寝たきりで起こる全身の機能低下『廃用症候群』を理解する
看護師国家試験 第112回 午後 第19問 / 必修問題 / 日常生活援助技術
国試問題にチャレンジ
不活動状態が持続することで生じるのはどれか。
- 1.廃用症候群(disuse syndrome)
- 2.緊張病症候群(catatonia syndrome)
- 3.慢性疲労症候群(chronic fatigue syndrome)
- 4.シックハウス症候群(sick house syndrome)
対話形式の解説
博士
今日は廃用症候群を学ぶぞい。高齢化社会の日本で最も重要な概念のひとつじゃ。
サクラ
安静にしすぎると体がダメになっちゃうってことですよね。
博士
その通り。廃用症候群は『不活動』が原因で起こる全身機能低下の総称なのじゃ。
サクラ
どのくらいで影響が出るんですか?
博士
驚くほど早いぞ。完全臥床だと1週間で10〜15%の筋力低下、3週間で50%も筋力が落ちるといわれる。
サクラ
そんなに早いんですか!
博士
筋肉だけでなく、関節は拘縮し、骨は骨粗鬆症が進み、心肺機能も低下する。起立性低血圧で立ち上がっただけで失神することもある。
サクラ
臓器ごとにどんな症状が出るんですか?
博士
運動器では筋萎縮・関節拘縮・骨粗鬆症、循環器では起立性低血圧・深部静脈血栓症、呼吸器では沈下性肺炎・誤嚥性肺炎、消化器では食欲不振・便秘、皮膚では褥瘡、精神面では抑うつ・認知機能低下・せん妄…全身にわたるのじゃ。
サクラ
これは怖いですね。
博士
だから現代医療は『早期離床』が鉄則じゃ。以前は手術後1週間安静が当たり前だったが、今は翌日から歩かせる。ICUでも人工呼吸器管理中からリハビリを始めるABCDEバンドルが推奨されておる。
サクラ
他の選択肢との違いも知りたいです。緊張病症候群って?
博士
カタトニアとも呼ばれ、統合失調症やうつ病などの精神疾患、あるいは脳炎・薬剤などの器質的原因で生じる。カタレプシー(姿勢保持)、昏迷、反響言語などが特徴じゃ。不活動の結果ではない。
サクラ
慢性疲労症候群は?
博士
原因不明で半年以上続く重度疲労を主症状とする疾患じゃ。『ME/CFS』とも呼ばれ、近年はコロナ後遺症との関連でも注目されておる。こちらも不活動が原因ではない。
サクラ
シックハウス症候群は?
博士
建材や家具から出るホルムアルデヒド、トルエンなどの揮発性有機化合物が原因で、頭痛・めまい・目のかゆみなどを起こす健康障害じゃ。住環境の問題であって不活動は関係ない。
サクラ
看護としては何を意識すればいいですか?
博士
まず予防じゃ。体位変換、関節可動域訓練、早期離床、嚥下訓練、精神的なかかわり。『安静は万能ではない』という認識が最重要じゃ。
サクラ
『動かさないこと』自体が害になるという視点を持ちます!
POINT
廃用症候群は長期の不活動・安静によって生じる全身機能の二次的低下を総称する症候群で、筋萎縮・関節拘縮・骨粗鬆症・起立性低血圧・深部静脈血栓症・誤嚥性肺炎・褥瘡・抑うつ・認知機能低下など多臓器にわたる症状を呈します。完全臥床では1週間で筋力が10〜15%低下するなど進行が早いため、現代医療では『早期離床』が大原則であり、ICU領域でも人工呼吸管理中から行うABCDEバンドルに代表されるリハビリテーションの早期導入が推奨されています。類似語として挙げられる緊張病症候群は精神疾患や器質的脳疾患を背景とするカタレプシーや昏迷などの精神運動症状、慢性疲労症候群は原因不明の重度疲労、シックハウス症候群は室内化学物質による健康障害と、原因と病態がそれぞれ異なります。高齢者看護・リハビリテーション看護・急性期看護のすべてに直結する重要概念として正確に理解しておくことが求められます。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:不活動状態が持続することで生じるのはどれか。
解説:正解は 1 です。廃用症候群(disuse syndrome)とは、過度な安静・不活動状態が長期間続くことによって生じる、筋萎縮・関節拘縮・起立性低血圧・褥瘡・誤嚥性肺炎・深部静脈血栓症・うつ状態など全身にわたる二次的な機能低下の総称です。入院・寝たきり・ギプス固定などが典型的誘因です。
選択肢考察
-
○ 1. 廃用症候群(disuse syndrome)
不活動による筋・骨・心肺・消化・精神機能の全般的低下。早期離床と適度な運動で予防する。
-
× 2. 緊張病症候群(catatonia syndrome)
統合失調症やうつ病、器質性脳疾患などを背景に、カタレプシー・昏迷・反響言語・常同症などの精神運動症状を呈する症候群。不活動とは原因が異なる。
-
× 3. 慢性疲労症候群(chronic fatigue syndrome)
原因不明で半年以上続く高度疲労を主症状とし、日常生活に著明な支障をきたす疾患。不活動の結果ではなく、むしろ症状として活動性が低下する。
-
× 4. シックハウス症候群(sick house syndrome)
建材や家具から放散するホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物による室内空気汚染が原因。不活動とは無関係。
廃用症候群の主な症状を臓器系統で整理すると、運動器:筋萎縮(週10〜15%の筋力低下)、関節拘縮、骨粗鬆症/循環器:起立性低血圧、心機能低下、深部静脈血栓症/呼吸器:沈下性肺炎、誤嚥性肺炎/消化器:食欲不振、便秘/泌尿器:尿路感染、尿失禁/皮膚:褥瘡/精神:抑うつ、認知機能低下、せん妄。予防は『早期離床』が鉄則で、ICUでもリハビリテーションを早期から導入することが推奨される(ABCDEバンドル)。
不活動による二次合併症の総称『廃用症候群』の知識を問う。類似の症候群名と混同しないよう、それぞれの原因を区別する。
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