在宅NPPV利用者の停電対策を押さえよう
看護師国家試験 第110回 午後 第115問 / 地域・在宅看護論 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aさん( 37歳、男性)は妻( 40歳、会社員)と2人暮らし。筋強直性ジストロフィー( myotonic dystrophy )で週5回の訪問介護を利用していた。1か月前に傾眠傾向が著明となり入院して精査した結果、睡眠時無呼吸に対して夜間のみフェイスマスクを用いた非侵襲的陽圧換気療法が導入された。Aさんは四肢遠位筋に筋萎縮と筋力低下があるが、室内の移動は電動車椅子を操作して自力で行え、食事も準備すれば妻と同じものを摂取できる。退院後、週1回午後に訪問看護が導入されることになった。 訪問看護と訪問介護の担当者、Aさんと妻を含めた退院前カンファレンスが開催された。妻から「夜間に停電になったらどうすればよいですか」と発言があった。 このときの妻への訪問看護師の対応で適切なのはどれか。
- 1.電動式でない車椅子を購入するよう勧める。
- 2.訪問看護事業所が発電機を貸し出すと伝える。
- 3.バッグバルブマスクでの用手換気の指導を行う。
- 4.停電時にハザードマップを確認するよう提案する。
対話形式の解説
博士
筋強直性ジストロフィーのAさんじゃ。夜間のみNPPVを使っておるぞ。
サクラ
睡眠時無呼吸の治療なんですね。
博士
そうじゃ。日中は自発呼吸できるが、夜間は換気補助が必要な状態じゃ。
サクラ
妻は夜間の停電を心配しています。
博士
停電でNPPVが止まったら何が困る。
サクラ
睡眠中に無呼吸となって換気が維持できなくなります。
博士
その場合、家族がすぐにできる緊急対応が鍵となる。
サクラ
バッグバルブマスクでの用手換気ですね。
博士
その通り。選択肢3が正解じゃ。
サクラ
選択肢1の手動車椅子はどうですか。
博士
電動車椅子にはバッテリーがあるし、Aさんの筋力では手動はむしろ困難じゃ。
サクラ
選択肢2の発電機貸出は訪問看護事業所の役割ではありませんね。
博士
発電機は人工呼吸器業者や電力会社と調整して準備するのじゃ。
サクラ
ハザードマップは平時に確認するものですよね。
博士
うむ。停電時に地図を見ても間に合わん。
サクラ
正解は3で納得です。
博士
在宅呼吸療法では外部バッテリー、業者連絡先、用手換気を三点セットで備えるのじゃぞ。
POINT
在宅でNPPVを使用する患者が停電に遭遇した場合、機械停止中の呼吸維持が課題となります。日中自発呼吸が可能でも睡眠中は無呼吸に陥るため、家族が用手換気を行えるよう事前指導が不可欠です。加えて、外部バッテリーの常備、電力会社への医療機器利用者登録、業者の緊急連絡先把握を合わせて準備します。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:Aさん( 37歳、男性)は妻( 40歳、会社員)と2人暮らし。筋強直性ジストロフィー( myotonic dystrophy )で週5回の訪問介護を利用していた。1か月前に傾眠傾向が著明となり入院して精査した結果、睡眠時無呼吸に対して夜間のみフェイスマスクを用いた非侵襲的陽圧換気療法が導入された。Aさんは四肢遠位筋に筋萎縮と筋力低下があるが、室内の移動は電動車椅子を操作して自力で行え、食事も準備すれば妻と同じものを摂取できる。退院後、週1回午後に訪問看護が導入されることになった。 訪問看護と訪問介護の担当者、Aさんと妻を含めた退院前カンファレンスが開催された。妻から「夜間に停電になったらどうすればよいですか」と発言があった。 このときの妻への訪問看護師の対応で適切なのはどれか。
解説:正解は3のバッグバルブマスクでの用手換気の指導を行うことです。Aさんは夜間のみNPPVを使用しており、停電で人工呼吸器が停止した場合に備えて、家族が用手換気で対応できるよう事前に指導する必要があります。
選択肢考察
-
× 1. 電動式でない車椅子を購入するよう勧める。
電動車椅子は充電式バッテリーで一時的な停電でも動かせます。四肢遠位筋の筋力低下があるAさんにとって手動車椅子への変更は自立を損ないます。また妻の質問は夜間の呼吸管理に関する相談であり論点がずれています。
-
× 2. 訪問看護事業所が発電機を貸し出すと伝える。
訪問看護事業所が発電機を直接貸し出す体制は一般的ではなく、発電機は人工呼吸器メーカーや取扱業者、電力会社への事前登録と組み合わせて準備します。根拠のない約束は行いません。
-
○ 3. バッグバルブマスクでの用手換気の指導を行う。
NPPVは夜間の換気補助として用いられ、停電時は一時的に機械が停止する可能性があります。覚醒時は自発呼吸可能ですが睡眠中の無呼吸時に備え、家族が用手換気を行えるよう指導することが最も実践的で安全な対策です。
-
× 4. 停電時にハザードマップを確認するよう提案する。
ハザードマップは災害被害の想定区域や避難場所を示す地図で、停電が起きてから確認するものではなく平時に準備しておくべき情報です。停電時の緊急対応策としては不適切です。
在宅人工呼吸器療法の停電対策には、外部バッテリーの常備、電力会社への医療機器利用者登録、呼吸器業者の24時間対応窓口把握、バッグバルブマスクの常備と家族指導が基本です。筋強直性ジストロフィーは呼吸筋障害に加え、伝導障害や嚥下障害、白内障、糖尿病など多臓器にわたる合併症が特徴です。
在宅NPPV利用者の停電時対応として、家族ができる緊急換気手段の指導の重要性を理解しているかを問う問題です。
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