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寝たきりを防ぐ関節可動域訓練〜近位を支える意味を知る

看護師国家試験 第106回 午後 第43問 / 成人看護学 / 慢性疾患とリハビリテーション看護

国試問題にチャレンジ

106回 午後 第43問

他動運動による関節可動域〈ROM〉訓練を行うときの注意点で適切なのはどれか。

  1. 1.有酸素運動を取り入れる。
  2. 2.等尺性運動を取り入れる。
  3. 3.近位の関節を支持して行う。
  4. 4.痛みがある場合は速く動かす。

対話形式の解説

博士 博士

今回は関節可動域訓練、略してROM訓練について学ぶぞ。ROMはRange of Motionの略じゃな。

サクラ サクラ

寝たきりの患者さんに行う、関節のリハビリですよね?

博士 博士

その通り。長期臥床や麻痺で関節を動かさないと、関節包や筋・腱・皮膚が硬くなって拘縮が起こる。これを防ぎ、機能を維持・改善するのがROM訓練の目的じゃ。

サクラ サクラ

ROM訓練には種類があるんですか?

博士 博士

あるぞ。患者自身が動かす「自動運動」、介助者が動かす「他動運動」、その中間の「自動介助運動」の3つじゃ。今回の問題は他動運動じゃな。

サクラ サクラ

選択肢の3番「近位の関節を支持して行う」が正解のようですが、なぜ近位を支持するんですか?

博士 博士

良い質問じゃ。例えば肘のROM訓練をするとき、上腕(近位)をしっかり支えて、前腕(遠位)を動かすのじゃ。こうすると動かしたい肘関節だけが動いて、他の関節に余計な力がかからない。

サクラ サクラ

なるほど、近位を固定することで、狙った関節だけを正確に動かせるんですね。

博士 博士

その通りじゃ。もし近位を支えずに遠位だけ持って動かすと、肩関節や体幹まで一緒に動いてしまって、肘の可動域が正確に訓練できんし、組織損傷の危険も増えるのじゃ。

サクラ サクラ

4番の「痛みがある場合は速く動かす」は明らかに違いますよね。

博士 博士

もちろんじゃ。痛みは組織損傷のサイン。速く動かすと炎症が悪化したり、筋・靭帯を傷めたりする。痛みが出ない範囲でゆっくり、愛護的にが基本じゃな。

サクラ サクラ

1番の有酸素運動と2番の等尺性運動はどう違うんですか?

博士 博士

有酸素運動は持続的な全身運動で心肺機能を高めるもの。ウォーキングや水泳など。等尺性運動は関節を動かさずに筋収縮だけを行うもので、筋力強化が目的じゃ。両方とも関節を動かすROM訓練とは目的が違うのじゃ。

サクラ サクラ

なるほど。ROM訓練で注意することは他に何がありますか?

博士 博士

急激に動かさない、深呼吸を促して筋緊張を緩める、生理的可動域を超えない、急性期の炎症や骨折部位では医師に確認、1日2〜3回継続、などが大切じゃ。

サクラ サクラ

患者さんにとっては地味なリハビリですが、廃用症候群を防ぐ看護の基本ですね。

博士 博士

うむ、地味じゃが命を守る大切なケアじゃよ。

POINT

関節可動域(ROM)訓練は、関節拘縮の予防と機能維持・改善を目的としたリハビリの基本で、自動運動・他動運動・自動介助運動に分類されます。他動運動では、動かす関節の近位を確実に支持し、遠位をゆっくり動かすのが原則で、これにより対象関節のみを的確に動かし、組織損傷を防げます。痛みは組織損傷のサインであり、疼痛を誘発しない範囲で愛護的に行うことが重要です。寝たきり患者、麻痺患者、術後患者など、長期臥床が予想される対象に対し、看護師が日常的に実施する廃用症候群予防の基本技術であり、患者の「これから」の生活を支える大切な看護実践です。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:他動運動による関節可動域〈ROM〉訓練を行うときの注意点で適切なのはどれか。

解説:正解は 3 です。他動運動によるROM訓練では、動かす関節の中枢側(近位)をしっかり支持し、末梢側(遠位)をゆっくりと動かすことが基本原則である。近位を固定することで対象関節のみが動き、正確で安全な可動域訓練が可能となる。痛みを誘発しない範囲で、ゆっくりと愛護的に行い、呼吸を止めさせないように声かけしながら実施する。

選択肢考察

  1. × 1.  有酸素運動を取り入れる。

    有酸素運動は持続的な全身運動(ウォーキングや自転車など)で心肺機能の向上を目的とする。ROM訓練は関節拘縮の予防・改善が目的で、有酸素運動とは目的が異なる。

  2. × 2.  等尺性運動を取り入れる。

    等尺性運動は関節を動かさず筋収縮のみを行う筋力強化法(例:空気椅子)。関節を動かすROM訓練とは逆の概念で、両者は目的が異なる。

  3. 3.  近位の関節を支持して行う。

    動かす関節の中枢側を支持し、末梢側をゆっくり動かすのが基本。これにより対象関節だけを的確に動かせ、周囲の筋・靭帯・皮膚への負担を減らせる。

  4. × 4.  痛みがある場合は速く動かす。

    痛みは組織損傷のサインであり、速く動かすと炎症悪化や筋・靭帯損傷を招く。ROM訓練は痛みを生じない範囲で、ゆっくり愛護的に行うのが原則。

ROM訓練には他動運動(介助者が動かす)、自動介助運動(患者+介助)、自動運動(患者自身)がある。寝たきり患者や麻痺患者では関節拘縮を予防するため、1日2〜3回、各関節を生理的可動域内でゆっくり動かす。急激に行うと筋スパズムや組織損傷を招くため、深呼吸を促しながら筋緊張を緩めて実施する。脊髄損傷や骨折の急性期、関節炎の急性期などでは医師の指示を要する。

他動運動によるROM訓練の基本原則(近位支持・末梢誘導・疼痛回避)を問う問題。リハビリテーション看護の基礎。