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知的障害とは何か?発達期に始まる「2つの障害」を整理しよう

看護師国家試験 第114回 午前 第71問 / 精神看護学 / 精神疾患・障害の特徴と看護

国試問題にチャレンジ

114回 午前 第71問

知的障害<精神遅滞>(intellectual disability<mental retardation>)について正しいのはどれか。

  1. 1.成人期に発症する。
  2. 2.退行現象の1つである。
  3. 3.統合失調症(schizophrenia)が原因となる。
  4. 4.知的機能と適応機能が障害される。

対話形式の解説

博士 博士

今日は知的障害、いわゆる精神遅滞について学ぶぞ。混同されやすい概念じゃから、しっかり整理しよう。

サクラ サクラ

知的障害って、IQが低いってことですよね?

博士 博士

それだけでは不十分なのじゃ。現在の診断基準では、知的機能の制約に加えて、適応機能の制約、そして発達期に始まることの3つの要件が必要とされておる。

サクラ サクラ

適応機能って具体的にはどんなものですか?

博士 博士

日常生活を送るのに必要なスキルじゃな。会話・読み書きなどのコミュニケーション、友人関係や対人マナー、お金の管理、身だしなみ、通学や就労といった、社会で生きていくための実用的な能力のことじゃ。

サクラ サクラ

なるほど。IQが少し低くても、生活がきちんとできていれば知的障害とは診断されないんですね。

博士 博士

その通り。だから単に検査の数値だけで判断されるものではない。発症時期も重要で、おおむね18歳までの発達期に始まるのが知的障害じゃ。

サクラ サクラ

じゃあ高齢になって認知機能が落ちるのは知的障害ではないんですか?

博士 博士

それは認知症じゃな。一度獲得した知的能力が後天的に失われる病態で、知的障害とは別物じゃ。退行現象とも区別が必要じゃぞ。

サクラ サクラ

退行ってストレスで子ども返りするやつですよね?

博士 博士

うむ。お兄ちゃんになった子が赤ちゃん返りするような、防衛機制としての一時的な現象。知的障害は発達期に始まる持続的な障害じゃから、これも別物じゃ。

サクラ サクラ

統合失調症が原因になることはあるんですか?

博士 博士

ない。統合失調症は思春期以降に発症する精神疾患で、知的障害の原因ではない。知的障害の原因はダウン症などの染色体異常、フェニルケトン尿症などの代謝異常、周産期の低酸素、出生後の脳炎や外傷など多岐にわたるのじゃ。

サクラ サクラ

看護のポイントはありますか?

博士 博士

本人の理解度に合わせた具体的で簡潔な言葉、絵や写真などの視覚的補助、繰り返し説明することが基本じゃ。家族の介護負担にも配慮し、地域の支援制度につなげていく視点も忘れずにな。

POINT

知的障害(精神遅滞)は、発達期(おおむね18歳まで)に始まる、知的機能と適応機能の両方の制約を特徴とする状態です。単にIQが低いだけでなく、コミュニケーション、対人関係、自立した生活スキルなどの適応機能の障害があってはじめて知的障害と診断されます。原因は染色体異常、遺伝子異常、周産期障害、出生後の脳障害など多岐にわたり、統合失調症などの精神疾患や成人期発症の認知症とは明確に区別されます。看護師には、本人の理解レベルに合わせたコミュニケーション、視覚的支援、家族支援、そして社会資源の活用支援といった包括的なかかわりが求められます。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:知的障害<精神遅滞>(intellectual disability<mental retardation>)について正しいのはどれか。

解説:正解は 4 です。知的障害(精神遅滞)は、DSM-5やICD-11において、おおむね18歳までの発達期に始まり、知的機能(推論・問題解決・計画・抽象的思考・学習・経験からの判断など)の明らかな制約と、適応機能(コミュニケーション、対人関係、自己管理、家庭生活、地域社会への参加、学業や就労など)の制約という二領域の障害が認められる状態と定義される。両領域の障害がそろって初めて知的障害と診断され、重症度は軽度・中等度・重度・最重度に分類される。

選択肢考察

  1. × 1.  成人期に発症する。

    知的障害は発達期、おおむね18歳未満に発現する障害である。成人期に新たに知的機能が低下する場合は認知症など別の病態として扱われる。

  2. × 2.  退行現象の1つである。

    退行とは一度獲得した行動様式が一時的に未熟な段階に戻る現象で、心理的防衛機制の一つ。発達期に生じる持続的な知的・適応機能の制約である知的障害とは性質が異なる。

  3. × 3.  統合失調症(schizophrenia)が原因となる。

    統合失調症は思春期以降に発症する精神疾患であり、知的障害の原因疾患ではない。知的障害の原因は染色体異常、遺伝子異常、周産期障害、出生後の脳炎・外傷など多岐にわたる。

  4. 4.  知的機能と適応機能が障害される。

    知的障害の診断基準そのもので、知的機能(IQで評価)と適応機能(日常生活上のスキル)の両方の制約が発達期に認められることが要件となる。

知的障害の重症度は、かつてはIQの数値で判定されていたが、現在のDSM-5では適応機能の障害の程度を重視して分類される。原因としては、ダウン症候群やフェニルケトン尿症などの先天性疾患、胎児性アルコール症候群、低酸素性虚血性脳症、髄膜炎後遺症などが知られる。看護では本人の理解度に合わせた具体的で分かりやすい言葉、視覚的支援、繰り返しの説明、家族支援が基本となる。

知的障害(精神遅滞)の定義そのものを問う基本問題。発症時期(発達期)と、知的機能・適応機能の両方が障害されることがキーワード。