避難所のインフル集団発生を防ぐ第一手—毎日の健康チェック表が命綱
看護師国家試験 第114回 午後 第119問 / 看護の統合と実践 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 午後1時に震度6強の地震が発生し、避難所が開設された。地震発生の2時間後、避難所に救護所が設置され、近隣の病院から医療救護班が派遣された。医療救護班が複数の被災者に対応するなか、Aさん(54歳、男性)が搬送されてきた。Aさんは右大部に4cmの切創があり出血部位をタオルで押さえている。すぐに看護師が切創部の処置を介助することになった。 発災翌日、避難所には150名ほどの避難者が登録をしている。医療救護班の医師から「この数日間で、インフルエンザ(influenza)の患者が病院で増えている。避難所でも注意したほうがよい」と看護師に助言があった。看護師は避難所運営者と連携して、避難所でのインフルエンザの集団発生防止策を立てることにした。午前9時現在、避難者の中には発熱や咳をしている有症者はいない。 避難所での集団感染を防止する対策で適切なのはどれか。
- 1.避難所の床を毎日アルコールで清掃する。
- 2.共同のトイレにあるタオルを毎日交換する。
- 3.避難所の居住スペースの換気を1日1回行う。
- 4.避難者に入所時からの体調を健康チェック表に記載してもらう。
対話形式の解説
博士
今回は災害時の避難所感染対策じゃ。150人が暮らす空間でインフルエンザの集団発生を防ぐには何が最も重要か考えてみよう。
サクラ
マスクや手洗い、換気あたりですか?
博士
もちろん全部大事じゃ。だが「まだ発症者がいない予防段階」で最も優先すべき対策は何かを問うておるのがこの問題のミソじゃ。
サクラ
早期発見ですか?
博士
ピンポンじゃ。集団感染防止の鉄則は「早期発見→早期隔離(ゾーニング)」。そのためには毎日の健康チェック表によるサーベイランスが第一じゃ。
サクラ
全員に発熱や咳の有無を記録してもらうんですね。
博士
そうじゃ。入所時から体調を可視化することで、症状が出た瞬間に把握でき、専用スペースへ移したり受診させたりが素早くできる。
サクラ
選択肢1の床のアルコール清掃はなぜ違うんですか?
博士
インフルエンザは飛沫・接触感染が主体で、床は感染源として優先度が低い。むしろ手すり・ドアノブ・蛇口など高頻度接触面を拭く方が効果的じゃ。
サクラ
限られた資源を効果が薄い場所に使うともったいないってことですね。
博士
その通り。災害時は物資も人手も限られておるからこそ、優先順位が大事なのじゃ。
サクラ
選択肢2の共有タオルを毎日交換は…?
博士
交換しても使用直後にウイルスが付着すれば同じこと。共有タオルそのものをペーパータオルや個人タオルに置き換えるのが本筋じゃ。
サクラ
選択肢3の換気1日1回も足りないですよね。
博士
鋭い。WHOや日本環境感染学会のマニュアルでも、1〜2時間に1回以上のこまめな換気が推奨されておる。1日1回では換気回数が圧倒的に足りない。
サクラ
避難所では他にどんな感染症が問題になりますか?
博士
ノロウイルス・新型コロナ・結核・麻疹・はしか・破傷風などじゃ。特にトイレ環境からのノロウイルス集団感染は東日本大震災や能登半島地震でも報告されておる。
サクラ
避難所感染対策の柱を整理すると?
博士
3本柱じゃ。①早期発見(健康チェック)、②感染経路対策(手指衛生・マスク・換気・清拭)、③ワクチンや個人防護具の整備。今回の問題は①の重要性を問うておる。
サクラ
発症者が出てから対応では遅いですね。
博士
その通り。集団感染が起こると医療資源が一気に逼迫し、避難所運営自体が崩壊しかねない。事前のサーベイランスが命綱じゃ。
サクラ
看護師は避難所運営者と連携してこうした仕組みを立ち上げるんですね。
博士
うむ。専門職として平時から感染対策マニュアルを学んでおき、災害時に即実装できる力を養うことが重要じゃ。
POINT
避難所での集団感染防止の鍵は「早期発見と早期隔離」であり、発症者がまだ出ていない予防段階では避難者全員の健康チェック表によるサーベイランスが最も効果的です。これにより有症者をいち早く把握し、専用スペースへのゾーニングや受診へ素早くつなぐことができます。床のアルコール清掃は飛沫感染症対策としては優先度が低く、共有タオルの毎日交換は使用直後の汚染を防げず、1日1回の換気は頻度不足です。避難所感染対策の3本柱は「早期発見」「感染経路対策」「ワクチンとPPE整備」であり、インフルエンザだけでなくノロウイルスや新型コロナなども想定した包括的対応が求められます。看護師は災害時に避難所運営者と協働してこれらの仕組みを迅速に立ち上げる役割を担います。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 午後1時に震度6強の地震が発生し、避難所が開設された。地震発生の2時間後、避難所に救護所が設置され、近隣の病院から医療救護班が派遣された。医療救護班が複数の被災者に対応するなか、Aさん(54歳、男性)が搬送されてきた。Aさんは右大部に4cmの切創があり出血部位をタオルで押さえている。すぐに看護師が切創部の処置を介助することになった。 発災翌日、避難所には150名ほどの避難者が登録をしている。医療救護班の医師から「この数日間で、インフルエンザ(influenza)の患者が病院で増えている。避難所でも注意したほうがよい」と看護師に助言があった。看護師は避難所運営者と連携して、避難所でのインフルエンザの集団発生防止策を立てることにした。午前9時現在、避難者の中には発熱や咳をしている有症者はいない。 避難所での集団感染を防止する対策で適切なのはどれか。
解説:正解は 4 です。インフルエンザのような飛沫感染症の集団発生を避難所で防ぐための鍵は「早期発見と早期隔離(ゾーニング)」です。そのために最も基本的かつ実効性が高いのが、避難者全員に毎日の体調(発熱・咳・倦怠感など)を健康チェック表に記録してもらう「健康監視(サーベイランス)」です。記録を継続することで有症者をいち早く把握し、専用スペースへの隔離や受診へ素早くつなぐことができます。発症者がまだ出ていない予防段階での対策として、最も適切な選択肢となります。
選択肢考察
-
× 1. 避難所の床を毎日アルコールで清掃する。
インフルエンザは飛沫・接触感染が主体で、床面は感染源として優先度が低い。手すり・ドアノブ・スイッチ・水道蛇口など高頻度接触面の清拭の方が効果的で、限られた資源を床清掃に振り向けるのは効率が悪い。
-
× 2. 共同のトイレにあるタオルを毎日交換する。
共有タオルは交換しても使用直後にウイルスが付着し再び感染源になる。ペーパータオルへの切り替えや個人タオルの使用へ変更するのが適切で、毎日交換だけでは集団感染防止策として不十分。
-
× 3. 避難所の居住スペースの換気を1日1回行う。
換気は集団感染対策として有効だが、1日1回では不十分。少なくとも1〜2時間に1回以上のこまめな換気が望ましく、頻度設定が誤っている。
-
○ 4. 避難者に入所時からの体調を健康チェック表に記載してもらう。
毎日の健康チェック表は発症者の早期発見・早期隔離につながる最も基本的で効果的なサーベイランス手法。発症前の予防段階で実施すべき第一の対策である。
避難所感染対策の3本柱は「①早期発見(健康チェック・サーベイランス)」「②感染経路対策(手指衛生・マスク・換気・高頻度接触面の清拭)」「③ワクチンや個人防護具の整備」とされる。インフルエンザに加え、ノロウイルス・新型コロナウイルス・結核・麻疹なども避難所では集団発生リスクが高い。日本環境感染学会・厚生労働省の「避難所における感染対策マニュアル」では、入所時のスクリーニング・症状者用ゾーニング・換気1〜2時間ごと・手指衛生用品の常設などが推奨されている。
発症者が出ていない予防段階で実施すべき避難所感染対策を問う問題。早期発見のための健康監視(サーベイランス)の重要性を理解しているかが要点となる。
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