Hb 10.1g/dLは妊娠中期で正常?異常?妊婦健診のアセスメント基準
看護師国家試験 第114回 午前 第110問 / 母性看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
<問109〜問111は同一の症例設定に基づきます。各問は前問までの状況を引き継いで解答してください。> 問109はこちら 次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(41歳、初妊婦、会社員)は夫(42歳、会社員)と2人で暮らしている。身長は158cm、非妊時体重55kgである。Aさんは妊娠16週3日に妊婦健康診査を受診し順調な経過と診断された。妊婦健康診査後「夫から、高齢妊娠だから安静にするよう言われ、夫が家事をしてくれています。妊娠前はバスケットボールを週に3回、毎日夕方に夫とウォーキングをしていました。今は仕事に行く以外は、家でなるべく動かないようにしています」とAさんが看護師に話した。 Aさんは妊娠24週0日に妊婦健康診査を受けた。体重60kg(妊娠20週の体重は58kg)。血圧138/88mmHg、Hb10.1g/dL、Ht31%、尿蛋白(−)、尿糖(±)であった。Aさんは「足が重い気がします」と話すが、脛骨上の圧痕は認めなかった。 このときのアセスメントで適切なのはどれか。
- 1.体重増加が過剰である。
- 2.妊娠性貧血(anemia of pregnancy)である。
- 3.高血圧である。
- 4.浮腫がある。
対話形式の解説
博士
今日はAさんが妊娠24週0日で妊婦健診を受けた場面じゃ。検査値の意味を一つずつ読み解いていくぞ。
アユム
体重60kg、血圧138/88、Hb10.1、Ht31、尿蛋白マイナス、尿糖プラスマイナス…足が重いと訴えていますね。
博士
4つの選択肢それぞれを基準値と照らし合わせていこう。まず体重増加じゃ。
アユム
非妊時55kg、20週で58kg、24週で60kg。20週から24週で2kg増えてます。
博士
妊娠中期の体重増加目安は週0.3〜0.5kg。4週で1.2〜2kgが目安じゃから、2kgはギリギリ正常範囲じゃな。
アユム
非妊時から見ると5kg増。これは多いんですか?
博士
Aさんの非妊時BMIを計算してみよう。55÷1.58の二乗で約22.0。普通体重じゃな。
アユム
普通体重なら推奨総増加量は10〜13kgですよね。妊娠24週で5kgなら適正範囲です。
博士
その通り。だから「体重増加が過剰」は不適切。
アユム
次に血圧138/88。妊娠高血圧症候群の基準は140/90以上ですよね。
博士
そう、ぎりぎり基準未満じゃ。だが正常高値域で、これからの経過に注意が必要なゾーンじゃ。アセスメントとしては「高血圧である」とは言えん。
アユム
Hb 10.1とHt 31はどうですか?
博士
ここがポイントじゃ。妊娠中の貧血基準を覚えているかな?
アユム
えーと、たしかHb 11.0g/dL未満かHt 33.0%未満で…。
博士
その通り。AさんはHb 10.1、Ht 31でいずれも下回っておる。明確に妊娠性貧血と診断される。
アユム
妊娠性貧血ってどうして起こるんでしたっけ?
博士
妊娠中は循環血漿量が40〜50%増えるのに、赤血球量の増加は20〜30%しかない。だから相対的に血液が希釈されて見かけ上Hb・Htが下がる。さらに胎児への鉄供給で鉄需要が増えて、鉄欠乏による真性の貧血も合併しやすいのじゃ。
アユム
妊婦さんの30〜40%に貧血があると聞きました。
博士
そう。だから鉄剤投与と、鉄分・タンパク質豊富な食事指導が基本になる。レバー、赤身肉、ほうれん草、ひじき、大豆などじゃな。
アユム
最後の浮腫はどうですか?「足が重い」と言ってますが。
博士
主観的訴えはあるが、客観的所見としての脛骨上圧痕が認められない。だから浮腫ありとは判定できん。妊娠後期は浮腫が出やすくなるから、今後の継続観察は必要じゃ。
アユム
整理すると、貧血だけが基準値を明確に逸脱していて、他は正常範囲〜境界域なんですね。
博士
見事じゃ。妊婦健診のアセスメントは「基準値を覚えて当てはめる」という基本作業。Hb 11.0、Ht 33.0、血圧140/90、体重増加目安、これらは必須暗記項目じゃよ。
POINT
妊婦健診のアセスメントは、妊娠週数ごとの基準値に検査データを照らし合わせる基本作業から始まります。本問のAさんは妊娠24週0日でHb 10.1g/dL、Ht 31%といずれも妊娠中の貧血基準(Hb 11.0g/dL未満/Ht 33.0%未満)を下回り、妊娠性貧血と診断されます。一方、体重増加5kgは普通体重妊婦の推奨範囲内で過剰ではなく、血圧138/88mmHgは妊娠高血圧症候群の基準(140/90以上)には届かず、脛骨上圧痕がないため浮腫の客観的所見もありません。妊娠性貧血は妊婦の30〜40%に認められる頻度の高い合併症で、循環血漿量の増加による血液希釈と胎児への鉄供給による鉄需要増大が主因です。鉄剤投与と鉄分・タンパク質を豊富に含む食事指導が基本対応となります。妊婦健診の各種基準値(Hb 11.0、Ht 33.0、血圧140/90、BMIに応じた体重増加目安)は国家試験頻出の必須暗記項目で、確実に押さえておきたい知識です。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:<問109〜問111は同一の症例設定に基づきます。各問は前問までの状況を引き継いで解答してください。> 問109はこちら 次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(41歳、初妊婦、会社員)は夫(42歳、会社員)と2人で暮らしている。身長は158cm、非妊時体重55kgである。Aさんは妊娠16週3日に妊婦健康診査を受診し順調な経過と診断された。妊婦健康診査後「夫から、高齢妊娠だから安静にするよう言われ、夫が家事をしてくれています。妊娠前はバスケットボールを週に3回、毎日夕方に夫とウォーキングをしていました。今は仕事に行く以外は、家でなるべく動かないようにしています」とAさんが看護師に話した。 Aさんは妊娠24週0日に妊婦健康診査を受けた。体重60kg(妊娠20週の体重は58kg)。血圧138/88mmHg、Hb10.1g/dL、Ht31%、尿蛋白(−)、尿糖(±)であった。Aさんは「足が重い気がします」と話すが、脛骨上の圧痕は認めなかった。 このときのアセスメントで適切なのはどれか。
解説:正解は 2 です。妊娠中期(24週)の貧血の診断基準は Hb 11.0g/dL 未満または Ht 33.0% 未満であり、AさんはHb 10.1g/dL、Ht 31% でいずれも基準を下回るため妊娠性貧血に該当する。妊娠中は循環血漿量が約40〜50%増加するのに対し赤血球量の増加は20〜30%にとどまるため、相対的に血液が希釈され生理的にHb・Htが低下する。さらに胎児への鉄供給により鉄需要が増すため、鉄欠乏による真性の貧血も合併しやすい。
選択肢考察
-
× 1. 体重増加が過剰である。
Aさんの非妊時BMIは55÷1.58²≒22.0で普通体重。妊娠20週から24週で2kg増(4週で2kg)は妊娠中期の目安週0.3〜0.5kgと整合する。妊娠前から24週までの増加5kgも、普通体重妊婦の推奨総増加量10〜13kg内で適正範囲である。
-
○ 2. 妊娠性貧血(anemia of pregnancy)である。
妊娠中の貧血基準はHb 11.0g/dL未満/Ht 33.0%未満。AさんはHb 10.1g/dL、Ht 31%でいずれも下回り、明確に妊娠性貧血と診断される。
-
× 3. 高血圧である。
妊娠高血圧症候群の診断基準は収縮期140mmHg以上または拡張期90mmHg以上。Aさんは138/88mmHgで基準未満。ただし正常高値域であり継続的なモニタリングは必要。
-
× 4. 浮腫がある。
「足が重い」という主観的訴えはあるが、脛骨上の圧痕(pitting edema)が認められないため、客観的所見としての浮腫は確認できない。
妊娠中の主要な検査基準値を整理すると、(1)貧血:Hb 11.0g/dL未満/Ht 33.0%未満、(2)妊娠高血圧症候群:収縮期140mmHg以上または拡張期90mmHg以上、(3)妊娠糖尿病:75g OGTTで空腹時92mg/dL以上・1時間180mg/dL以上・2時間153mg/dL以上のいずれか、(4)体重増加:非妊時BMIにより推奨量が異なり、低体重12〜15kg・普通体重10〜13kg・肥満1度7〜10kg。妊娠性貧血は妊婦の30〜40%に認められる頻度の高い合併症で、鉄欠乏が主因。鉄剤投与と鉄分・タンパク質豊富な食事指導が基本となる。
妊娠中期の検査値(血圧・Hb・Ht・体重・浮腫所見)を基準値に照らして正しくアセスメントできるかを問う問題。Hb 11.0/Ht 33.0という妊娠中の貧血基準が決め手。
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