高齢者の術後肺炎リスク〜肺活量低下がカギ
看護師国家試験 第106回 午後 第48問 / 老年看護学 / 健康状態・受療状況に応じた看護
国試問題にチャレンジ
高齢者に術後の呼吸器合併症が発症しやすい理由で正しいのはどれか。
- 1.残気量の減少
- 2.肺活量の低下
- 3.嚥下反射の閾値の低下
- 4.気道の線毛運動の亢進
対話形式の解説
博士
今回は高齢者の術後呼吸器合併症について学ぶぞ。高齢者は若い人に比べて術後に肺炎や無気肺を起こしやすいと言われるが、なぜか分かるかな?
アユム
うーん、体力がないから…でしょうか?
博士
大まかにはそうじゃが、具体的には加齢による呼吸機能の変化がいくつもあるのじゃ。整理しよう。
アユム
お願いします!
博士
まず肺活量は低下する。肺胞の弾性が落ち、呼吸筋(横隔膜・肋間筋)の筋力も落ち、胸郭も硬くなって膨らみにくくなる。結果、深呼吸や咳嗽の力が弱まるのじゃ。
アユム
それで選択肢の2番「肺活量の低下」が正解なんですね。
博士
その通り。肺活量が落ちると痰を出す力が弱まり、術後に麻酔や疼痛、臥床が加わると一気に無気肺や肺炎が起こりやすくなる。
アユム
1番の「残気量の減少」はどうですか?
博士
逆じゃ。加齢では残気量は「増加」する。肺の弾性が落ちて、息を吐き切っても肺に空気が残りやすくなるからじゃ。
アユム
残気量の増加は何を意味しますか?
博士
換気効率が落ちるということじゃな。古い空気が残りやすく、新鮮な空気との入れ替えが悪くなる。
アユム
3番の「嚥下反射の閾値の低下」は?
博士
これも逆じゃ。加齢では嚥下反射の閾値は「上昇」する。閾値が上がるということは反射が出にくくなるということ。むせにくくなって誤嚥性肺炎のリスクが上がるのじゃ。
アユム
ちょっと混乱しそうです。「閾値が上がる=反射が鈍くなる」なんですね。
博士
その通り。例えば電気が点くのに必要な電圧が上がれば、同じ刺激では点きにくくなる。それと同じじゃ。
アユム
4番の「気道の線毛運動の亢進」は?
博士
これも加齢では「低下」じゃ。線毛運動は気道内の異物や痰を喉の方へ運ぶ働き。これが落ちると、痰の排出が遅れて気道感染が起きやすくなるのじゃ。
アユム
つまり加齢では、肺活量↓、残気量↑、嚥下反射閾値↑、線毛運動↓、ということですね。
博士
完璧じゃ。さらに胸郭の柔軟性も低下、肺胞表面積も減少、免疫機能も落ちる。これらが複合して高齢者の術後肺炎リスクを高めるのじゃ。
アユム
予防のための看護はどうしますか?
博士
術前から呼吸訓練・禁煙指導、術後は早期離床・深呼吸訓練・インセンティブスパイロメトリー・口腔ケア・疼痛コントロール・頭部挙上での誤嚥予防などが重要じゃな。
アユム
呼吸器だけでなく、せん妄や筋力低下にも注意ですよね。
博士
その通り。高齢者術後管理は多面的な視点が欠かせんのじゃ。
POINT
高齢者に術後呼吸器合併症が多発する背景には、加齢による呼吸機能の多面的変化があります。肺活量の低下、残気量の増加、肺弾性の低下、呼吸筋筋力の低下、胸郭柔軟性の低下、嚥下反射と咳反射の閾値上昇、気道線毛運動の低下、免疫機能低下などが複合的に関与します。特に肺活量の低下は、咳嗽力の減弱と痰喀出困難を招き、術後の無気肺・肺炎・誤嚥性肺炎のリスクを高めます。看護として、術前からの呼吸訓練と禁煙、術後の早期離床、深呼吸・喀痰訓練、口腔ケア、適切な疼痛管理、頭部挙上による誤嚥予防などを組み合わせ、合併症予防を図ることが重要です。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:高齢者に術後の呼吸器合併症が発症しやすい理由で正しいのはどれか。
解説:正解は 2 です。加齢に伴い、肺胞の弾性低下、呼吸筋(横隔膜・肋間筋)の筋力低下、胸郭の硬化(胸椎の後弯や肋軟骨の石灰化)などが生じ、肺活量が低下する。肺活量が低下すると、深呼吸や咳嗽による痰の喀出力が弱まり、無気肺や術後肺炎、誤嚥性肺炎といった呼吸器合併症を起こしやすくなる。術後は麻酔・疼痛・臥床の影響も加わるため、呼吸リハビリテーション(深呼吸訓練、インセンティブスパイロメトリー、早期離床、口腔ケア)が合併症予防の鍵となる。
選択肢考察
-
× 1. 残気量の減少
加齢では肺の弾性低下により、息を吐き切っても肺に残る空気量(残気量)は増加する。減少ではない。残気量増加は換気効率の低下につながる。
-
○ 2. 肺活量の低下
加齢による肺胞弾性低下、呼吸筋筋力低下、胸郭硬化により肺活量は低下する。その結果、換気能力と痰喀出力が弱まり、術後の無気肺・肺炎リスクが高まる。
-
× 3. 嚥下反射の閾値の低下
加齢に伴い嚥下反射の閾値は「上昇」し、反射が鈍くなる(出にくくなる)。その結果、誤嚥性肺炎のリスクが上がる。閾値「低下」は反射が鋭敏になる意味で、逆の表現。
-
× 4. 気道の線毛運動の亢進
加齢により気道粘膜の線毛運動は「低下」する。その結果、異物や痰の排出が遅れ、気道感染や無気肺のリスクが高まる。亢進ではなく低下。
加齢に伴う呼吸器系の変化:肺活量低下、残気量増加、肺弾性低下、呼吸筋力低下、胸郭柔軟性低下、肺胞表面積の減少、嚥下反射と咳反射の閾値上昇、線毛運動低下、免疫機能低下。これらが複合して高齢者の術後肺炎・無気肺リスクを高める。予防策は術前からの呼吸訓練・禁煙、術後の早期離床・呼吸リハ・口腔ケア・疼痛コントロール・誤嚥予防(頭部挙上、嚥下評価)。せん妄・筋力低下・褥瘡なども術後合併症の要注意項目。
加齢による呼吸機能の変化を正確に理解し、術後呼吸器合併症のリスク要因を識別する問題。
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