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排卵を司る司令塔 下垂体摘出がもたらす無排卵のメカニズム

看護師国家試験 第109回 午前 第48問 / 成人看護学 / 内部環境と内分泌系

国試問題にチャレンジ

109回 午前 第48問

手術後に無排卵になるのはどれか。

  1. 1.脳下垂体全摘出術
  2. 2.単純子宮摘出術
  3. 3.低位前方切除術
  4. 4.片側卵巣切除術

対話形式の解説

博士 博士

今日は『手術後に無排卵になる』のはどれか、という問題じゃ。排卵はどうやって起こるか説明できるかの?

アユム アユム

視床下部からGnRH、下垂体からLHとFSH、そして卵巣から卵胞が育って排卵…という流れでしたよね。

博士 博士

素晴らしい。視床下部-下垂体-卵巣軸、HPO軸と呼ばれる系じゃ。このどこかが壊れると排卵は止まる。

アユム アユム

選択肢を見てみると、脳下垂体全摘出術、単純子宮摘出術、低位前方切除術、片側卵巣切除術…どれも排卵と関係がありそうで、なさそうで、悩みます。

博士 博士

一つずつ解析してみよう。まず単純子宮摘出術はどうじゃ?

アユム アユム

子宮だけ取って卵巣を残すなら、ホルモンは出るので排卵はあるはずですね。月経は止まっても排卵は続く。

博士 博士

その通り。月経=排卵ではない点に注意。片側卵巣切除はどうじゃ?

アユム アユム

もう片方が残っているから排卵は続きますね。卵巣予備能はやや減りますが無排卵にはならない。

博士 博士

うむ。低位前方切除術は?

アユム アユム

直腸癌の手術ですよね。排尿障害や性機能障害は起こりえますが、ホルモン分泌そのものには影響しないと思います。

博士 博士

その通り。骨盤神経叢の損傷で生じるのは勃起・射精障害など自律神経性の問題で、内分泌系は無関係じゃ。

アユム アユム

残るは下垂体全摘出術ですね。

博士 博士

正解じゃ。下垂体前葉は性腺刺激ホルモンだけでなく、TSH、ACTH、GH、プロラクチンも分泌する司令塔。全摘すればこれらが全部欠乏する汎下垂体機能低下症となり、当然LH・FSHも欠けて無排卵・無月経となる。

アユム アユム

手術はどんな疾患で行うんですか?

博士 博士

最多は下垂体腺腫、つまり下垂体腫瘍じゃ。経蝶形骨洞下垂体摘出術(TSS)で鼻から到達して腫瘍を取る。全摘や広範囲切除後は下垂体機能低下が問題になる。

アユム アユム

術後はどんなホルモンを補充するんですか?

博士 博士

副腎不全を防ぐヒドロコルチゾン、甲状腺機能低下に対するレボチロキシン、性腺機能維持の性ホルモン、必要に応じて成長ホルモン、そして尿崩症があれば酢酸デスモプレシンじゃ。

アユム アユム

尿崩症は後葉のADH不足ですよね?

博士 博士

その通り。下垂体後葉もダメージを受けると中枢性尿崩症となり、多尿・口渇・高Na血症が出る。術後の尿量と電解質を厳密に観察するのが看護の要じゃ。

アユム アユム

ACTH欠乏も要注意ですね。ストレスで副腎クリーゼを起こすと命に関わります。

博士 博士

まさに。周術期は厳重なステロイドカバーが必要じゃ。

アユム アユム

一つの下垂体手術で全身のホルモンを管理しないといけないとは奥深いですね。

博士 博士

下垂体は小さな臓器じゃが全身を司る中枢。そこを失えば補充医療が生涯続く。看護師はホルモン補充の継続支援と副腎不全・尿崩症の危機管理を担うのじゃ。

POINT

排卵は視床下部-下垂体-卵巣(HPO)軸によって制御されており、下垂体前葉から分泌されるLHとFSHが卵巣を刺激して卵胞発育と排卵を起こす。下垂体全摘出術ではこの司令塔が失われゴナドトロピンが出なくなるため無排卵・無月経となるほか、TSH・ACTH・GH・プロラクチンも欠乏して汎下垂体機能低下症となり、生涯にわたるホルモン補充が必要となる。単純子宮摘出術・低位前方切除術・片側卵巣切除術は卵巣機能・ホルモン分泌に影響せず排卵は継続する。周術期看護では副腎不全予防のステロイドカバーと中枢性尿崩症に伴う水分・電解質管理が生命維持の要となる。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:手術後に無排卵になるのはどれか。

解説:正解は 1 です。排卵は視床下部から放出されるGnRHが下垂体前葉を刺激し、LH・FSHなどのゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)が分泌され、卵巣の卵胞発育と排卵を制御する。この視床下部-下垂体-卵巣軸のいずれかが破綻すると排卵が停止する。下垂体全摘出術では前葉から分泌されるLH・FSH・TSH・ACTH・GH・プロラクチン全てが欠乏するため、卵巣への刺激が完全に絶たれ無排卵・無月経となる。術後はホルモン補充療法(甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン、性ホルモン、場合により成長ホルモン)が生涯必要となる。

選択肢考察

  1. 1.  脳下垂体全摘出術

    下垂体前葉の全ホルモンが欠乏し、LH・FSHが出なくなるため卵巣刺激が途絶え無排卵・無月経となる。他のホルモンも補充が必要となる重篤な汎下垂体機能低下症となる。

  2. × 2.  単純子宮摘出術

    子宮体のみを摘出し両側卵巣を温存する術式。月経は消失するが、卵巣機能は保たれるため排卵は続き、ホルモン分泌も正常である。

  3. × 3.  低位前方切除術

    直腸癌に対する肛門温存手術。骨盤神経叢損傷で排尿障害や性機能障害を起こすことがあるが、生殖内分泌系には影響せず無排卵の原因にはならない。

  4. × 4.  片側卵巣切除術

    片側の卵巣を残せば反対側の卵巣が排卵を担うため、排卵は継続する。卵巣予備能はやや低下するが無排卵にはならない。

下垂体腫瘍(下垂体腺腫が最多)では経蝶形骨洞下垂体摘出術(Hardy法)が標準的。全摘または広範囲切除では汎下垂体機能低下症となり、ACTH欠乏による副腎不全、TSH欠乏による甲状腺機能低下、ゴナドトロピン欠乏による性腺機能低下、ADH欠乏による中枢性尿崩症などを起こす。特にACTH欠乏とADH欠乏は周術期の生命予後に直結するため、術後は電解質・尿量・血糖・血圧を厳密に観察し、ヒドロコルチゾンや酢酸デスモプレシンなどの補充を行う。

視床下部-下垂体-卵巣軸の理解から、排卵調節の中枢である下垂体摘出が無排卵を引き起こすことを押さえる。