湯船から立ち上がる瞬間が危ない!入浴と血圧の関係
看護師国家試験 第107回 午前 第38問 / 基礎看護学 / 日常生活援助技術
国試問題にチャレンジ
入浴の際に血圧が低下しやすい状況はどれか。
- 1.浴槽に入る前に湯を身体にかけたとき
- 2.浴槽の湯に肩まで浸かったとき
- 3.浴槽から出たとき
- 4.浴室から脱衣所に移動したとき
対話形式の解説
博士
今日は入浴中の血圧変化を学ぶぞ。特に高齢者の入浴事故は冬場に急増する大きな問題じゃ。
アユム
はい、ヒートショックという言葉も聞いたことがあります。
博士
よい知識じゃ。まず入浴の三大作用を押さえよう。温熱作用・静水圧作用・浮力作用じゃ。
アユム
温熱は温かさ、浮力は軽くなる感じ…静水圧は何ですか?
博士
水の深さに応じて体にかかる圧力じゃ。肩まで浸かると下肢が強く圧迫され、下肢の静脈から心臓への血液の戻り(静脈還流)が増えるのじゃ。
アユム
それで浴槽の中では血圧がそこまで下がらないんですね。
博士
うむ。温熱で血管が拡張しても、静水圧が下肢からの還流を支えてくれるから、血圧はある程度保たれておる。
アユム
では選択肢1のかけ湯はどうですか?
博士
かけ湯は急な温度差を防ぐ大切な準備行為じゃが、血圧への影響は小さい。血圧低下というほどではないのう。
アユム
2の『肩まで浸かったとき』は、静水圧のおかげで大丈夫なんですね。
博士
そのとおり。むしろ直後は一時的に血圧が上昇することもあるぞ。副交感神経優位となり徐々に下がるが、急降下ではない。
アユム
すると3の『浴槽から出たとき』が怪しいですね。
博士
大正解!これが最重要ポイントじゃ。立ち上がると静水圧が一気に消え、拡張した血管のまま重力で血液が下肢に貯まる。そこへ立位が加わるため、急激な起立性低血圧を起こすのじゃ。
アユム
失神や転倒の原因になりますね…
博士
さらに浴槽内で意識を失えば溺水事故にもつながる。高齢者の入浴中死亡はこの瞬間に多いのじゃ。
アユム
4の『脱衣所へ移動』は寒さで血圧が上がる方ですよね?
博士
その通り。寒い脱衣所では末梢血管が収縮して血圧が上がる。これもヒートショックの要因じゃが、『低下』という問いには合わんのう。
アユム
なるほど、正解は3で間違いないですね。
博士
ヒートショックの対策も押さえておくのじゃ。浴室と脱衣所の温度差を減らす、湯温は40℃以下、入浴時間10分以内、食後すぐや飲酒後の入浴は避ける、じゃ。
アユム
臨床でも家族指導に使えそうです。
博士
その通り。特に冬場は高齢者に入浴の声かけと見守りが欠かせん。一人暮らしの方には家族への連絡や見守りサービスも勧めるとよいぞ。
アユム
入浴ひとつにこんなに身体の反応があるとは驚きました!
POINT
本問は入浴時の血圧変動に関する設問で、正解は『浴槽から出たとき』です。静水圧の急な解除と立位への変化で起立性低血圧が起こりやすく、高齢者では失神・転倒・溺水につながります。温熱・静水圧・浮力という入浴の3作用と、ヒートショック予防の具体策(温度差解消・湯温・時間・食後飲酒後回避)を理解することは、国試でも臨床でも家族指導でも大いに役立つ知識です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:入浴の際に血圧が低下しやすい状況はどれか。
解説:正解は3の『浴槽から出たとき』です。浴槽に浸かっている間は、温熱作用による末梢血管拡張に加え、水中の静水圧が身体表面全体にかかることで下肢の静脈還流が促進され、血圧は比較的保たれています。しかし浴槽から立ち上がると、急に静水圧が解除されて末梢血管が拡張した状態のまま重力により血液が下肢に貯留し、さらに体位変換(臥位・座位→立位)が加わるため、静脈還流が急激に減少します。その結果、起立性低血圧を起こしやすく、めまい・失神・転倒・溺水といった重大事故につながります。高齢者ではこのリスクが特に高く、入浴中および入浴後の観察が重要です。
選択肢考察
-
× 1. 浴槽に入る前に湯を身体にかけたとき
かけ湯で皮膚が温まると末梢血管は拡張しますが、影響は小さく血圧低下は目立ちません。むしろ急な温度差を避けるために重要な準備行為です。
-
× 2. 浴槽の湯に肩まで浸かったとき
浸かった直後は温熱刺激で一時的に血圧が上昇し、その後徐々に副交感神経優位となり血圧は緩やかに低下しますが、静水圧による下肢からの静脈還流増加もあり急激な低下は起こりにくい状態です。
-
○ 3. 浴槽から出たとき
静水圧が急に解除されたうえに立位となるため、拡張した血管に血液が下肢へ貯留し、急激な血圧低下(起立性低血圧)を起こしやすい場面です。めまい・失神・転倒に注意が必要です。
-
× 4. 浴室から脱衣所に移動したとき
脱衣所が寒いと末梢血管が収縮して血圧は上昇します。ヒートショックの原因にはなりますが、『血圧低下』の観点では浴槽から出た瞬間より影響は小さいです。
入浴には温熱作用・静水圧作用・浮力作用の3つがあります。静水圧は水深が深いほど強くかかり、下肢静脈を圧迫して還流を助けます。ヒートショックは脱衣所→浴室→浴槽→浴室→脱衣所と移動するたびの血圧変動が原因で、特に冬季の高齢者で心筋梗塞・脳卒中・溺水の誘因となります。浴室・脱衣所の暖房、湯温40℃以下、入浴時間10分以内、食後すぐや飲酒後を避けるなどが予防策となります。
入浴の各段階における循環動態の変化を理解し、血圧が急降下しやすいタイミングを問う問題です。
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