医療事故と医療過誤の違いがわかる!医療安全の基本ルール
看護師国家試験 第114回 午後 第73問 / 看護の統合と実践 / 看護におけるマネジメント
国試問題にチャレンジ
医療安全について正しいのはどれか。
- 1.患者から暴力を受けたと報告した医療従事者に暴力発生の責任を問う。
- 2.与薬前に薬物の間違いに気づけばインシデントレポートは不要である。
- 3.医療過誤とは医療事故の発生原因に医療機関、医療従事者の過失がある場合をいう。
- 4.インシデントを起こした医療従事者は気持ちが落ち着いた数日後にレポートを提出する。
対話形式の解説
博士
今回は医療安全の基礎、医療事故と医療過誤の違いを整理するのじゃ。
サクラ
どちらも事故ですよね?何が違うんですか?
博士
ここが国試頻出のポイントじゃ。医療事故とは医療に関わる場で起きた望ましくない事象すべて。一方、医療過誤はそのうち医療側に過失(注意義務違反)があったものを指すのじゃ。
サクラ
つまり医療事故が大きな枠で、その中の一部が医療過誤ということですね。
博士
その通り。例えば適切な医療行為を行ったにもかかわらず予期せぬ副作用が出た場合は医療事故ではあるが医療過誤ではない。指示を確認せず違う薬を投与してしまえば、それは医療過誤になるのじゃ。
サクラ
じゃあインシデントレポートは医療過誤の時だけ書くんですか?
博士
いや、違うのじゃ。患者に被害が及ばなかった「ヒヤリ・ハット」も含めて報告するのが原則じゃ。
サクラ
え、被害が出ていなくても書くんですか?
博士
そう。なぜなら、ヒヤリ・ハットを集めることが将来の重大事故を防ぐ最大の手がかりになるからじゃ。ハインリッヒの法則では1件の重大事故の背後に29件の軽微な事故と300件のヒヤリ・ハットがあるとされておる。
サクラ
なるほど、小さな兆候を集めて分析することが大切なんですね。
博士
うむ。だから「与薬前に気づけばレポート不要」は誤りじゃ。むしろ実施前発見こそ報告すべき重要事例なのじゃよ。
サクラ
提出のタイミングはいつがいいんですか?
博士
できるだけ速やかに、原則として当日中じゃ。記憶が鮮明なうちに正確な情報を残さないと、再発防止策の質が落ちてしまう。
サクラ
数日後では遅すぎるんですね。
博士
それから、患者から暴力を受けた医療従事者に責任を問うのも誤りじゃ。被害者を責めれば報告が抑制され、職場の安全文化が崩れてしまう。「非懲罰的(ノンパニッシュ)文化」が医療安全の土台なのじゃ。
サクラ
個人を責めるのではなく、システムを改善する視点が大事ということですね。
博士
その通り。RCA(根本原因分析)やSHELモデルといった手法で、なぜミスが起きたかを構造的に分析するのが現代の医療安全じゃ。
POINT
医療事故とは医療現場で生じた望ましくない事象全般を指し、医療過誤はそのうち医療側に過失が認められるものを意味します。両者は包含関係にあり、過失の有無で法的責任が分かれる重要な区別です。インシデントレポートはヒヤリ・ハット(実施前発見)も含めて速やかに(原則当日中に)提出するのが原則で、被害者を責めない非懲罰的文化のもと、システム改善を志向することが医療安全の基本です。看護師は最も多くインシデントに遭遇する職種であり、報告と分析のサイクルを通じて安全な医療を組織として支える担い手として、これらの定義とルールを正確に理解しておく必要があります。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:医療安全について正しいのはどれか。
解説:正解は 3 です。医療事故とは、医療に関わる場面で患者に生じた望ましくない事象全般を指し、医療従事者の過失の有無は問わない。これに対して医療過誤とは、その医療事故のうち医療機関や医療従事者の過失(注意義務違反)が認められる場合を指す概念である。つまり「医療事故 ⊃ 医療過誤」という包含関係にあり、過失が証明されれば法的責任を問われ得る点で区別される。
選択肢考察
-
× 1. 患者から暴力を受けたと報告した医療従事者に暴力発生の責任を問う。
暴力を受けた被害者である医療従事者に責任を問えば、報告が抑制され、二次被害や類似事例の再発を招く。医療安全文化の基本である「報告しやすい非懲罰的環境」に反する対応で誤り。
-
× 2. 与薬前に薬物の間違いに気づけばインシデントレポートは不要である。
実施前に発見された事例は「ヒヤリ・ハット」として報告対象となる。患者に被害が及ばなくとも、再発防止のための重要な情報源であり、レポート提出が原則である。
-
○ 3. 医療過誤とは医療事故の発生原因に医療機関、医療従事者の過失がある場合をいう。
医療事故のうち、過失(注意義務違反)が認められるものを医療過誤と定義する。過失がない医療事故(不可抗力など)と区別される、法的・組織的に重要な概念である。
-
× 4. インシデントを起こした医療従事者は気持ちが落ち着いた数日後にレポートを提出する。
インシデントレポートは記憶が鮮明なうちに、できるだけ速やかに(原則として当日中に)提出することが求められる。時間が経つほど事実関係の精度が低下し、再発防止策の質も下がる。
医療安全管理の基本は、(1) 報告しやすい非懲罰的(ノンパニッシュ)文化、(2) ヒヤリ・ハットを含む幅広い事例収集、(3) 速やかな報告・分析、(4) 個人責任追及ではなくシステム改善志向、の4点である。インシデントレベルは0(実施前発見)から5(死亡)まで段階分けされ、レベル0・1がヒヤリ・ハットに相当する。RCA(根本原因分析)やSHELモデル、4M-4E分析など、原因究明と再発防止に用いる手法も国試で問われやすい。
医療事故と医療過誤の用語の違い、インシデントレポートの提出ルール、医療安全文化(非懲罰的・速やかな報告)の理解を問う複合的な問題。
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