アルツハイマー病の正体ーアミロイドβと海馬の物語
看護師国家試験 第106回 午前 第33問 / 疾病の成り立ちと回復の促進 / 健康の維持増進と疾病からの回復
国試問題にチャレンジ
Alzheimer〈アルツハイマー〉病で正しいのはどれか。
- 1.基礎疾患として高血圧症( hypertension )が多い。
- 2.初期には記銘力障害はみられない。
- 3.アミロイドβタンパクが蓄積する。
- 4.MRI所見では前頭葉の萎縮が特徴的である。
対話形式の解説
博士
今日はアルツハイマー病を掘り下げていくぞ。認知症の原因として最も多い病気じゃ。
サクラ
アルツハイマー病って、なぜ起こるんですか?
博士
主な原因はアミロイドβというタンパクが脳に異常に蓄積すること。細胞外に沈着して「老人斑」をつくり、さらにタウタンパクが細胞内にリン酸化されて溜まり「神経原線維変化」を作る。
サクラ
その蓄積がどうして認知症につながるんですか?
博士
神経細胞が障害されて死滅し、脳が萎縮していく。最も早く萎縮するのが記憶の中枢である「海馬」じゃ。だから最初の症状は記銘力障害(新しいことが覚えられない)になる。
サクラ
「さっき食べたご飯を忘れる」「同じ話を何度もする」みたいな症状ですね。
博士
その通り。古い記憶より新しい記憶が障害されるのがポイント。進行すると見当識障害、判断力低下、失語・失行・失認、最終的に寝たきりになる。
サクラ
選択肢4の「前頭葉萎縮が特徴」は違いますよね?
博士
それは前頭側頭型認知症(ピック病)の特徴。アルツハイマーでは海馬、側頭葉内側、頭頂葉が萎縮する。前頭葉は比較的後期まで保たれる。
サクラ
前頭側頭型って、どんな症状ですか?
博士
人格変化、社会的マナーの喪失、常同行動(同じ時間に同じ行動)、反社会的行動などが目立つ。記憶障害より人格が目立つのが特徴じゃ。
サクラ
じゃあ血管性認知症とはどう違うんですか?
博士
血管性は脳梗塞・脳出血の繰り返しが原因で、高血圧・糖尿病・脂質異常症が基礎にある。症状は「まだら認知症」(部分的に機能が保たれる)、階段状に悪化、感情失禁が特徴。アルツハイマーは緩徐進行で全体的に低下する。
サクラ
選択肢1の「高血圧が基礎疾患」は血管性と混同させる罠ですね。
博士
その通り。高血圧は血管性認知症の主要リスクで、アルツハイマーの「基礎疾患」ではない。
サクラ
レビー小体型はどういう特徴でしたっけ?
博士
αシヌクレインというタンパクがレビー小体として蓄積し、パーキンソン症状・幻視(はっきりした人や動物の幻視)・認知機能の変動・REM睡眠行動異常が特徴。抗精神病薬への過敏が有名で、看護上重要じゃ。
サクラ
治療薬にはどんなものがありますか?
博士
ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害薬と、メマンチン(NMDA受容体拮抗薬)が基本。最近はアミロイドβを直接除去する抗体薬レカネマブも登場した。
サクラ
看護では何が大切ですか?
博士
環境調整(馴染みの物を置く、時計・カレンダー)、本人の自尊心を尊重する、失敗体験を減らす声かけ、介護者支援、安全確保(徘徊対策)が重要じゃ。
POINT
アルツハイマー病は認知症の原因疾患として最多で、アミロイドβタンパクの細胞外蓄積(老人斑)とタウタンパクの細胞内蓄積(神経原線維変化)により神経細胞死と脳萎縮が進行します。最初に海馬が萎縮するため、初期から記銘力障害(新しいことを覚えられない)が現れ、進行とともに見当識障害、失語・失行・失認が加わります。MRIでは海馬・側頭葉内側・頭頂葉の萎縮が特徴で、前頭葉萎縮が目立つのは前頭側頭型認知症と区別します。高血圧が基礎にある血管性認知症、幻視やパーキンソン症状を伴うレビー小体型認知症との鑑別が国試頻出。看護では環境調整・自尊心尊重・安全確保・介護者支援が重要です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:Alzheimer〈アルツハイマー〉病で正しいのはどれか。
解説:正解は 3 です。アルツハイマー病は神経変性性認知症の代表疾患で、脳内にアミロイドβタンパクが異常に蓄積して老人斑(アミロイド斑)を形成し、さらにタウタンパクのリン酸化による神経原線維変化を引き起こして神経細胞死と大脳萎縮を招きます。高齢者の認知症の原因として最多であり、記銘力障害(新しいことを覚えられない)から始まり、見当識障害、判断力低下、失語・失行・失認、最終的には寝たきりに至ります。
選択肢考察
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× 1. 基礎疾患として高血圧症( hypertension )が多い。
高血圧症は「血管性認知症」の主要な危険因子。アルツハイマー病の明確な基礎疾患とは位置づけられていない(近年高血圧が危険因子の一つとする報告はあるが、「基礎疾患として多い」とは言えない)。
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× 2. 初期には記銘力障害はみられない。
記銘力障害(新しいことが覚えられない、同じ話を繰り返す、予定を忘れる)はアルツハイマー病の最も初期かつ中核的な症状。海馬の早期障害によって起こる。
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○ 3. アミロイドβタンパクが蓄積する。
アミロイドβが細胞外に蓄積して老人斑を、タウタンパクが細胞内に蓄積して神経原線維変化を形成するのがアルツハイマー病の病理学的特徴。
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× 4. MRI所見では前頭葉の萎縮が特徴的である。
アルツハイマー病のMRIでは海馬・側頭葉内側・頭頂葉の萎縮が特徴的。前頭葉の選択的萎縮は前頭側頭型認知症(ピック病)の特徴。
認知症の4大原因疾患は①アルツハイマー型(最多、約6〜7割)②血管性③レビー小体型④前頭側頭型。それぞれの特徴:アルツハイマー=アミロイドβ+タウ、海馬萎縮、緩徐進行/血管性=脳梗塞多発、まだら認知症、階段状増悪/レビー小体型=αシヌクレイン、パーキンソン症状・幻視・認知変動/前頭側頭型=人格変化・常同行動、前頭葉萎縮。治療薬はアセチルコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)とNMDA受容体拮抗薬(メマンチン)が中心。近年は抗アミロイドβ抗体薬(レカネマブ)も登場。
アルツハイマー病の病理(アミロイドβ蓄積)、症状(記銘力障害から始まる)、画像所見(海馬・側頭葉内側萎縮)を他の認知症と区別して理解できているかを問う。