転倒転落予防の基本は環境調整
看護師国家試験 第108回 午後 第20問 / 必修問題 / 患者の安全・安楽を守る看護技術
国試問題にチャレンジ
転倒・転落の危険性が高い成人の入院患者に看護師が行う対応で正しいのはどれか。
- 1.夜間はおむつを使用する。
- 2.履物はスリッパを使用する。
- 3.離床センサーの使用は控える。
- 4.端坐位時に足底が床につくベッドの高さにする。
対話形式の解説
博士
転倒転落リスクの高い患者への看護を一緒に考えよう。選択肢のどれが正しい対応か分かるかな。
アユム
4の「端坐位で足底が床につくベッド高」ですね。
博士
正解じゃ。立ち上がる瞬間は一番転倒しやすいタイミング。足底がしっかり床に着いてから体重を前に移すのが理にかなった動作じゃ。
アユム
ベッドが高すぎると踵が浮いて不安定ですよね。
博士
その通り。逆に低すぎると臀部が上がりにくく立ち上がりに余計な力が要る。膝が股関節よりやや低い姿勢が理想じゃ。
アユム
1の「夜間おむつ使用」はダメな理由は?
博士
おむつをつけてもトイレに行きたい患者は動いてしまう。そのときが危険なんじゃ。しかも自尊心を傷つけ排泄自立度まで下げてしまう。
アユム
原則として尿意がある人にはおむつではなく、ポータブルトイレや夜間の排泄介助が望ましいですね。
博士
その通り。2のスリッパはどうじゃ?
アユム
かかとが固定されず脱げやすいし、滑りやすい。転倒リスクが高まる履物ですよね。
博士
そう。入院時はかかとを覆う滑り止め付きのシューズを指導する。3の離床センサーは?
アユム
安易な使用は避けるべきだけど、ハイリスク患者には有効なツールですよね。使用を控えるのは誤りです。
博士
その通り。夜間や目の届かない時間帯に早期発見ができる。ベッドサイドマット型、離床検知型、赤外線型などさまざまなタイプがある。
アユム
転倒転落のリスク評価はどう行うのでしょうか。
博士
Morse Fall ScaleやSTRATIFYなどがあるが、日本では施設独自のアセスメントスコアシートが多い。年齢、転倒歴、筋力、認知機能、服薬、排泄状況などを点数化する。
アユム
内的要因と外的要因の両方をみるのですね。
博士
その通り。内的要因は加齢、薬剤、視力、認知機能。外的要因は照明、床、履物、ベッド高、柵配置などじゃ。
アユム
対策としては環境調整のほかに何がありますか?
博士
低床ベッド、センサーマット、夜間足元灯、衣服の丈調整、ベンゾジアゼピンなど転倒リスク薬の見直し、リハビリによる筋力維持などを組み合わせる。
アユム
身体抑制は最終手段、ですね。
博士
その通り。切迫性・非代替性・一時性の3要件を満たすときのみに限定する。まず環境調整から始めるのが鉄則じゃ。
POINT
転倒転落ハイリスク患者への対応では環境調整が基本で、端坐位時に足底が床につくベッド高への調整が最重要です。スリッパや夜間おむつは転倒予防にならず、離床センサーはむしろ有効活用します。内的・外的要因を多面的に評価し、低床ベッドや足元灯、服薬見直しを組み合わせた包括的介入が求められ、身体抑制は3要件を満たす場合に限る最終手段です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:転倒・転落の危険性が高い成人の入院患者に看護師が行う対応で正しいのはどれか。
解説:正解は 4 です。ベッドから安全に立ち上がるには、端坐位で両足底がしっかり床に接地し、膝関節が股関節よりわずかに低い姿勢をとれることが重要です。床に足がつく高さにベッドを調整することで、立ち上がりの動作が安定し、滑りやずり落ちによる転倒を防げます。環境調整は転倒転落予防の基本対応です。
選択肢考察
-
× 1. 夜間はおむつを使用する。
おむつ使用は患者の自尊心を傷つけ排泄自立度を低下させるうえ、トイレに行きたい患者はおむつがあっても動くため、転倒予防になりません。
-
× 2. 履物はスリッパを使用する。
スリッパはかかとが固定されず滑りやすく、脱げて躓きやすいため転倒リスクがむしろ高まります。かかとを覆う滑り止め付きの靴が推奨されます。
-
× 3. 離床センサーの使用は控える。
離床センサーは患者が無断で立ち上がった際に早期発見できる有効な転倒予防ツールで、ハイリスク患者では積極的に活用します。
-
○ 4. 端坐位時に足底が床につくベッドの高さにする。
足底接地は立ち上がり動作の基盤であり、ベッド高の適正化は転倒転落予防の最も基本的かつ効果的な環境調整です。
転倒転落予防は多面的な介入が重要で、内的要因(加齢、筋力低下、薬剤、認知機能、視力)と外的要因(照明、床の段差、履物、ベッド高、ベッド柵、ポータブルトイレ配置)の両面をアセスメントします。Morseスケールや日本看護協会のリスクアセスメントスコアで定量化し、センサーマット、低床ベッド、夜間足元灯、衣服の調整、服薬見直しなどを組み合わせます。身体抑制は原則最終手段で、不要な使用は避けます。
転倒転落ハイリスク患者への環境調整の基本を問う必修問題です。
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