高齢者の転倒を防ぐ環境整備、やりがちなNGも解説
看護師国家試験 第114回 午前 第4問 / 必修問題 / 患者の安全・安楽を守る看護技術
国試問題にチャレンジ
高齢者の転倒予防のための環境づくりで適切なのはどれか。
- 1.玄関にマットを敷く。
- 2.廊下に手すりをつける。
- 3.夜間は廊下の照明を消す。
- 4.椅子にキャスターをつける。
対話形式の解説
博士
今回は高齢者の転倒予防じゃ。転倒は大腿骨近位部骨折から寝たきりに直結することもある重大な事故じゃよ。
アユム
転倒って、加齢のどういう変化で起きやすくなるんですか?
博士
主に4つじゃ。①下肢筋力の低下、②バランス機能の低下、③視力・明暗順応の低下、④反応速度の低下。これらが複合して、若い頃なら避けられた障害物につまずいて転んでしまうのじゃ。
アユム
対策は大きく分けて2つあるって聞きました。
博士
うむ。身体機能の維持・向上と、環境整備の2本柱じゃ。今回の問題は後者の環境整備について問うている。
アユム
選択肢を見ると、玄関にマット、廊下に手すり、夜間の照明を消す、椅子にキャスター…の4つですね。
博士
では一つずつ確認しよう。『玄関にマット』は一見良さそうじゃが、マット自体が段差になり、しかも端がめくれてつまずく。高齢者は下肢を上げる力が落ちておるから、わずかな段差でもつまずくのじゃ。
アユム
あっ、逆効果になっちゃうんですね。
博士
そう。『夜間の照明を消す』は論外じゃな。高齢者は暗所への目の順応が遅く、暗い中を歩くと足元が見えず転倒リスクが跳ね上がる。夜間は足元灯や人感センサー照明を活用するのが基本じゃ。
アユム
『椅子にキャスター』は…確かに座ろうとしたら椅子が動いたら危ないですね。
博士
その通り。高齢者の椅子は安定した4脚、できれば肘掛け付きで立ち上がりやすいものが望ましい。
アユム
となると残る『廊下に手すり』が正解ですね。
博士
うむ。手すりは歩行時につかまって身体を支えられるから、バランスが崩れても即転倒に至らない。介護保険の住宅改修でも手すり設置は最多の項目じゃ。
アユム
介護保険で住宅改修ができるって初めて知りました。
博士
要支援・要介護の認定を受けると、20万円を上限に住宅改修費の9割(所得により8割・7割)が支給される。対象は①手すり設置、②段差解消、③滑り止め・床材変更、④引き戸への扉交換、⑤洋式便器への取替、⑥これらに付帯する工事じゃ。
アユム
看護師はどこまで関われるんですか?
博士
退院前のカンファレンスや訪問看護で自宅環境をアセスメントし、ケアマネや理学療法士と連携して改修を提案する。内的要因(薬剤・疾患・ふらつき)と外的要因(環境)の両面から評価するのが看護師の強みじゃ。
アユム
特に注意すべき薬剤ってありますか?
博士
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬、降圧薬による起立性低血圧、抗精神病薬、そして多剤併用(ポリファーマシー)が有名じゃ。服薬内容を把握して主治医・薬剤師と相談するのも大事じゃよ。
アユム
環境だけでなく、薬や生活動作まで含めて転倒予防って考えるんですね。
博士
その通り。転倒は起きてからでは遅い。『予防』の視点を常に持つのが、在宅・高齢者看護の基本姿勢なのじゃ。
POINT
高齢者の転倒予防における環境整備の最適解は『廊下に手すりをつける』ことで、歩行時に身体を支えて安定性を高め、バランスが崩れても即転倒に至らない効果があります。対してマットは段差・つまずき要因、夜間の消灯は視覚情報の喪失、椅子のキャスターは座面の不安定化につながり、いずれも転倒リスクを高めるため不適切です。転倒は加齢による筋力低下・バランス低下・視力低下・反応遅延と、段差・照明不足・不安定な家具などの環境要因が重なって発生し、大腿骨近位部骨折から寝たきりに直結することもある重大事故です。看護師は介護保険の住宅改修(手すり設置・段差解消・床材変更など、上限20万円)を活用し、内的要因(多剤併用・疾患)と外的要因(環境)の両面から評価・介入することで、高齢者のQOLと自立した生活を支えます。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:高齢者の転倒予防のための環境づくりで適切なのはどれか。
解説:正解は 2 の「廊下に手すりをつける。」です。高齢者は加齢に伴う下肢筋力の低下、バランス機能の低下、視力・明暗順応の低下、反応速度の低下などにより、若年者より転倒リスクが高く、転倒はその後の骨折・寝たきり・生命予後悪化に直結します。転倒予防の基本は『身体機能の維持・向上』と『環境整備』の2本柱で、環境整備では①段差の解消、②手すり・握り棒の設置、③十分な照明の確保、④滑らない床材・履物、⑤動線上の障害物排除、が重要です。廊下への手すり設置は、歩行時に身体を支えて歩行の安定性を高め、転倒予防に直結する代表的な環境調整です。
選択肢考察
-
× 1. 玄関にマットを敷く。
マット自体が小さな段差となり、また端のめくれや滑りが新たなつまずき要因となる。高齢者は下肢挙上が不十分なため、わずかな段差でもつまずきやすく、逆効果になり得る。
-
○ 2. 廊下に手すりをつける。
歩行中につかまって身体を支えられるため、下肢筋力やバランス機能が低下した高齢者でも安定した移動が可能になる。転倒予防における代表的な環境調整で、介護保険の住宅改修でも最も多く行われる項目。
-
× 3. 夜間は廊下の照明を消す。
高齢者は視力・明暗順応ともに低下しているため、暗所では足元が見えず転倒リスクが跳ね上がる。夜間は足元灯・常夜灯・人感センサー照明で最低限の明るさを確保するのが原則。
-
× 4. 椅子にキャスターをつける。
キャスター付きの椅子は立ち座りの際に滑って動いてしまい、体重を預けた瞬間に椅子が後ろへ逃げて転倒を招く。高齢者の椅子は安定した4脚で、できれば肘掛け付きが望ましい。
転倒リスク要因は『内的要因』と『外的要因』に分類される。内的要因には加齢変化(筋力低下・バランス低下・視力低下)・疾患(脳卒中後遺症、パーキンソン病、認知症)・多剤併用(特に睡眠薬・降圧薬・抗精神病薬)が、外的要因には段差・滑りやすい床・不十分な照明・不適切な履物・散らかった動線などがある。看護師は両側面からアセスメントし、介護保険を活用した住宅改修(手すり設置・段差解消・滑り止め・引き戸への変更・洋式便器への交換)も提案できるよう、制度の概要も押さえておきたい。なお、日本では転倒・転落による死亡が不慮の事故死の主要因となっており、公衆衛生上も重要な課題である。
高齢者の転倒予防における環境調整の基本原則(段差解消・手すり設置・照明確保・安定した座面)を問う。
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