高齢者の術前オリエンテーションの要点
看護師国家試験 第110回 午後 第97問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aさん( 75歳、女性)は、1人暮らし。高血圧症( hypertension )内服治療をしているが、その他に既往歴はない。認知機能は問題ない。軽度の円背があるが、日常生活動作<ADL>は自立している。簡単な家事は自分で行っており、家の中で過ごすことが多かった。近所に住む長女が時々、Aさんの様子を見に来ていた。 ある日、Aさんは自宅の階段を踏み外して転落し、横向きになったまま動けなくなったところを訪問してきた長女に発見され、救急車で病院に運ばれ、右大腿骨頸部骨折( femoral neck fracture )診断された。そのまま入院し、緊急手術を行うことになった。 手術前オリエンテーションの際の看護師の説明内容で適切なのはどれか。
- 1.「手術はすぐに終わります」
- 2.「手術後はすぐに水を飲めます」
- 3.「手術後は両足とも動かしてはいけません」
- 4.「手術後は背中にクッションを当てます」
対話形式の解説
博士
Aさんは75歳、円背があって大腿骨頸部骨折の緊急手術じゃ。どんな説明が適切かのう。
サクラ
手術時間を「すぐに終わる」と伝えるのは良くないですよね。
博士
そうじゃ、大腿骨頸部骨折の手術は麻酔含めて1〜2時間はかかる。曖昧な表現は不安や誤解を招く。
サクラ
術後すぐに飲水できるわけでもないですよね。
博士
うむ、麻酔覚醒後の誤嚥リスクがあるから、医師の指示と嚥下状態の確認が必須じゃ。
サクラ
両足とも動かしてはいけないというのは正しいですか。
博士
いや、健側は深部静脈血栓症予防のため底背屈運動を促すのが基本じゃ。
サクラ
では適切な説明は何でしょう。
博士
円背があるから背中にクッションを当てて、脊柱と腰への負担を軽減するのが実際的じゃ。
サクラ
仰臥位で背中に隙間があると褥瘡ができやすいですよね。
博士
その通り。踵や仙骨部の除圧もあわせて行うぞ。
サクラ
術後の合併症としては何に注意しますか。
博士
深部静脈血栓症、肺塞栓、感染、脱臼、褥瘡、せん妄じゃ。とくに高齢者はせん妄に注意じゃ。
サクラ
早期離床も重要なのですね。
博士
うむ、全身機能の低下を防ぐため早期離床が基本方針じゃな。
POINT
高齢者の大腿骨頸部骨折術前説明では、個々の身体特性を踏まえたポジショニングの説明が重要です。Aさんは円背があるため背中にクッションを当てて脊柱の負担を軽減する説明が適切となります。「すぐ終わる」「すぐ水が飲める」「両足とも動かしてはいけない」といった曖昧または不正確な説明は避け、具体的で安全に配慮した情報提供を心がけます。早期離床と合併症予防の視点が術後管理の核となります。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:Aさん( 75歳、女性)は、1人暮らし。高血圧症( hypertension )内服治療をしているが、その他に既往歴はない。認知機能は問題ない。軽度の円背があるが、日常生活動作<ADL>は自立している。簡単な家事は自分で行っており、家の中で過ごすことが多かった。近所に住む長女が時々、Aさんの様子を見に来ていた。 ある日、Aさんは自宅の階段を踏み外して転落し、横向きになったまま動けなくなったところを訪問してきた長女に発見され、救急車で病院に運ばれ、右大腿骨頸部骨折( femoral neck fracture )診断された。そのまま入院し、緊急手術を行うことになった。 手術前オリエンテーションの際の看護師の説明内容で適切なのはどれか。
解説:正解は4です。Aさんは軽度の円背があり、術後の仰臥位では腰背部への負担や褥瘡発生のリスクが高まります。背中にクッションを当てて脊柱の弯曲を支え、安楽な体位を保てるようにする説明が最も適切です。
選択肢考察
-
× 1. 「手術はすぐに終わります」
大腿骨頸部骨折の手術は麻酔を含めておおむね1〜2時間を要します。具体的な時間を示さず「すぐ」と曖昧に伝えるのは不適切です。
-
× 2. 「手術後はすぐに水を飲めます」
麻酔の覚醒後も嚥下反射の低下が残り、誤嚥の危険があります。飲水は医師の指示を確認し覚醒状態を確認したうえで開始します。
-
× 3. 「手術後は両足とも動かしてはいけません」
患側は保護が必要ですが、健側は深部静脈血栓症予防のため足関節の底背屈運動などを行います。「両足とも動かすな」は誤りです。
-
○ 4. 「手術後は背中にクッションを当てます」
円背のあるAさんが仰臥位で過ごす際、背中の隙間をクッションで埋めることで脊柱の負担と褥瘡リスクを軽減し、安楽な体位を保てます。
大腿骨頸部骨折の手術は骨接合術(若年〜転位軽度)か人工骨頭置換術(高齢者・転位型)が選択されます。術後合併症として深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症、感染、脱臼(人工骨頭置換後)、褥瘡、せん妄などがあり、早期離床が基本方針です。円背のある高齢者ではポジショニングで腰背部を支え、踵の除圧にも留意します。
高齢者の大腿骨頸部骨折術前オリエンテーションで、身体特性を踏まえた適切な説明を選ぶ問題です。
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