( cerebral infarction )の後遺症で左不全麻痺があり、要介護1の認定を受けている。最近、夜間に中途覚醒することが多い。昨夜、トイレに行く際に転倒し、右手をついた。転倒後から右上肢の痛みがあり、翌朝になっても痛みが強かったため受診した。エックス線写真の結果から、右の上腕骨近位部骨折( proximal humerus fracture )と診断され、入院した。 Aさんは入院後7日で退院し、介護老人保健施設に入所した。現在はリハビリテーションを行っている。 退所後の再転倒を予防するためのAさんへの指導で適切なのはどれか。

  1. 1.家の中で過ごす。
  2. 2.歩幅を小さくして歩く。
  3. 3.足関節の底背屈運動をする。
  4. 4.就寝前に睡眠薬を内服する。

対話形式の解説

博士 博士

Aさんは介護老人保健施設でリハビリ中じゃ。退所後に再び転ばんためには、何が必要か整理していこう。

アユム アユム

歩幅を小さくすると安全な気がしますが、違うんですか?

博士 博士

それは逆効果じゃ。歩幅が小さいとすり足になって、絨毯の端や小さな段差で躓きやすくなるんじゃ。

アユム アユム

じゃあ大きめの歩幅で、踵から着地ですね。

博士 博士

そう。つま先が上がるよう意識するのがコツじゃ。そのために足関節の背屈可動域を保つことが大事なんじゃ。

アユム アユム

底背屈運動が出てきますね。

博士 博士

そうじゃ。座位や臥位で足首を上下に動かすだけの運動じゃが、腓腹筋・ヒラメ筋・前脛骨筋が刺激され、血流も改善する。

アユム アユム

静脈還流にも良いんですか?

博士 博士

下腿のポンプ作用が働くから、立ちくらみや浮腫の予防にもなるんじゃ。

アユム アユム

家の中で過ごすのはどうですか?

博士 博士

活動量が減ると筋力とバランスが落ちて廃用症候群になるんじゃ。安全に外出することも大事じゃ。

アユム アユム

睡眠薬はどうでしょう?夜間覚醒があるそうですし。

博士 博士

ベンゾジアゼピン系は筋弛緩と持ち越し効果で夜間・起床時の転倒リスクを高めるから安易な導入は避けるんじゃ。

アユム アユム

不眠の原因を探るのが先ですね。

博士 博士

その通り。カフェインの摂取、日中の活動量、痛み、不安などを評価して非薬物的対応を優先するんじゃ。

アユム アユム

環境整備も重要ですね。

博士 博士

手すり設置、段差解消、夜間照明、滑り止めマット、寝室〜トイレ間の動線確保などを整えるんじゃ。

アユム アユム

薬剤の見直しもありますか?

博士 博士

抗コリン薬・睡眠薬・降圧薬は転倒リスクを高めるから、ポリファーマシーの観点で薬剤師と協議するとよい。

アユム アユム

栄養や視力もありますね。

博士 博士

蛋白質・ビタミンD・カルシウムの摂取、定期的な視力検査と白内障対応も忘れずに。多面的アプローチが再転倒予防の鍵じゃ。

POINT

高齢者の再転倒予防は、運動・環境・薬剤・感覚機能・栄養の多面的アプローチが必要である。足関節の底背屈運動は可動域維持と下腿筋力強化、静脈還流改善につながり有効である。歩幅を小さくする、家に籠もる、安易な睡眠薬使用はいずれも転倒リスクを高めるため避ける。適切な歩行姿勢と環境整備、薬剤見直しを組み合わせて継続的に指導することが大切である。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:Aさん( 75歳、女性 )。1人暮らし。脳梗塞( cerebral infarction )の後遺症で左不全麻痺があり、要介護1の認定を受けている。最近、夜間に中途覚醒することが多い。昨夜、トイレに行く際に転倒し、右手をついた。転倒後から右上肢の痛みがあり、翌朝になっても痛みが強かったため受診した。エックス線写真の結果から、右の上腕骨近位部骨折( proximal humerus fracture )と診断され、入院した。 Aさんは入院後7日で退院し、介護老人保健施設に入所した。現在はリハビリテーションを行っている。 退所後の再転倒を予防するためのAさんへの指導で適切なのはどれか。

解説:正解は 3 です。高齢者の再転倒予防には、筋力・平衡感覚・関節可動域の維持が重要で、特に足関節の背屈可動域は歩行時の躓き予防に直結します。足関節の底背屈運動は、腓腹筋・ヒラメ筋と前脛骨筋を刺激して血行を促進し、下肢の可動域を保つとともに、静脈還流の改善による立ちくらみの軽減にも寄与します。座位・臥位で簡単に行え、左不全麻痺のあるAさんでも継続しやすいのが特徴です。

選択肢考察

  1. × 1.  家の中で過ごす。

    活動量低下は廃用症候群を招き、筋力・バランス能力がさらに低下して再転倒リスクが高まります。安全な外出と適度な運動を促します。

  2. × 2.  歩幅を小さくして歩く。

    小さな歩幅はすり足歩行につながり、わずかな段差でも躓きやすくなります。踵から着地し適切な歩幅で歩くことが安全です。

  3. 3.  足関節の底背屈運動をする。

    足関節可動域の維持と下腿筋力の強化は歩行時の躓き予防と静脈還流改善につながり、再転倒予防に有効です。

  4. × 4.  就寝前に睡眠薬を内服する。

    睡眠薬、特にベンゾジアゼピン系は筋弛緩作用や持ち越し効果でふらつきを生じ、夜間や起床時の転倒リスクを高めるため安易な導入は避けます。

高齢者の転倒予防は『運動(レジスタンス・バランス・柔軟性)』『環境整備(手すり・段差解消・照明)』『薬剤見直し(抗コリン・睡眠薬)』『視力・聴力評価』『栄養(蛋白・ビタミンD)』の多面的アプローチが効果的。

介護老人保健施設入所中の高齢患者に対し、再転倒を防ぐ運動指導の適否を判断する問題です。