StudyNurse

6歳児の罪悪感への看護師の声かけ

看護師国家試験 第105回 午前 第101問 / 小児看護学 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

105回 午前 第101問

次の文を読み、問いに答えよ。 A君(6歳、男児)は、昨日午後から今朝にかけて5回の下痢便がみられ、体温が38.0℃であったため祖母と受診した。経口摂取は昨日の昼食が最後である。便の簡易検査の結果、ノロウイルスによる胃腸炎(gastroenteritis)と診断され、個室に入院した。入院後、末梢静脈ラインが左手背に留置され持続点滴が開始された。両親は同様の症状があるため面会できない。祖母が帰宅した後、A君は顔をしかめ、側臥位で膝を腹部の方に寄せ抱えるようにしている。バイタルサインは、体温37.5℃、呼吸数36/分、心拍数120/分であった。 入院後3日になったが両親は来院できない状況が続いている。A君は下痢が改善し体温も下がり笑顔がみられるようになった。看護師が清拭しながらA君と話していると「僕がお母さんの言うことを聞かなかったから病気になっちゃったんだ」と話した。 このときの看護師の対応で適切なのはどれか。

  1. 1.「お母さんが悲しむからそんなことを言ってはいけないよ」
  2. 2.「気持ちは分かるけれど病気になったのはA君のせいではないよ」
  3. 3.「A君の言うとおりだとすると入院している子はみんな悪い子なのかな」
  4. 4.「お母さんの言うことを聞いていたら病気にならなかったかもしれないね」

対話形式の解説

博士 博士

今日はノロウイルス胃腸炎で入院したA君、6歳の男の子のケースじゃ。症状は良くなったのに『お母さんの言うことを聞かなかったから病気になった』と言い出したぞ。

サクラ サクラ

えっ、切ないですね…どうしてそんな風に考えてしまうんですか?

博士 博士

ピアジェの発達理論では幼児期後半から学童期前半の子は『前操作期』にあって、出来事を自分の行動と結びつけて考える自己中心性が強いんじゃ。特に『悪いことをすると病気や怪我という罰が当たる』と感じる“内在的正義”という感覚があるんじゃよ。

サクラ サクラ

なるほど、両親と会えず一人で入院している状況だと、その気持ちはもっと強くなりそうです。正解はどれですか?

博士 博士

正解は2の『気持ちは分かるけれど病気になったのはA君のせいではないよ』じゃ。まず共感で受け止め、次に病気は本人の責任ではないと明確に伝えておる。

サクラ サクラ

選択肢1の『そんなことを言ってはいけないよ』はどうして違うんですか?

博士 博士

感情表出そのものを否定してしまうと、A君は本音を話せなくなり罪悪感が強まる。共感せずに叱る形になるから不適切じゃな。

サクラ サクラ

3の『入院している子はみんな悪い子なのかな』という問いかけは論理的にわかりやすい気もしますが…

博士 博士

大人向けには有効でも、前操作期の子どもは抽象的な推論が苦手でな。かえって混乱させたり、友達を巻き込むような罪悪感を生みかねない。

サクラ サクラ

4の『お母さんの言うことを聞いていたら病気にならなかったかもしれないね』はとんでもないですね。

博士 博士

そうじゃ、誤った因果関係を大人が肯定してしまうと、児の思い込みを強化してしまう。絶対に避けるべき言葉じゃよ。

サクラ サクラ

両親と面会できないのも不安の要因になりますよね。

博士 博士

そのとおり。分離不安も強まる時期じゃから、看護師が代理的な愛着対象となり、清拭や遊びの時間を通じて安心感を提供することが大切じゃ。

サクラ サクラ

病気の説明も年齢に合わせる必要がありそうですね。

博士 博士

うむ、プレパレーションといって、絵本や人形を使って病気や治療を子どもが理解できる言葉で伝える関わりが推奨されておる。

サクラ サクラ

発達段階を踏まえた共感的な関わりが鍵なんですね、よくわかりました。

博士 博士

そうじゃ。『否定せず、受け止め、そして正しく伝える』——この三拍子を覚えておくとよいぞ。

POINT

ノロウイルス胃腸炎で入院中の6歳男児が『病気は自分のせい』と訴えた場面の対応を問う状況設定問題です。幼児期後半の子どもは自己中心性や内在的正義から病気を罰と捉えやすく、看護師はまず感情を受容し、次に『あなたのせいではない』と明確に伝えることが求められます。選択肢2が共感と否定を適切に組み合わせており正解となります。

解答・解説

正解は 2 です

問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 A君(6歳、男児)は、昨日午後から今朝にかけて5回の下痢便がみられ、体温が38.0℃であったため祖母と受診した。経口摂取は昨日の昼食が最後である。便の簡易検査の結果、ノロウイルスによる胃腸炎(gastroenteritis)と診断され、個室に入院した。入院後、末梢静脈ラインが左手背に留置され持続点滴が開始された。両親は同様の症状があるため面会できない。祖母が帰宅した後、A君は顔をしかめ、側臥位で膝を腹部の方に寄せ抱えるようにしている。バイタルサインは、体温37.5℃、呼吸数36/分、心拍数120/分であった。 入院後3日になったが両親は来院できない状況が続いている。A君は下痢が改善し体温も下がり笑顔がみられるようになった。看護師が清拭しながらA君と話していると「僕がお母さんの言うことを聞かなかったから病気になっちゃったんだ」と話した。 このときの看護師の対応で適切なのはどれか。

解説:正解は 2 です。ピアジェの認知発達理論では、幼児期から学童期前半(前操作期)の子どもは自己中心性やアニミズム的思考をもち、出来事の因果関係を自分の行動と結びつけて捉える傾向があります。特に6歳前後の児は「病気は悪いことをした罰」と考える『内在的正義』の感覚が強く、両親と離れ一人で入院している状況では不安や罪悪感が増幅しやすくなります。看護師はまず児の気持ちを受容したうえで、病気は本人のせいではないと明確に伝え、安心を回復させる関わりが求められます。

選択肢考察

  1. × 1.  「お母さんが悲しむからそんなことを言ってはいけないよ」

    児の発言を否定し感情表出を抑えてしまう言葉で、罪悪感をさらに強めるため不適切です。

  2. 2.  「気持ちは分かるけれど病気になったのはA君のせいではないよ」

    まず児の気持ちを共感的に受容し、そのうえで病気は本人の責任ではないと明確に伝えており、幼児期の内在的正義観に対する最も適切な対応です。

  3. × 3.  「A君の言うとおりだとすると入院している子はみんな悪い子なのかな」

    論理的に論破するような問いかけは6歳児には理解が難しく、かえって混乱や自己否定感を招きます。

  4. × 4.  「お母さんの言うことを聞いていたら病気にならなかったかもしれないね」

    誤った因果関係を肯定し、児の罪悪感を強化するため看護師として不適切な発言です。

ノロウイルス胃腸炎は感染力が強く、幼児では脱水と感染対策のため個室管理や家族の面会制限が必要となる場合があります。入院による分離不安や罪悪感に対しては、プレパレーションや安心感を与える言語的・非言語的関わりが重要です。発達段階に応じ、『病気は罰ではない』と繰り返し伝え、タッチングや抱擁など身体的接触で情緒的安定を図ります。

幼児期の子どもが抱きやすい『病気は自分のせい』という罪悪感に対し、受容と明確な否定を組み合わせた看護師の声かけを選ぶ問題です。