腰を守れ!ボディメカニクスで体位変換
看護師国家試験 第107回 午前 第37問 / 基礎看護学 / 日常生活援助技術
国試問題にチャレンジ
ボディメカニクスを活用して、看護師が患者を仰臥位から側臥位に体位変換する方法で正しいのはどれか。
- 1.患者の支持基底面を狭くする。
- 2.患者の重心を看護師から離す。
- 3.患者の膝を伸展したままにする。
- 4.患者の体幹を肩から回転させる。
対話形式の解説
博士
今日はボディメカニクスを活用した体位変換を学ぶぞ。看護師の腰痛予防にも直結する大事な技術じゃ。
サクラ
はい、臨床実習でも先生がいつも『腰を痛めないように』って言っていました。
博士
そのとおりじゃ。ボディメカニクスとは、身体の構造と機能を利用して最小の力で安全に動作する力学原理のことじゃ。
サクラ
選択肢を見てみると、支持基底面を狭くする、重心を離す、膝を伸展、肩から回転…どれも正しそうな感じがしてしまいます。
博士
そこが引っかけじゃな。ここで大事なポイントは『看護師側と患者側でやることが逆』という点じゃ。
サクラ
逆、ですか?
博士
そう。看護師は支持基底面を『広く』、重心を『低く』して安定する。一方、患者は支持基底面を『狭く』してコンパクトにした方が動かしやすいのじゃ。
サクラ
あ、それで選択肢1が正解なんですね!
博士
その通り!両腕を胸で組ませ、膝を立ててもらうと、体全体がコンパクトになって小さな力でくるっと回せる。
サクラ
選択肢2の『患者の重心を看護師から離す』はどうですか?
博士
逆じゃ。患者に近づいて互いの重心を近づけるほど、てこの原理がきいて楽に動かせる。離すと持ち上げるような力が必要になり、腰を痛めるのじゃ。
サクラ
3の『膝を伸展したまま』もダメなんですね。
博士
膝を伸ばしたままだと体が長くて重い棒のようになる。膝を立ててもらうことで、下肢から回転させる『トルクの原理』が使えるのじゃ。
サクラ
トルクって回転の力ですよね?
博士
そうじゃ。膝を立てた状態で両膝を倒すと、骨盤が回り、体軸がひねられて上半身が自然に追随する。これが4の『肩から回転させる』が間違いな理由でもある。
サクラ
肩から回すと首や肩に負担がかかりそうですね。
博士
その通り。正しくは下半身(膝)から回転させて上半身がついてくる、という流れじゃ。
サクラ
まとめると、患者は小さく・看護師は広く安定、お互い近づく、下肢から回す、ですね。
博士
完璧じゃ!さらにボディメカニクス8原則も覚えておくのじゃ。支持基底面を広く、重心を低く、対象と近づく、大きな筋群を使う、てこの原理、水平移動、身体をねじらない、ベッド高を調整、じゃ。
サクラ
ベッドの高さも大事なんですね。
博士
前傾姿勢で腰を丸めると椎間板に大きな負担がかかる。ベッドは看護師の腸骨前上方あたりまで上げると、腰の負担が激減するのじゃ。
サクラ
身体の使い方ひとつで負担がこんなに変わるんですね!
POINT
本問はボディメカニクスの基本を問う設問で、正解は『患者の支持基底面を狭くする』です。患者はコンパクトに、看護師は支持基底面を広く重心を低く保ち、互いに近づいて下肢から回転させるのが原則です。トルクの原理、てこの原理、ベッド高調整などの8原則を身につけることで、患者の安全と看護師自身の腰痛予防の両方を実現でき、長く働くための土台になる重要技術です。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:ボディメカニクスを活用して、看護師が患者を仰臥位から側臥位に体位変換する方法で正しいのはどれか。
解説:正解は1の『患者の支持基底面を狭くする。』です。ボディメカニクスとは、人間の身体の構造と機能を活用し、最小の力で安全・効率的に動作を行う力学的原理を指します。体位変換では患者の手足を体幹に寄せて身体をコンパクトにまとめることで支持基底面を狭くし、少ない力で回転させやすくします。一方、看護師側は足を前後・左右に開いて支持基底面を広くとり、重心を低くすることで安定性を確保します。さらに患者との距離を近づけ重心を合わせ、大きな筋群を使い、てこ・トルクの原理を用いて膝を立ててから下肢から回転させると、上体が自然に追随して円滑に側臥位へ移動できます。
選択肢考察
-
○ 1. 患者の支持基底面を狭くする。
両腕を胸に組み、両膝を立てるなど身体をコンパクトにまとめると、患者の支持基底面が狭まり小さな力で体位変換できます。看護師側は逆に広くとって安定させます。
-
× 2. 患者の重心を看護師から離す。
患者と看護師の重心を近づけるほど少ない力で動かせます。離すと持ち上げるような力が余分に必要になり、腰部への負担が増します。
-
× 3. 患者の膝を伸展したままにする。
膝を伸展したままでは身体が長くなり、回転に大きな力が必要です。膝を立ててコンパクトにすることでトルクを効率的に利用できます。
-
× 4. 患者の体幹を肩から回転させる。
肩から回すと頸部・肩関節に無理な負担がかかります。膝を立てて下肢(下半身)から回転させると体軸回旋運動が誘発され、上半身が自然に追随します。
ボディメカニクス8原則は頻出です。(1)支持基底面を広くする(看護師側)(2)重心を低くする (3)対象との重心を近づける (4)大きな筋群を使う (5)てこの原理を活用 (6)水平移動を優先 (7)身体をねじらない (8)ベッド高を調整し前傾しない。看護師の腰痛予防にも直結するため、臨床でもしっかり身につけましょう。
体位変換におけるボディメカニクスの基本原理(支持基底面・重心・トルク)の理解を問う問題です。
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