退院後の障害児育児——母親をひとりにしないための地域の入口
看護師国家試験 第114回 午後 第43問 / 小児看護学 / 慢性疾患・障害のある子どもと家族への看護
国試問題にチャレンジ
Aちゃん(1歳7か月、女児)は先天性水頭症(congenital hydrocephalus)のため脳室安腹腔<V−P>シャント造設術を受けて退院した。Aちゃんは歩行障害があり、母親が1人で育てている。 退院後、訪問看護師が訪問すると、Aちゃんの母親は「子どもが泣くとイライラします。この先Aを育てていく自信がなく、経済的にも生活していけるか不安です」と話した。 このとき、訪問看護師が母親に勧める相談先で最も適切なのはどれか。
- 1.居住地の社会福祉協議会
- 2.居住地の保健センター
- 3.障害児の子育てグループ
- 4.入院していた病院の医療相談室
対話形式の解説
博士
今日はちょっと考えさせられる事例じゃ。1歳7か月のAちゃんは先天性水頭症でV-Pシャントを造設して退院。母親はひとりで育てており、訪問時に「育てる自信がない」「経済的にも不安」と訴えている。さあどこを紹介する?
サクラ
泣くとイライラするって…育児ノイローゼ寸前ですよね。
博士
その通り。心理的にも経済的にも追い詰められておる。こういうとき看護師は「まず誰につなぐか」を判断する力が問われるのじゃ。
サクラ
選択肢を見てみます。社会福祉協議会、保健センター、子育てグループ、病院の医療相談室…どれも相談先っぽいですけど。
博士
それぞれの役割を整理しよう。まず社会福祉協議会は地域福祉を推進する民間団体で、ボランティア育成や生活福祉資金の貸付などを担う。直接的に母子保健の専門相談はしておらん。
サクラ
じゃあ違いますね。次の保健センターは?
博士
保健センターは市町村が設置する保健活動の拠点で、保健師・助産師・栄養士が配置されておる。乳幼児健診・予防接種・育児相談はもちろん、障害児や医療的ケア児への継続支援、母親のメンタルサポート、福祉課への橋渡しまで、まさに「地域における母子の総合窓口」じゃ。
サクラ
ひとつの窓口で育児も心理も経済もまとめて相談できるんですね。
博士
そこが大きな強みじゃ。担当保健師がついて家庭訪問もしてくれるから、孤立しがちな母親には命綱になる。
サクラ
子育てグループは?同じ境遇の親同士で励まし合えそうですけど。
博士
ピアサポートとして大切ではあるが、いま追い詰められている母親をいきなり集団に放り込むのは負担が大きい。母親の心が少し落ち着いて、仲間を求めるフェーズになってから紹介するのが順序じゃ。
サクラ
最後の病院の医療相談室は?
博士
医療ソーシャルワーカーがいて入院・通院・医療費の相談に乗ってくれるが、もう退院しておる以上、生活の場である地域の機関のほうが継続性が高い。役割分担として、退院後の地域生活は地域の機関、と覚えておくとよい。
サクラ
じゃあ正解は2の保健センターですね。
博士
その通り。さらに2021年に医療的ケア児支援法ができて、都道府県には医療的ケア児支援センターも設置されておる。特別児童扶養手当・小児慢性特定疾病医療費助成・自立支援医療(育成医療)・児童扶養手当——こうした制度を整理してくれるのも保健師の役割じゃ。
サクラ
母親が「相談しても無駄」と感じないように、訪問看護師がしっかり伴走することも大切ですね。
POINT
退院後に育児や経済への不安を抱える母親への相談先として最も適切なのは「居住地の保健センター」です。保健センターは市町村保健活動の拠点で、保健師による継続的な家庭訪問・育児相談に加え、障害児支援・心理支援・経済的制度(特別児童扶養手当、自立支援医療など)への橋渡しを包括的に担います。社会福祉協議会・子育てグループ・病院相談室にもそれぞれ役割がありますが、追い詰められた母親をまず受け止めて多機関へつなぐ「最初の窓口」としては保健センターが最適です。看護師は地域資源を理解し、母子を孤立させない支援ネットワークの一部として機能することが求められます。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:Aちゃん(1歳7か月、女児)は先天性水頭症(congenital hydrocephalus)のため脳室安腹腔<V−P>シャント造設術を受けて退院した。Aちゃんは歩行障害があり、母親が1人で育てている。 退院後、訪問看護師が訪問すると、Aちゃんの母親は「子どもが泣くとイライラします。この先Aを育てていく自信がなく、経済的にも生活していけるか不安です」と話した。 このとき、訪問看護師が母親に勧める相談先で最も適切なのはどれか。
解説:正解は 2 「居住地の保健センター」です。市町村保健センターは地域保健法に基づき市町村が設置する身近な保健の拠点で、保健師・助産師・栄養士などが配置されています。乳幼児健診・予防接種・育児相談に加え、障害児や医療的ケア児を含む母子の継続支援、心理的サポート、福祉課や障害児相談支援事業所など他機関との連携を担います。Aちゃんの母親が抱える「育児への自信のなさ」「経済的不安」「ひとり親としての孤立」を包括的に受け止め、必要な制度・サービスへ橋渡しできる第一の窓口として最も適切です。
選択肢考察
-
× 1. 居住地の社会福祉協議会
社会福祉協議会は地域福祉の推進を目的とする民間団体で、ボランティア育成や生活福祉資金貸付、見守り活動などを行う。母子保健や障害児育児の専門的支援の入口としては保健センターほど適切ではない。
-
○ 2. 居住地の保健センター
保健師による継続的な家庭訪問・育児相談が可能で、医療的ケア児の支援体制構築や経済的支援制度(特別児童扶養手当、自立支援医療など)への橋渡しを担う。退院直後の母子の包括的相談先として最適。
-
× 3. 障害児の子育てグループ
同じ立場の親同士が支え合うピアサポートとして有効だが、退院直後で育児への自信がなく経済的にも切迫している母親の最初の相談窓口としては優先度が低い。母親が安定してから紹介する選択肢となる。
-
× 4. 入院していた病院の医療相談室
医療ソーシャルワーカーが入院・通院に関わる相談を扱うが、地域での日常生活支援は地域の窓口の方が継続性・専門性が高い。退院後は地域資源へ移行するのが適切。
医療的ケア児や慢性疾患児を抱える家族の支援には複数の制度が関わる。①特別児童扶養手当(20歳未満の重度障害児を養育する保護者)、②小児慢性特定疾病医療費助成、③自立支援医療(育成医療)、④児童扶養手当(ひとり親家庭)、⑤居宅訪問型児童発達支援などである。これらの情報を整理し申請を支援するのが保健師・医療ソーシャルワーカー・障害児相談支援専門員の役割。2021年施行の医療的ケア児支援法により、各都道府県に医療的ケア児支援センターも設置されている。
退院後の障害児を持つ母親への相談窓口の選定を問う問題。育児・心理・経済を包括的に扱える地域の第一窓口として保健センターを選ぶ。
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