「高齢妊娠だから安静」は本当?妊娠中の運動の正しい考え方
看護師国家試験 第114回 午前 第109問 / 母性看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(41歳、初妊婦、会社員)は夫(42歳、会社員)と2人で暮らしている。身長は158cm、非妊時体重55kgである。Aさんは妊娠16週3日に妊婦健康診査を受診し順調な経過と診断された。妊婦健康診査後「夫から、高齢妊娠だから安静にするよう言われ、夫が家事をしてくれています。妊娠前はバスケットボールを週に3回、毎日夕方に夫とウォーキングをしていました。今は仕事に行く以外は、家でなるべく動かないようにしています」とAさんが看護師に話した。 Aさんへの活動に関する助言で適切なのはどれか。
- 1.「仕事は辞めましょう」
- 2.「ウォーキングを再開しましょう」
- 3.「週1回バスケットボールをやりましょう」
- 4.「ご家族の言うように安静にしていましょう」
対話形式の解説
博士
今日は41歳の初妊婦Aさんが、夫から「高齢妊娠だから安静に」と言われて家でじっとしている場面じゃ。
サクラ
35歳以上の初産は確かにリスクが高くなりますし、ご主人の心配も分かりますね。
博士
気持ちは分かる。だが医学的にはどうかな?「高齢妊娠=安静」は実は正しくないのじゃ。
サクラ
えっ、そうなんですか?
博士
妊娠経過が順調で合併症がなければ、適度な運動はむしろ推奨される。日本産科婦人科学会も米国のACOGも同様じゃ。
サクラ
どんな運動ならよくて、どんなのはダメなんですか?
博士
推奨はウォーキング、水中運動、マタニティヨガ、固定式自転車など低衝撃で転倒リスクの低いものじゃ。週150分程度の中等度運動が目安。
サクラ
避けるべきものは?
博士
選択肢3にあるバスケットボールのような接触スポーツ、ジャンプや急停止が多いもの、転倒リスクの高い運動、仰臥位の長時間運動、潜水・高所など気圧変動を伴うものじゃ。
サクラ
Aさんは妊娠前にバスケを週3回、夕方ウォーキングを毎日していたんですね。
博士
そう。バスケは妊娠中は控えるべきじゃが、ウォーキングは継続して問題ない代表的運動じゃ。
サクラ
じゃあ選択肢2の「ウォーキング再開」が正解ですね。
博士
その通り。低衝撃で本人の習慣でもあり、体重管理・気分転換・便秘予防・出産に向けた体力づくりにも役立つ。
サクラ
選択肢4の「家族の言うように安静」はなぜダメなんですか?
博士
過度な安静は深部静脈血栓症のリスクを高め、体重増加・体力低下・気分の落ち込みも招く。妊娠中は循環血液量が増え凝固能も亢進しているから、動かないことのリスクは意外に大きいのじゃ。
サクラ
選択肢1の「仕事を辞める」は?
博士
経過が順調なら就労継続は可能じゃ。医学的根拠なく辞職を勧めるのは生活設計を揺るがす不適切な介入じゃな。
サクラ
ただ、お腹の張りや出血があるときは無理しちゃダメですよね。
博士
その通り。運動の前提は「医師の許可があり、経過順調であること」じゃ。腹緊・出血・腹痛・破水疑いがあれば即中止、医療機関へ連絡。
サクラ
高齢妊娠だからこそ、適切な運動と就労を続けて、健康的な妊娠生活を送ってほしいですね。
博士
見事じゃ。看護師は「安静神話」をほどき、本人と家族に正しい情報を伝える役割を担うのじゃ。
POINT
妊娠中の活動指導は「経過が順調な場合、適度な有酸素運動はむしろ推奨される」という基本原則に立ちます。本問のAさんは妊娠16週3日で順調な経過、妊娠前から毎日のウォーキング習慣がある41歳初妊婦で、夫の心配から過度に安静になっている状態です。低衝撃の有酸素運動であるウォーキングは体重管理・血流改善・気分転換・出産への体力づくりに有効で、再開を勧めることが最も適切な助言となります。一方、バスケットボールのような接触型・転倒リスクの高いスポーツは妊娠中は控えるべきであり、医学的根拠のない安静や辞職の勧奨も避けるべきです。高齢妊娠は確かに妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病などのリスクが上がりますが、適切な周産期管理と適度な運動・就労継続によって安全な妊娠・出産が十分可能です。看護師は「高齢妊娠=安静」という思い込みを解き、本人と家族に正しい情報を提供する重要な役割を担います。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(41歳、初妊婦、会社員)は夫(42歳、会社員)と2人で暮らしている。身長は158cm、非妊時体重55kgである。Aさんは妊娠16週3日に妊婦健康診査を受診し順調な経過と診断された。妊婦健康診査後「夫から、高齢妊娠だから安静にするよう言われ、夫が家事をしてくれています。妊娠前はバスケットボールを週に3回、毎日夕方に夫とウォーキングをしていました。今は仕事に行く以外は、家でなるべく動かないようにしています」とAさんが看護師に話した。 Aさんへの活動に関する助言で適切なのはどれか。
解説:正解は 2 です。妊娠16週は胎盤が完成し、つわりも落ち着いてくる「安定期」の入り口で、医学的に妊娠経過が順調で合併症がなければ適度な運動はむしろ推奨される。Aさんは妊娠前から日常的にウォーキングを行っており、低衝撃の有酸素運動として安全性が高い。過度な安静は体重増加・血栓症・気分の落ち込み・体力低下を招くため、本人が習慣的に行ってきたウォーキングを再開する助言が最も適切である。
選択肢考察
-
× 1. 「仕事は辞めましょう」
妊娠経過が順調であれば就労継続は可能で、実際多くの妊婦が産前休業まで働く。医学的根拠なく辞職を勧めることは生活設計を大きく揺るがす不適切な介入。
-
○ 2. 「ウォーキングを再開しましょう」
ウォーキングは低衝撃の有酸素運動で、妊娠経過が順調な妊婦に推奨される代表的運動。体重管理、気分転換、便秘予防、出産に向けた体力づくりに有効で、Aさんの妊娠前の習慣でもあるため再開は適切。
-
× 3. 「週1回バスケットボールをやりましょう」
バスケットボールはジャンプ・急停止・接触プレーが多く、転倒や腹部打撲のリスクが高い。妊娠中は接触型・転倒リスクの高いスポーツは推奨されない。
-
× 4. 「ご家族の言うように安静にしていましょう」
医学的指示のない過度な安静は、深部静脈血栓症・体重増加・体力低下・気分障害のリスクを高める。「高齢妊娠=安静」という思い込みは正しくない。
高齢妊娠(35歳以上の初妊娠)は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、流早産などのリスクが上がる一方、適切な周産期管理によって安全な妊娠・出産が十分可能である。妊娠中の運動指針(ACOGなど)では、合併症がない場合、中等度の有酸素運動を週150分程度行うことが推奨される。安全な運動はウォーキング・水中運動・マタニティヨガ・固定式自転車など。避けるべきは接触スポーツ、転倒リスクの高い運動、仰臥位での長時間運動、潜水・高所など気圧変動を伴うものである。
妊娠経過良好な高齢妊婦に対する活動の助言として、適度な運動の推奨と過度な安静の回避を判断できるかを問う問題。「高齢妊娠=安静」というステレオタイプを解除できるかがカギ。
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