高齢者の環境変化を読み解く
看護師国家試験 第113回 午前 第49問 / 老年看護学 / 高齢者の理解と生活
国試問題にチャレンジ
Aさん(86歳、女性)は、生まれ育った地域で、近所に住む友人と交流しながら1人で暮らしていた。買い物へ行く途中に転倒し、腰椎圧迫骨折(lumbar compression fracture)で入院治療を受けた。退院後は他県に住む長女夫婦と同居している。暮らし始めて間もなく、Aさんは「私はここで暮らして、新しい友人ができるかしら」と長女に訴えるようになり、徐々に口数が少なくなった。 このときのAさんの状況はどれか。
- 1.閉じこもり
- 2.廃用症候群(disuse syndrome)
- 3.セルフ・ネグレクト
- 4.リロケーションダメージ
対話形式の解説
博士
Aさんはどんな状況の変化を経験しておるかの?
サクラ
長年暮らした地域を離れて他県の長女宅に同居を始めました。友人とも離れています。
博士
そこで口数が減り、新しい友人ができるかと不安を訴えておる。何と呼ぶかの?
サクラ
住環境の変化に伴う心身の不調なので、リロケーションダメージですね。
博士
正解じゃ。リロケーションとは移転という意味で、人的・物的環境を失うことが鍵じゃ。
サクラ
閉じこもりはどう違うのでしょうか?
博士
閉じこもりは家の中から出ない生活範囲の縮小を指す。Aさんは外出しないとは書かれておらんのう。
サクラ
廃用症候群は身体機能低下が主体なので、心理的な訴えには当てはまりませんね。
博士
そう。セルフ・ネグレクトはどうじゃ?
サクラ
自分の衛生や健康管理を放棄する状態で、Aさんの状況とは違います。
博士
うむ。では支援として何ができるかの?
サクラ
地域のサークルやデイサービスへの参加を促したり、旧友との交流を電話や手紙で継続できるよう助けます。
博士
馴染みの品を身近に置くのも有効じゃぞ。
サクラ
家族と協力して早めに対応することで、うつや認知機能低下への進展を防ぎたいです。
POINT
リロケーションダメージは住み慣れた環境を離れ新しい場所に移ることで、人的・物的環境の喪失から不安・抑うつ・口数減少など心身の不調を生じる状態です。閉じこもり・廃用症候群・セルフ・ネグレクトとは異なります。Aさんには馴染みの品の持参、旧友との交流継続、地域活動への参加促進など、社会的つながりを再構築する支援が有効です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:Aさん(86歳、女性)は、生まれ育った地域で、近所に住む友人と交流しながら1人で暮らしていた。買い物へ行く途中に転倒し、腰椎圧迫骨折(lumbar compression fracture)で入院治療を受けた。退院後は他県に住む長女夫婦と同居している。暮らし始めて間もなく、Aさんは「私はここで暮らして、新しい友人ができるかしら」と長女に訴えるようになり、徐々に口数が少なくなった。 このときのAさんの状況はどれか。
解説:正解は4です。長年暮らした地域を離れ見知らぬ土地で同居を始めたことで、心理的・社会的な喪失からAさんは不安を抱えており、リロケーションダメージに該当します。
選択肢考察
-
× 1. 閉じこもり
閉じこもりは1日中ほとんど外出せず活動範囲が家の中に限られる状態です。Aさんは新しい友人を求める発言をしており、活動範囲の限定を示す情報はないため該当しません。
-
× 2. 廃用症候群(disuse syndrome)
廃用症候群は長期の臥床や不活動により筋萎縮・関節拘縮・心肺機能低下などが生じる状態で、身体機能低下が主体です。Aさんの訴えは心理社会的なもので該当しません。
-
× 3. セルフ・ネグレクト
セルフ・ネグレクトは自己の清潔・食事・医療など基本的な生活維持行動を放棄してしまう状態です。Aさんはそうした行動の放棄ではなく環境変化への適応困難を示しているため該当しません。
-
○ 4. リロケーションダメージ
リロケーションダメージは住み慣れた環境を離れ新たな場所へ移ったことで、友人・近隣・生活習慣といった人的・物的環境を失い、不安・抑うつ・口数減少・食欲低下などの心身不調を来す状態です。Aさんの状況に一致します。
リロケーションダメージを予防・軽減するには、移転前から本人が新しい環境に関われるよう情報を提供する・馴染みの品や写真を持ち込む・旧知の友人との交流を継続する・地域活動や趣味のサークルへの参加を促すなどが有効です。高齢者では認知機能低下や身体機能低下を引き起こすこともあり、家族・医療者の早期支援が重要です。
高齢者が住環境を変えた際に生じる心身の不調を表す用語と、その特徴を理解しているかを問う問題です。
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