湿潤環境が創を治す!モイストヒーリングの基本
看護師国家試験 第110回 午前 第82問 / 基礎看護学 / 診療に伴う看護技術
国試問題にチャレンジ
感染徴候のない創部の治癒を促進する要因はどれか。
- 1.圧迫
- 2.痂皮
- 3.湿潤
- 4.消毒
- 5.浮腫
対話形式の解説
博士
昔は傷を乾かして治すと言われておったが、今は違う。何が治癒を促すと思う?
アユム
湿潤環境ですよね。ドレッシング材でじめっと保つやつ
博士
その通りじゃ。浸出液には細胞増殖因子がたっぷり入っておってな、これが肉芽や上皮化を促すのじゃ
アユム
じゃあ、かさぶたは作らない方がいいのですか
博士
そうじゃ。痂皮は上皮細胞が這い進むときの障害物になる。湿潤環境なら痂皮を作らずに治っていくぞ
アユム
消毒は必要ないのでしょうか?感染が心配です
博士
感染徴候がない前提ならば消毒は不要じゃ。消毒液は細菌だけでなく線維芽細胞にも毒性があってのう
アユム
えっ、正常な細胞まで傷つけてしまうのですね
博士
そうじゃから、洗浄は生理食塩水か水道水で十分とされておる
アユム
圧迫はどうですか
博士
止血のときだけじゃ。持続的に押さえると血流が途絶えて治りが悪くなる
アユム
浮腫は低栄養のときに出やすいですよね
博士
その通り、浮腫があると皮膚が薄く脆くなって、褥瘡などもできやすい。治癒遅延の典型じゃ
アユム
TIME理論というのを聞きました
博士
創面環境調整の考え方じゃな。壊死組織、感染、湿潤、創縁の4つを整える。実践の指針になるぞ
アユム
感染徴候があるときはどう変わりますか
博士
閉鎖性ドレッシングは避けて、洗浄と抗菌処置を優先する。見極めが肝心じゃ
POINT
創傷治癒を促進する最大の因子は湿潤環境の維持です。浸出液中の細胞増殖因子が肉芽形成と上皮化を進めるため、感染徴候のない創にはドレッシング材による湿潤環境が有効です。一方、圧迫・痂皮・消毒・浮腫はいずれも治癒を妨げる要因で、特に消毒薬の細胞毒性には注意が必要です。創面環境調整の考え方で総合的にケアします。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:感染徴候のない創部の治癒を促進する要因はどれか。
解説:正解は3です。現代の創傷治療はモイスト・ウンド・ヒーリング(湿潤環境下療法)が標準で、浸出液に含まれる各種細胞増殖因子を保持することで肉芽形成と上皮化が進みます。乾燥やかさぶた形成はむしろ治癒を遅らせるため、ドレッシング材で適切な湿潤環境を維持することが推奨されています。
選択肢考察
-
× 1. 圧迫
圧迫は止血目的で用いられる一時的な処置であり、持続的な圧迫は局所の血流を妨げ酸素・栄養の供給を減らすため、むしろ治癒を遅延させます。
-
× 2. 痂皮
痂皮(かさぶた)は乾燥した浸出液と血液成分の塊で、上皮細胞が這い進む際の物理的障害となります。湿潤環境では痂皮を形成せず治癒する方が早いとされています。
-
○ 3. 湿潤
浸出液に含まれる線維芽細胞増殖因子や血管内皮増殖因子などが保たれることで肉芽が形成され、上皮細胞も移動しやすくなり治癒が促進されます。感染徴候がない前提ではこれが最適解です。
-
× 4. 消毒
消毒薬は細菌のみならず線維芽細胞や好中球などの修復に関わる細胞にも細胞毒性を示します。感染がない創では消毒ではなく生理食塩水や水道水での洗浄が推奨されます。
-
× 5. 浮腫
浮腫は間質液の貯留で毛細血管の循環を障害し、酸素や栄養素の拡散距離を延長させます。組織の脆弱化も招き、創傷治癒を遅らせる因子となります。
創面環境調整(wound bed preparation)の概念TIMEを覚えておくと整理しやすいです。T(壊死組織Tissue)、I(感染Infection/炎症)、M(湿潤Moisture balance)、E(創縁Edge)の4要素を調整します。感染徴候(発赤・熱感・膿性滲出・疼痛増強)がある場合は閉鎖性ドレッシングを避け、洗浄と抗菌処置を優先します。
湿潤環境下療法の原則を理解し、創傷治癒を促進する因子と阻害する因子を区別できるかを問う問題です。
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