StudyNurse

血しぶきから目を守れ!災害現場でも変わらない標準予防策の基本

看護師国家試験 第114回 午後 第118問 / 看護の統合と実践 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

114回 午後 第118問

次の文を読み、問いに答えよ。 午後1時に震度6強の地震が発生し、避難所が開設された。地震発生の2時間後、避難所に救護所が設置され、近隣の病院から医療救護班が派遣された。医療救護班が複数の被災者に対応するなか、Aさん(54歳、男性)が搬送されてきた。Aさんは右大部に4cmの切創があり出血部位をタオルで押さえている。すぐに看護師が切創部の処置を介助することになった。 このときの看護師の感染予防対策で正しいのはどれか。

  1. 1.ゴーグルを装着して処置の介助を行う。
  2. 2.使い捨て手袋を1時間ごとに交換する。
  3. 3.処置を行う前に破傷風(tetanus)のワクチンを受ける。
  4. 4.看護師が着用するガウンにAさん用と記載しAさん専用にする。

対話形式の解説

博士 博士

今回は災害現場での感染予防対策じゃ。被災者Aさんの大腿部4cmの切創を処置する場面で、看護師は何を装備すべきか。

アユム アユム

出血している創を扱うので…手袋とマスクは当然として、目も守る必要がありそうですね。

博士 博士

鋭い!その「目を守る」がポイントじゃ。標準予防策では血液や体液が飛散する恐れがある場合、手袋・マスクに加えてゴーグルまたはフェイスシールドを着用するのが基本じゃ。

アユム アユム

眼の粘膜って感染しやすいんですか?

博士 博士

眼結膜は血液媒介感染症(HIV・B型肝炎・C型肝炎など)の侵入経路の1つじゃ。針刺し事故と並んで報告される「眼への血液飛散」は決して珍しくない。

アユム アユム

B型肝炎は感染力が強いんでしたっけ?

博士 博士

HIVよりはるかに感染力が高い。針刺し事故での感染率はHIVが約0.3%なのに対し、HBVは10〜30%と桁違いじゃ。粘膜暴露でも感染リスクがある。

アユム アユム

だから1のゴーグルが正解なんですね。

博士 博士

そう。フェイスシールドも同等の効果がある。N95マスクやサージカルマスクと組み合わせて顔全体を守るのが基本じゃ。

アユム アユム

選択肢2の手袋を1時間ごとに交換、はどうしてダメなんですか?

博士 博士

手袋交換のタイミングは「時間」ではなく「患者ごと・処置ごと」「清潔と不潔の操作の境目」じゃ。1時間ルールでは汚染した手袋で長時間操作するリスクが残る。

アユム アユム

選択肢3の破傷風ワクチンを処置前に…?

博士 博士

これはトリッキーじゃが間違い。破傷風ワクチンは抗体産生まで数週間かかるから即時効果はない。そもそもワクチンを検討するのは外傷を負った「患者側」であり、看護師が処置直前に打っても意味がない。

アユム アユム

あ、確かに。Aさんが打つかどうかの判断ですね。

博士 博士

その通り。破傷風は土砂や錆などからクロストリジウム破傷風菌が侵入し発症する。災害現場の汚染創では追加接種や免疫グロブリン投与が検討される重要事項じゃ。

アユム アユム

選択肢4のガウンを患者専用にするのは?

博士 博士

これも誤り。ガウンは原則使い捨てか1患者1使用で都度着脱する。同じガウンを使い回すと、表面の病原体を運んで交差感染の元になる。

アユム アユム

災害時はPPEが足りないこともありそうですが…。

博士 博士

現実的な課題じゃ。供給が限られる場合は優先度の高い処置で確実に使用し、フェイスシールドは消毒して再使用することもある。だが「専用化」は不適切な発想じゃ。

アユム アユム

標準予防策の基本は災害時も変わらないんですね。

博士 博士

その通り。「すべての血液・体液・分泌物・粘膜・損傷皮膚は感染性がある」と仮定して防護する。これは病院でも避難所でも同じじゃ。

POINT

標準予防策では、すべての患者の血液・体液・分泌物・粘膜・損傷皮膚を感染性があるとみなし、手袋・マスク・ガウン・アイシールドなどの個人防護具を飛散リスクに応じて組み合わせて使用します。出血を伴う創処置では血液飛沫が眼結膜に入るリスクがあり、HIV・HBV・HCVなど血液媒介感染症の暴露を防ぐためゴーグルまたはフェイスシールドの装着が必須です。手袋は時間ではなく「患者ごと・処置ごと」、ガウンも1患者1使用が原則で、ガウンの個人専用化は交差感染源となります。破傷風ワクチンは患者側に検討するもので、看護師が処置直前に接種する意義はありません。災害時にPPE供給が限られる中でも、標準予防策の原則を曲げずに優先順位を付けて運用する判断力が看護師には求められます。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 午後1時に震度6強の地震が発生し、避難所が開設された。地震発生の2時間後、避難所に救護所が設置され、近隣の病院から医療救護班が派遣された。医療救護班が複数の被災者に対応するなか、Aさん(54歳、男性)が搬送されてきた。Aさんは右大部に4cmの切創があり出血部位をタオルで押さえている。すぐに看護師が切創部の処置を介助することになった。 このときの看護師の感染予防対策で正しいのはどれか。

解説:正解は 1 です。出血を伴う切創処置では、洗浄や縫合の際に血液が飛散して医療者の眼の粘膜に入る危険があります。眼結膜は粘膜の中でも血液媒介感染症(HIV・HBV・HCVなど)の侵入経路となり得るため、標準予防策(スタンダードプリコーション)では「血液・体液・分泌物が飛散する恐れがある場合は手袋・マスクに加えてアイシールド(ゴーグルまたはフェイスシールド)を着用する」と定められています。災害現場でも病院内と同じく標準予防策の原則は変わりません。

選択肢考察

  1. 1.  ゴーグルを装着して処置の介助を行う。

    出血を伴う処置では血液飛散のリスクがあり、眼粘膜からの血液媒介感染を防ぐためゴーグル(またはフェイスシールド)の装着が必要。手袋・マスク・ガウンとあわせて使う標準予防策の基本である。

  2. × 2.  使い捨て手袋を1時間ごとに交換する。

    使い捨て手袋は時間ではなく「患者ごと・処置ごと」「清潔→不潔の操作の境目」で交換するのが原則。1時間という時間基準は感染対策として誤り。

  3. × 3.  処置を行う前に破傷風(tetanus)のワクチンを受ける。

    破傷風ワクチンは抗体産生まで数週間かかるため即時の予防効果はない。さらに破傷風ワクチンが必要かを検討すべき対象は外傷を負った患者側であり、看護師が処置直前に接種する意義はない。

  4. × 4.  看護師が着用するガウンにAさん用と記載しAさん専用にする。

    ガウンは原則ディスポーザブル、または1患者1使用で着脱する。「特定の患者専用」として繰り返し使用すると、ガウン表面に付着した病原体を運んでしまい交差感染源になる。

標準予防策は「すべての患者の血液・体液・分泌物(汗を除く)・粘膜・損傷皮膚は感染性があるとみなす」ことを前提とした基本対策である。個人防護具(PPE)は飛散・接触リスクに応じて手袋・マスク・ガウン・アイシールド・キャップを組み合わせて使用する。災害時はPPEの供給が限られるため、優先順位を考えた使い方や使い捨てが難しい場合の代替策(フェイスシールド洗浄など)も実務上は重要である。

血液飛散の可能性がある災害時の創処置介助で、最も適切な感染予防対策を選ぶ問題。標準予防策におけるアイシールドの位置づけを問う。