せん妄の3因子を整理!身体拘束が『誘発因子』と言われる理由
看護師国家試験 第106回 午前 第15問 / 必修問題 / 徴候と疾患
国試問題にチャレンジ
せん妄の誘発因子はどれか。
- 1.身体拘束
- 2.心血管障害
- 3.低栄養状態
- 4.電解質バランス異常
対話形式の解説
博士
今日はせん妄について学ぼう。高齢者医療では避けて通れないテーマじゃ。
サクラ
せん妄って『一時的に混乱した状態』ってイメージがありますが、具体的にはどんな症状なんですか?
博士
急激に発症する意識障害+注意障害・認知機能障害・幻覚・妄想・睡眠覚醒リズムの乱れが特徴じゃ。認知症と違って可逆性があり、時間帯による変動(夜間に悪化しやすい)があるのもポイントじゃ。
サクラ
認知症との違いが重要なんですね。
博士
そうじゃ。せん妄は『急性・変動性・可逆性』、認知症は『慢性・進行性・持続性』と覚えるとよい。
サクラ
さて、この問題の『誘発因子』って何ですか?選択肢4つとも原因になりそうに見えるんですが…。
博士
良いところに気づいたな。せん妄の発症要因は3つに分類されるんじゃ。『準備因子』『直接因子』『誘発因子』じゃな。
サクラ
それぞれ教えてください。
博士
準備因子は、高齢・認知症・脳血管疾患・アルコール多飲歴など、その人がもともと持つ脆弱性。直接因子は、感染症・電解質異常・低酸素・薬剤・手術・脱水など、脳機能に直接影響する原因疾患や身体状態じゃ。
サクラ
じゃあ誘発因子は?
博士
環境的・心理的な要因じゃ。身体拘束、不動、ICU環境、騒音、不眠、視聴覚遮断、痛み、ストレスなどじゃな。
サクラ
なるほど、身体拘束はまさに誘発因子なんですね。
博士
そう。拘束されると不動化、不安、自己コントロール感の喪失、睡眠障害が生じ、せん妄を強く誘発する。だから身体拘束は『3原則(切迫性・非代替性・一時性)』を満たす場合しか行ってはならないのじゃ。
サクラ
選択肢2〜4の心血管障害・低栄養・電解質異常は?
博士
これらは直接因子(または準備因子)に分類される。つまりせん妄の原因疾患そのものじゃ。本問では『誘発因子』を聞いているから、身体拘束が正解となる。
サクラ
せん妄の評価はどうするんですか?
博士
ICUではCAM-ICU、一般病棟ではCAMやDRS-R-98などのスクリーニングツールを使う。『急性発症+注意障害+意識レベル変動or思考混乱』が4項目の軸じゃ。
サクラ
予防や看護のポイントは?
博士
不要な身体拘束を避ける、早期離床、昼夜リズムの整備、家族との面会、眼鏡・補聴器の装着、疼痛コントロール、ベンゾジアゼピンの慎重使用などじゃ。非薬物療法が第一じゃな。
サクラ
薬物治療はしないんですか?
博士
興奮や幻覚が強い場合は抗精神病薬(ハロペリドール・リスペリドン・クエチアピンなど)を使うことがある。しかし根本対応は原因除去と環境調整じゃ。
POINT
せん妄は急性に発症する意識障害に注意障害や幻覚、睡眠リズム障害を伴う状態で、発症要因は『準備因子』『直接因子』『誘発(促進)因子』に分類されます。本問の身体拘束は、不動や心理的苦痛、自己コントロール感の喪失を介してせん妄を強く促進する代表的な誘発因子です。一方、心血管障害・低栄養・電解質異常はせん妄の直接因子(原因疾患)に分類され、問題の趣旨とは異なります。看護では不要な身体拘束の回避、昼夜リズム整備、家族面会、疼痛管理などの非薬物的介入が最重要で、高齢化が進む医療現場で必須の視点です。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:せん妄の誘発因子はどれか。
解説:正解は 1 です。せん妄は急激に出現する意識障害に注意障害・認知機能障害・幻覚・睡眠覚醒リズムの乱れなどが加わった状態。発症要因は『準備因子』『直接因子』『誘発(促進)因子』の3つに分類され、身体拘束は環境的・心理的に発症を促進する代表的な誘発因子にあたる。心血管障害・低栄養・電解質異常はせん妄の『直接因子(原因疾患)』に分類されるため、本問では性質が異なる。
選択肢考察
-
○ 1. 身体拘束
身体拘束は不動・苦痛・不安・自己コントロール感の喪失をもたらし、せん妄を誘発する環境的要因。入院環境・騒音・不眠・頻回の処置などと並び、代表的な促進(誘発)因子。
-
× 2. 心血管障害
心不全などの心血管障害は脳の低灌流・低酸素を介してせん妄を惹起する『直接因子(原因疾患)』であり、誘発因子とは区別される。
-
× 3. 低栄養状態
低栄養はビタミン欠乏や代謝異常を介してせん妄の原因となる身体的要因(準備因子または直接因子)であり、狭義の誘発因子とは異なる。
-
× 4. 電解質バランス異常
低Na血症・高Ca血症などの電解質異常は脳の神経伝達を直接障害する代表的な原因疾患で、直接因子に分類される。
せん妄の3因子: (1)準備因子=高齢・認知症・脳器質疾患・アルコール多飲歴など本人の脆弱性、(2)直接因子=感染症・電解質異常・低酸素・薬剤(抗コリン薬・ベンゾジアゼピン系・オピオイドなど)・手術・脱水・代謝異常など、(3)誘発因子(促進因子)=身体拘束・不動・ICU環境・騒音・不眠・視聴覚遮断・痛み・ストレス。予防にはCAM-ICUなどのスクリーニング、早期離床、昼夜リズム整備、家族面会、不要な身体拘束の回避、ベンゾジアゼピンの慎重使用などが有効。
せん妄の発症機序を『準備因子・直接因子・誘発因子』に分類し、それぞれの具体例を識別できるかを問う問題。
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