5歳児への腰椎穿刺の説明:プレパレーションの基本
看護師国家試験 第109回 午後 第100問 / 小児看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aちゃん( 5 歳、男児)は、2 日前に 39 ℃に発熱して両側の耳下腺部の痛みを訴えた。昨日から同部位の腫脹がみられ、頭痛を訴えている。夜間に嘔吐が 4 回あり、発熱と頭痛が持続したため、本日父親に連れられて来院し、髄膜炎( meningitis )の疑いで個室に入院した。通っている幼稚園には、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)( mumps )罹患児が数名いる。 既往歴:特記すべきことはない。 予防接種歴:年齢相応の定期接種はすべて済んでいる。おたふくかぜワクチンは未接種である。 家族歴:両親は流行性耳下腺炎( mumps )罹患の既往がある。妹のBちゃん( 3 歳)は、年齢相応の定期予防接種は済んでいるが、おたふくかぜワクチンは未接種である。また、流行性耳下腺炎( mumps )罹患の既往はない。 身体所見:体温 39.2 ℃、項部硬直あり。両側耳下腺部の腫脹と圧痛あり。胸部聴診で異常なし。腹部は平坦で軟、圧痛なし。Kernig〈ケルニッヒ〉徴候あり。 検査所見:白血球 8,760 /μL。血清アミラーゼ 834 U/L(基準 44 ~ 132 )、CRP 0.1 mg /dL。 Aちゃんに腰椎穿刺を行うことになった。看護師が検査の準備を始めると、Aちゃんは「何をするの?」と不安そうな表情をして尋ねてきた。 看護師の適切な返答はどれか。
- 1.「泣いちゃだめだよ」
- 2.「気にしないでいいよ」
- 3.「痛いことはしないよ」
- 4.「背中にお注射するよ」
対話形式の解説
博士
今日はAちゃん5歳の事例じゃ。ムンプス髄膜炎の疑いで腰椎穿刺を予定、本人が「何をするの?」と不安げに尋ねてきた場面じゃ。
アユム
5歳の子に本当のことを言って、怖がらせないでしょうか?
博士
よい質問じゃ。ここで大事なのがプレパレーションという考え方じゃ。
アユム
プレパレーション?
博士
子どもが検査・処置を受けるときに、発達段階に応じて内容を事前に説明し、心理的準備を整えるケア技法じゃ。目的は恐怖の最小化と、子ども自身の対処能力を引き出すことじゃ。
アユム
原則はどんなものがありますか?
博士
3つ覚えておこう。①嘘をつかない、②感情を否定しない、③頑張りを承認する。これが柱じゃ。
アユム
選択肢1の「泣いちゃだめだよ」は感情否定ですね。
博士
その通り。泣くのは5歳児の自然な感情表出。許容したうえで「怖いよね、でも大丈夫」と寄り添うのが正しい。
アユム
「気にしないでいいよ」は質問に答えていませんね。
博士
そうじゃ。子どもは質問に正面から答えてもらえないと、ごまかされたと感じ不信感が募る。
アユム
「痛いことはしないよ」はどうしてダメなんですか?優しい気がするのですが。
博士
ここが落とし穴じゃ。腰椎穿刺は実際に局所麻酔を打ち、針を刺す。痛みを伴う処置で「痛くない」と嘘をつけば、実施時に裏切られた気持ちになって医療不信の種になる。
アユム
では「背中にお注射するよ」が適切なんですね。
博士
正解じゃ。5歳児は言葉理解ができるから、具体的に「背中」「お注射」と伝える。必要なら人形や絵で視覚的補足も加える。
アユム
年齢別のプレパレーションの工夫はどう違いますか?
博士
1〜3歳はぬいぐるみや絵本で見せる。4〜6歳は具体的な言葉+体験。学童期は手順と理由を説明。思春期はプライバシーと自己決定を重視する。
アユム
ムンプスで髄膜炎になるって、よくあるんですか?
博士
流行性耳下腺炎の合併症の代表格じゃ。頻度は1〜10%程度で、ほかに精巣炎(思春期以降)、難聴、膵炎がある。Aちゃんはアミラーゼ834と高値じゃから、膵炎の合併も疑われる。
アユム
だから腰椎穿刺で髄液を調べて診断確定するんですね。
博士
うむ。ウイルス性髄膜炎では髄液細胞数増加(リンパ球優位)、糖正常、蛋白軽度上昇、PCRでムンプスウイルス陽性になる。
アユム
処置前の声かけ一つでも、子どもの気持ちを左右するんですね。
POINT
5歳児に対する腰椎穿刺の説明では、発達段階に応じて具体的・正直に伝えるプレパレーションの原則に基づき「背中にお注射するよ」という返答が最適です。感情否定や嘘はかえって不安や医療不信を強め、子どもの対処能力を損ないます。Aちゃんはムンプスに伴う髄膜炎・膵炎が疑われる状態で、腰椎穿刺により髄液の細胞・生化学・PCR検査を行い診断確定を図ります。看護師は処置内容を正確に伝えつつ、処置中の頑張りを具体的に承認する「ディストラクション&プレイズ」を組み合わせることで、子どもが主体的に医療に参加できるよう支えます。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aちゃん( 5 歳、男児)は、2 日前に 39 ℃に発熱して両側の耳下腺部の痛みを訴えた。昨日から同部位の腫脹がみられ、頭痛を訴えている。夜間に嘔吐が 4 回あり、発熱と頭痛が持続したため、本日父親に連れられて来院し、髄膜炎( meningitis )の疑いで個室に入院した。通っている幼稚園には、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)( mumps )罹患児が数名いる。 既往歴:特記すべきことはない。 予防接種歴:年齢相応の定期接種はすべて済んでいる。おたふくかぜワクチンは未接種である。 家族歴:両親は流行性耳下腺炎( mumps )罹患の既往がある。妹のBちゃん( 3 歳)は、年齢相応の定期予防接種は済んでいるが、おたふくかぜワクチンは未接種である。また、流行性耳下腺炎( mumps )罹患の既往はない。 身体所見:体温 39.2 ℃、項部硬直あり。両側耳下腺部の腫脹と圧痛あり。胸部聴診で異常なし。腹部は平坦で軟、圧痛なし。Kernig〈ケルニッヒ〉徴候あり。 検査所見:白血球 8,760 /μL。血清アミラーゼ 834 U/L(基準 44 ~ 132 )、CRP 0.1 mg /dL。 Aちゃんに腰椎穿刺を行うことになった。看護師が検査の準備を始めると、Aちゃんは「何をするの?」と不安そうな表情をして尋ねてきた。 看護師の適切な返答はどれか。
解説:正解は 4 です。小児の検査・処置では、年齢に応じた具体的でわかりやすい説明(プレパレーション)を行うことが、不安軽減と治療への参加協力を促すうえで極めて重要である。5歳児は言葉での理解が可能な段階であり、「背中にお注射するよ」と具体的に伝えることが適切である。感情を否定したり嘘をついたりすれば、かえって恐怖心や不信感を強めてしまう。
選択肢考察
-
× 1. 「泣いちゃだめだよ」
感情を否定する言葉で、Aちゃんの不安や恐怖を抑圧させる。泣くことは子どもの自然な感情表出であり、許容する姿勢が必要。
-
× 2. 「気にしないでいいよ」
「何をするの?」という質問への答えになっていない。説明なしに処置を進めれば子どもの不信感が増す。
-
× 3. 「痛いことはしないよ」
腰椎穿刺は実際に痛みを伴う処置であり、嘘をつくことになる。実施時に強い痛みを感じると裏切られた気持ちになり、今後の医療不信につながる。
-
○ 4. 「背中にお注射するよ」
5歳児が理解できる言葉で、検査の具体的内容を正直に伝えている。プレパレーションの基本原則に合致する。
プレパレーションとは、子どもの発達段階に応じて処置・検査の内容を事前に説明・準備することで、恐怖や不安を最小限にし、子ども自身の対処能力を引き出すケア技法。年齢別のポイント:①幼児期前半(1〜3歳)は人形や絵本で視覚的に、②幼児期後半(4〜6歳)は具体的な言葉と体験を結びつける、③学童期は手順や理由も含めて説明、④思春期はプライバシー配慮と自己決定を重視。ポイントは「嘘をつかない」「感情を否定しない」「頑張ったことを承認する(ディストラクション&プレイズ)」である。今回のAちゃんは流行性耳下腺炎によるムンプス髄膜炎が疑われ、腰椎穿刺で髄液を採取し細胞数・糖・蛋白・ウイルスPCRなどを調べる。
小児(5歳児)への処置前説明として、プレパレーションの基本原則に則した具体的かつ正直な言葉かけを選べるかを問う。
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