まばたきが命綱!DMD児とのコミュニケーション手段の選び方
看護師国家試験 第112回 午前 第115問 / 地域・在宅看護論 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み問いに答えよ。 Aちゃん(6歳、男児)は父親(50歳、会社員)、母親(48歳)、姉(11歳)と4人で暮らしている。Duchenne<デュシェンヌ>型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy)で身体障害者手帳(肢体不自由1級)が交付されている。喀痰吸引、胃瘻による経管栄養が必要で、訪問看護を週に2回利用している。まばたきの回数で「はい」と「いいえ」の意思表示はできるが、視線や上肢の動きには誤動作もあり、構音障害もあるため家族以外では意思の判断が難しい。また、手指での細かい操作はできない。Aちゃんは次年度から姉と同じ小学校の特別支援学級に通い、通常の学級の児童と交流の予定がある。 入学時に担任がAちゃんの意思を確認する方法で最も適切なのはどれか。
- 1.五十音の文字盤を用いてAちゃんが指でさした文字を1文字ずつ読み取る。
- 2.視線で入力できる意思伝達装置を用いてAちゃんに文字を入力してもらう。
- 3.閉じた質問<closed question>をしてAちゃんのまばたきの回数を確認する。
- 4.感情を絵で表現したカードを見せてAちゃんが指でさしたカードを確認する。
対話形式の解説
博士
今回は6歳でDMD、喀痰吸引と胃瘻が必要なAちゃんが特別支援学級に入学する場面じゃ。
サクラ
DMDはデュシェンヌ型筋ジストロフィーですね。X連鎖劣性遺伝で男児に発症するんですよね。
博士
その通り。ジストロフィン遺伝子の異常で骨格筋が進行性に変性する。2〜5歳で発症、10歳前後で歩行不能、20歳頃に呼吸筋・心筋障害が進行するのが典型的な経過じゃ。
サクラ
Aちゃんの6歳時点でもう喀痰吸引と胃瘻が必要なんですね。
博士
うむ、本児は進行が早いケースと考えられる。さて、担任がAちゃんの意思を確認する方法で適切なのはどれじゃ?
サクラ
選択肢は文字盤、視線入力装置、閉じた質問でまばたき、絵カードです。
博士
まず本児にできること・できないことを問題文から拾ってみよう。
サクラ
できること:まばたきの回数で「はい」「いいえ」の意思表示。できないこと:手指の細かい操作、視線や上肢の動きには誤動作、構音障害で家族以外には言葉が判別困難。
博士
素晴らしい整理じゃ。そうすると指さしは手指の問題でアウト、視線入力は誤動作でアウト、絵カードも指さしが必要だからアウト。
サクラ
残るは閉じた質問でまばたき確認。正解は3ですね。
博士
正解。確実に使える残存機能を活かし、二択で答えられる質問を用いるのが最も確実で誤解が少ない方法じゃ。
サクラ
閉じた質問って、オープンクエスチョンとの違いは?
博士
オープンクエスチョン(開いた質問)は「どう思いますか?」のように自由回答を求めるもの。クローズドクエスチョン(閉じた質問)は「はい/いいえ」や二択で答えられる形式じゃ。
サクラ
AAC(拡大・代替コミュニケーション)という言葉も習いました。
博士
うむ、Augmentative and Alternative Communicationの略で、発話が困難な人のコミュニケーションを支援する手段の総称じゃ。まばたきスイッチ、Tobiiなどの視線入力装置、透明文字盤、絵カード、YES/NOカードなど多様な選択肢がある。
サクラ
対象者の運動機能と認知機能を評価して選ぶんですね。
博士
その通り。まずは確実な手段(本児ではまばたき)で基礎的な意思を確認し、慣れてきたら段階的に選択肢を広げる。担任や支援員との関係構築も段階的に行うのが原則じゃ。
サクラ
医療的ケア児の学校生活には、学校配置の看護師も重要ですね。
博士
2021年施行の「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」でも、学校における医療的ケアと意思疎通支援が明記されておる。看護師・担任・家族・医療職の連携が鍵じゃ。
POINT
Aちゃんのコミュニケーション確認では、本児の残存機能であるまばたきを活用した閉じた質問が最も適切です。デュシェンヌ型筋ジストロフィーは進行性の筋変性疾患で、手指操作や発話、視線制御など多くの機能が損なわれる一方、まばたきは比較的保たれやすい残存機能として活用できます。AAC(拡大・代替コミュニケーション)の手段は多岐にわたりますが、対象者の能力を正確に評価し、確実に応答できる方法から段階的に導入することが基本原則です。看護師や担任、家族、支援員は連携して個別性に応じた意思疎通の工夫を重ね、医療的ケア児の学校生活と自己表現の機会を守る役割を担います。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:次の文を読み問いに答えよ。 Aちゃん(6歳、男児)は父親(50歳、会社員)、母親(48歳)、姉(11歳)と4人で暮らしている。Duchenne<デュシェンヌ>型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy)で身体障害者手帳(肢体不自由1級)が交付されている。喀痰吸引、胃瘻による経管栄養が必要で、訪問看護を週に2回利用している。まばたきの回数で「はい」と「いいえ」の意思表示はできるが、視線や上肢の動きには誤動作もあり、構音障害もあるため家族以外では意思の判断が難しい。また、手指での細かい操作はできない。Aちゃんは次年度から姉と同じ小学校の特別支援学級に通い、通常の学級の児童と交流の予定がある。 入学時に担任がAちゃんの意思を確認する方法で最も適切なのはどれか。
解説:正解は 3 の閉じた質問をしてAちゃんのまばたきの回数を確認することです。問題文から読み取れるAちゃんの運動機能は、手指の細かい操作ができない、視線や上肢の動きには誤動作がある、構音障害があり家族以外では言葉の判別が難しいという制約があります。一方で「まばたきの回数で『はい』と『いいえ』の意思表示はできる」ことが明記されており、これが確実なコミュニケーション手段です。したがって二択で答えられる閉じた質問(closed question)を使い、まばたきで応答してもらう方法が最も確実で誤解が少ない選択になります。
選択肢考察
-
× 1. 五十音の文字盤を用いてAちゃんが指でさした文字を1文字ずつ読み取る。
手指の細かい操作ができないため指さしは困難。透明文字盤と視線による読み取り法はあるが、視線にも誤動作がある本児には信頼性が低い。
-
× 2. 視線で入力できる意思伝達装置を用いてAちゃんに文字を入力してもらう。
視線入力装置は高機能だが、本児は視線の動きに誤動作があるため誤入力が多発する可能性が高い。入学時の初対面で用いる方法としては不適切。
-
○ 3. 閉じた質問<closed question>をしてAちゃんのまばたきの回数を確認する。
本児が確実に使えるまばたきを活用する方法。『はい』『いいえ』で答えられる質問に絞ることで担任とのコミュニケーションが成立する。
-
× 4. 感情を絵で表現したカードを見せてAちゃんが指でさしたカードを確認する。
絵カード法は発達段階に応じて有効な手段だが、手指の細かい操作ができない本児には指さしができず不適切。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーはジストロフィン遺伝子の異常によるX連鎖劣性遺伝性疾患で、男児に発症する。2〜5歳で発症し、10歳前後で歩行不能、20歳頃に呼吸筋・心筋障害が進行する。進行に伴い嚥下障害・構音障害・呼吸不全が出現し、人工呼吸器・胃瘻・喀痰吸引が必要となる。意思疎通には残存機能を活かしたAAC(拡大・代替コミュニケーション)が使われ、まばたきスイッチ、視線入力装置(例:Tobii)、透明文字盤、絵カード、YES/NOカードなど多様な手段がある。対象者の運動機能と認知機能を評価し最適な方法を選ぶ。まず閉じた質問で基礎的な意思を確認し、徐々に多様な選択肢を広げていくのが原則である。
Aちゃんの残存機能(まばたき)と制限機能(手指・視線・構音)を正確に読み取り、最も確実なコミュニケーション手段を選べるかが問われる。
「状況設定問題」の関連記事
-
片麻痺の高齢者が転びそうになった—訪問看護師が真っ先に確かめるのは「健側の力」
片麻痺で杖歩行する高齢者の在宅転倒予防において、最初に評価すべき身体機能を問う問題。健側の筋力が転倒回避の要…
114回
-
食べていない日こそ大切―在宅看取り期の口腔ケアという生命線
在宅で介護負担が大きい高齢夫婦に対し、誤嚥性肺炎予防の視点で「経口摂取がなくても口腔ケアは継続する」ことを家…
114回
-
「排泄だけは自立したい」—自尊心を守る尿失禁ケアの第一歩
自立心の強い在宅高齢者の尿失禁に対し、自立を維持できる行動療法的アプローチを選ぶ問題。本人の希望を尊重した支…
114回
-
在宅看取りという選択を支える―訪問看護師が家族に最初に伝えるべきこと
在宅看取りの意思決定支援において、訪問看護師が最初に提供すべき情報は「家族が安心して在宅看取りを選択できる支…
114回
-
退院3か月後の便秘—薬より先に整えるべきは「食卓」
在宅高齢者の便秘に対する初期対応として、薬剤や浣腸ではなく生活習慣の見直しを優先するという原則を問う問題。
114回