臥床患者の食事介助、誤嚥を防ぎながら『食べる楽しみ』も支える
看護師国家試験 第106回 午前 第18問 / 必修問題 / 日常生活援助技術
国試問題にチャレンジ
自力での摂取が困難な臥床患者の食事介助で適切なのはどれか。
- 1.水分摂取の介助を控える。
- 2.仰臥位の姿勢を保持するよう介助する。
- 3.食事内容が見える位置に食器を配置する。
- 4.患者の下顎が上がるよう上方からスプーンで介助する。
対話形式の解説
博士
今日は食事介助の基本を学ぼう。誤嚥予防が大きなテーマじゃ。
アユム
食事介助って、誤嚥させないように気をつけるのが一番大事ですよね。
博士
その通り。誤嚥性肺炎は高齢者の死因上位に入る。しかし同時に『食べる楽しみ』を奪わないことも重要じゃ。
アユム
正解の選択肢3『食事内容が見える位置に食器を配置する』は、誤嚥とは直接関係ない気がしますが…
博士
良いところに気づいたな。これは患者のQOLと自己決定を尊重する視点じゃ。食事が見えることで視覚的に食欲が刺激され、唾液分泌や嚥下反射も促される。
アユム
なるほど、『見える』ことで生理的にも心理的にも食事の質が上がるんですね。
博士
そう。臥床していても献立を自分で選びながら食べる感覚、順序を考える主体性、食べる楽しみ…これらは大切じゃ。
アユム
他の選択肢はなぜダメなんですか?
博士
選択肢1『水分摂取を控える』は脱水や口腔乾燥を招き、かえって嚥下を難しくする。誤嚥が心配ならとろみで粘度を調整すればよい。
アユム
選択肢2『仰臥位』は?
博士
仰臥位は咽頭と気道が直線的になり、食物が気管に流入しやすい。30〜60度のギャッチアップにして、さらに頸部を前屈位にするのが鉄則じゃ。
アユム
『頸部前屈位』って具体的にどんな姿勢ですか?
博士
おへそを覗くように少し顎を引く姿勢じゃ。こうすると喉頭蓋が気管に蓋をしやすくなり、食道への誘導がスムーズになる。
アユム
選択肢4『下顎が上がるように上方からスプーン』はなぜダメなんですか?
博士
下顎が上がる=頸部伸展じゃ。これは先ほどの頸部前屈とは真逆で、気道が開いて誤嚥リスクが跳ね上がる。スプーンは患者の目線より下から水平に運ぶのじゃ。
アユム
スプーンの持ち方で姿勢が変わっちゃうんですね。
博士
そうじゃ。小さな工夫が大きな安全性を生む。一口量も大事で、ティースプーン1杯程度、食物は舌の中央に置いて嚥下を確認してから次の一口にする。
アユム
食後の姿勢も関係ありますか?
博士
うむ、食後30分〜1時間は座位を保って胃食道逆流を予防する。すぐに横にすると逆流から誤嚥につながる。
アユム
口腔ケアも誤嚥予防に重要と聞きました。
博士
その通り。口腔内の細菌が少なければ、誤嚥しても肺炎になりにくい。食前・食後の口腔ケアはセットじゃ。
アユム
嚥下機能の評価はどうやって?
博士
反復唾液嚥下テスト(RSST)、改訂水飲みテスト(MWST)、フードテスト、嚥下造影(VF)、嚥下内視鏡(VE)などじゃ。看護師が担うRSSTやMWSTはベッドサイドで実施可能じゃ。
アユム
単に食べさせるだけじゃなくて、評価・姿勢・環境・ケアすべてが関わるんですね。
POINT
自力摂取が困難な臥床患者の食事介助では、誤嚥予防とQOL尊重の両立が求められます。食器を患者から見える位置に配置することで視覚的に食欲が刺激され、食事への主体的関わりと自己決定が支えられます。一方、仰臥位のままや下顎を上げる介助は誤嚥リスクを高めるため不適切で、30〜60度のギャッチアップと頸部前屈位、一口量の調整、食後の座位保持、口腔ケアが基本です。誤嚥性肺炎予防は高齢者看護の核心であり、姿勢・形態・ペース・環境を総合的にアセスメントする技術が不可欠です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:自力での摂取が困難な臥床患者の食事介助で適切なのはどれか。
解説:正解は 3 です。食事介助では誤嚥を防ぎつつ患者の食べる楽しみと自己決定を尊重することが重要。患者から食事内容が見える位置に食器を配置することで、視覚的な食欲刺激、食事への主体的関わり、献立の選択・ペース調整などQOL向上につながる。仰臥位のままの食事や下顎を挙上するような介助は誤嚥リスクを高めるため不適切。
選択肢考察
-
× 1. 水分摂取の介助を控える。
水分摂取を控えると脱水・口腔乾燥・嚥下困難を助長する。誤嚥リスクが高い場合はとろみ剤で粘度を調整し、嚥下しやすい形態で水分を提供する。
-
× 2. 仰臥位の姿勢を保持するよう介助する。
仰臥位では咽頭と気道が直線的になり誤嚥しやすい。30〜60度のギャッチアップ(ファウラー位〜セミファウラー位)にして頸部前屈位を保ち、嚥下反射を起こしやすくする。
-
○ 3. 食事内容が見える位置に食器を配置する。
視覚的に食事が見えることで唾液分泌・嚥下反射が誘発され、食欲や満足感が高まる。食事のペース・順序の希望を確認でき、患者の自己決定・QOL尊重にもつながる。
-
× 4. 患者の下顎が上がるよう上方からスプーンで介助する。
上方からスプーンを運ぶと下顎が上がり頸部が伸展、喉頭蓋が開いて食道と気道の分離が崩れ誤嚥リスクが高まる。スプーンは下方〜水平から運び、頸部前屈位を保つ。
安全な食事介助のポイント: (1)体位は30〜60度ギャッチアップ+頸部前屈位(おへそを見るように軽く顎を引く)、(2)一口量は小さく、ティースプーン1杯程度、(3)食物は舌の中央に置く、(4)嚥下確認後に次の一口、(5)水分はとろみで粘度調整、(6)食後30分〜1時間は座位を保ち胃食道逆流を防ぐ、(7)口腔ケアで誤嚥性肺炎予防。意識障害や嚥下障害が強い患者では、反復唾液嚥下テスト(RSST)や改訂水飲みテスト(MWST)、嚥下造影(VF)などの評価を行う。
誤嚥予防の原則(体位・頸部前屈・水分の形態調整)と、患者のQOL尊重(視覚刺激・自己決定支援)を同時に問う必修問題。
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