気管はどこで分かれる?胸骨角と呼吸の圧から読み解く基本解剖
看護師国家試験 第109回 午前 第82問 / 人体の構造・機能 / 呼吸器系
国試問題にチャレンジ
気管で正しいのはどれか。2 つ選べ。
- 1.軟骨は筒状である。
- 2.胸骨角の高さで分岐する。
- 3.交感神経の働きで収縮する。
- 4.吸息相の気管内圧は陰圧である。
- 5.頸部では食道の背側に位置する。
対話形式の解説
博士
今日は気管の解剖と呼吸生理を合わせて学ぶぞ。
アユム
気管って喉頭から続いて、どのあたりで左右に分かれるんでしたっけ?
博士
輪状軟骨下縁から始まり、長さは約10〜13 cm、第4〜5胸椎の高さで左右主気管支に分岐する。体表では『胸骨角(ルイ角)』という目印に相当するんじゃ。
アユム
胸骨角って、胸骨の真ん中あたりの段差ですよね。
博士
そう。第2肋骨の付着部じゃから、聴診やCT読影で『気管分岐部はここ』と当てをつける重要なランドマークじゃぞ。
アユム
選択肢1の『軟骨は筒状』は違うんですか?
博士
気管軟骨はU字型(C字型)で、後壁は平滑筋でできておる。なぜ後ろがないと思う?
アユム
あ、食道が後ろを通るから、食べ物が通るときに邪魔しないため?
博士
その通りじゃ!機能と形が見事に一致しておる。
アユム
選択肢5で頸部の気管と食道の位置関係、気管が背側って書いてありますが…。
博士
逆じゃ。頸部では気管が腹側、食道が背側じゃ。気管切開が前頸部でできるのはそのためじゃな。
アユム
選択肢4の『吸息相で気管内圧は陰圧』はどう理解すればいいですか?
博士
吸気時は横隔膜と外肋間筋が収縮して胸郭が広がる。すると胸腔内圧がさらに陰圧化し、肺胞内圧も陰圧になり、外気が気道を流れ込むんじゃ。気管内圧もその流れに合わせて陰圧になる。
アユム
逆に呼気では陽圧になるんですね。
博士
そうじゃ。人工呼吸器の陽圧換気はこの自然な陰圧呼吸を逆転させるため、長期では肺損傷を起こし得るのもそれが理由の一つじゃ。
アユム
交感神経で気管が収縮するは?
博士
これも逆。交感神経(β2受容体)で弛緩・拡張し、副交感神経(迷走神経)で収縮する。喘息発作時のβ2刺激吸入薬はこの仕組みを使っておる。
アユム
気管挿管の合併症で右気管支に入りやすいって聞きました。
博士
右主気管支は左より太く短く、正中との角度が浅くてほぼ垂直に近い。だから誤挿入・誤嚥ともに右に偏りやすい。挿管後は必ず左右呼吸音を確認する必要があるぞ。
POINT
気管は輪状軟骨下縁から胸骨角(第4〜5胸椎)の高さまで下り、そこで左右主気管支に分岐する長さ約10〜13 cmの管状器官です。軟骨はU字型で後壁は膜性壁、頸部では食道の腹側に位置し、気管切開は前頸部から行われます。呼吸生理では吸気時に胸腔内圧・肺胞内圧・気管内圧がすべて陰圧となり外気を取り込み、気管支平滑筋は交感神経で弛緩し副交感神経で収縮します。右主気管支は角度が浅いため誤嚥・誤挿管が起こりやすく、挿管後の左右呼吸音確認や吸引時の体位管理に直結する重要知識です。解剖・生理・臨床をつなげて理解することで、気道管理の基本が身につきます。
解答・解説
正解は 2 ・ 4 です
問題文:気管で正しいのはどれか。2 つ選べ。
解説:正解は 2 と 4 です。気管は輪状軟骨下縁(第6頸椎の高さ)から始まり、第4〜5胸椎に相当する胸骨角(ルイ角)の高さで左右主気管支に分岐する。長さ約10〜13 cm、直径約2 cm。吸息時は横隔膜と外肋間筋の収縮で胸腔内圧・肺胞内圧ともに陰圧となり、気道内を空気が流入するため気管内圧も陰圧となる。
選択肢考察
-
× 1. 軟骨は筒状である。
気管軟骨はU字型(馬蹄形/C字型)で、後壁は軟骨を欠き平滑筋(膜性壁)で構成される。後方にある食道の通過を妨げない構造となっている。
-
○ 2. 胸骨角の高さで分岐する。
胸骨角(第2肋骨付着部、第4〜5胸椎レベル)は気管分岐部の体表指標。解剖学的ランドマークとして聴診や胸部X線読影で重要。
-
× 3. 交感神経の働きで収縮する。
気管支平滑筋は交感神経(β2受容体)刺激で弛緩し気道が拡張する。収縮するのは副交感神経(迷走神経、M3受容体)優位時であり、喘息発作時に気道が狭くなるのはこの副交感系の過剰反応が関与。
-
○ 4. 吸息相の気管内圧は陰圧である。
吸気時は胸郭拡大により胸腔内圧がさらに陰圧になり、肺胞内圧も陰圧化する。この圧勾配で外気が気道を通って肺に流入するため、気管内圧も陰圧となる。呼気時は逆に陽圧。
-
× 5. 頸部では食道の背側に位置する。
頸部では気管は食道の腹側(前方)に位置する。気管切開が前頸部から可能なのはそのため。食道は気管の後方を通って胃に至る。
右主気管支は左より太く短く、正中との角度が小さい(より垂直)ため、誤嚥や気管チューブ深挿入で右主気管支に入りやすい。このため気管挿管後には左右の呼吸音を必ず確認する。気管軟骨のU字型は嚥下時に食道が拡張できる空間を確保するためで、気管後壁の膜性壁は咳嗽時にも動く。分岐部(気管分岐カリーナ)は解剖学的・生理学的に重要で、気管支鏡検査のランドマークになる。
気管の解剖(分岐の高さ・軟骨形状・食道との位置関係)と呼吸生理(呼吸相と胸腔内圧)を合わせて問う問題。気管挿管や気管切開の臨床場面をイメージすると理解しやすい。
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