創傷治癒の4段階と炎症期の特徴
看護師国家試験 第107回 午前 第74問 / 疾病の成り立ちと回復の促進 / 健康の維持増進と疾病からの回復
国試問題にチャレンジ
創傷の治癒過程で炎症期に起こる現象はどれか。
- 1.創傷周囲の線維芽細胞が活性化する。
- 2.肉芽の形成が促進される。
- 3.滲出液が創に溜まる。
- 4.創の収縮が起こる。
- 5.上皮化が起こる。
対話形式の解説
博士
今回は創傷治癒過程のうち炎症期に起こる現象を問う問題じゃ。
アユム
創傷治癒には段階があるんですよね。
博士
そうじゃ。大きく4段階に分けられる。出血凝固期、炎症期、増殖期、成熟期(再構築期)じゃ。
アユム
最初の出血凝固期はどんな段階ですか。
博士
受傷直後に血小板が凝集して一次止血、続いて凝固カスケードでフィブリン塊を作り止血する段階じゃ。血小板からは成長因子(PDGFなど)も放出される。
アユム
次の炎症期はどんな時期でしょうか。
博士
受傷後数時間〜3、5日続く時期で、炎症の4徴候(発赤・腫脹・熱感・疼痛)が出現するのじゃ。
アユム
なぜ炎症期が必要なんですか。
博士
創部にいる細菌や壊死組織を除去するためじゃ。好中球やマクロファージが遊走してきて、これらを貪食して創を清浄化する。
アユム
掃除屋さんが働く時期なんですね。滲出液はどこで出てくるんでしょうか。
博士
炎症性サイトカインやヒスタミンにより毛細血管の透過性が亢進して、血漿成分が血管外に漏れ出すのじゃ。これが滲出液の正体じゃ。
アユム
滲出液には何が含まれているんですか。
博士
白血球、免疫グロブリン、補体、成長因子、電解質などじゃ。治癒を進める物質がたくさん含まれておる。
アユム
昔は滲出液を乾かすのが良いとされていませんでしたか。
博士
かつてはそうじゃったが、現在は湿潤療法が主流じゃ。滲出液を保持することで成長因子の作用と自己融解を促し、治癒を早めるのじゃ。
アユム
なるほど、だからラップ療法や被覆材を使うんですね。増殖期ではどんなことが起こりますか。
博士
線維芽細胞が活性化してコラーゲンを産生し、新生血管ができ、両者で肉芽組織を形成する。また創縁から表皮角化細胞が遊走して上皮化が進むぞ。
アユム
筋線維芽細胞が創を収縮させるのもこの時期ですか。
博士
その通り、増殖期から成熟期にかけて創収縮が起こる。最後の成熟期ではコラーゲンがⅢ型からⅠ型に置き換わり、瘢痕が徐々に成熟していくのじゃ。
アユム
それで選択肢を見ると、滲出液貯留だけが炎症期の現象ですね。
博士
その通り、他はすべて増殖期以降の現象じゃ。
アユム
各段階の代表的現象を整理して覚えます。
POINT
創傷治癒は出血凝固期、炎症期、増殖期、成熟期の4段階で進行します。炎症期は受傷後数日間にわたって血管透過性が亢進し、白血球や成長因子を含む滲出液が創内に貯留するとともに、好中球やマクロファージが壊死組織・細菌を貪食して創を清浄化する時期です。線維芽細胞活性化・肉芽形成・上皮化・創収縮はその後の増殖期や成熟期に起こる現象なので、炎症期特有の現象は滲出液貯留となります。湿潤療法の原理も滲出液の有用性に基づいています。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:創傷の治癒過程で炎症期に起こる現象はどれか。
解説:正解は3です。創傷治癒は一般に(1)出血凝固期、(2)炎症期、(3)増殖期、(4)成熟(再構築)期の4段階に分けられます。炎症期は受傷直後から3〜5日ほど持続する時期で、好中球やマクロファージなどの炎症細胞が創部に遊走し、細菌や壊死組織を貪食して創の清浄化を行います。この時期は毛細血管の透過性が亢進し、血漿成分(蛋白質・白血球・免疫物質を含む)が血管外へ漏出するため、創内に滲出液が貯留するのが特徴です。滲出液には成長因子や免疫細胞が豊富に含まれ、創傷治癒を促進する重要な役割を持ちます。そのため近年の湿潤療法(moist wound healing)では、滲出液を適度に保持することで治癒促進を図ります。線維芽細胞の活性化・肉芽形成・創収縮・上皮化はいずれも増殖期以降の現象です。
選択肢考察
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× 1. 創傷周囲の線維芽細胞が活性化する。
線維芽細胞が活性化しコラーゲンを産生するのは増殖期の特徴で、炎症期の後に起こります。
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× 2. 肉芽の形成が促進される。
肉芽組織(新生毛細血管と線維芽細胞の集合)が形成されるのは増殖期の中心的現象です。
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○ 3. 滲出液が創に溜まる。
炎症期は血管透過性亢進により血漿成分が漏出し、滲出液が創内に貯留します。白血球や成長因子を含み清浄化と治癒促進に働きます。
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× 4. 創の収縮が起こる。
筋線維芽細胞の作用による創収縮は増殖期から成熟期にかけて起こる現象です。
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× 5. 上皮化が起こる。
表皮角化細胞が創縁から遊走して創面を被覆する上皮化は増殖期に進行する現象です。
湿潤療法では、滲出液を保持することで自己融解と成長因子の作用を促し、乾燥によるかさぶた形成を避けて治癒を早めます。ただし感染徴候(膿性・悪臭・発熱・発赤)がある場合は、滲出液過剰でありドレナージや抗菌処置が必要です。
創傷治癒4段階のうち炎症期特有の現象を問う問題。血管透過性亢進による滲出液貯留が炎症期の本質的現象である点を理解しましょう。