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HIV感染症の基礎知識

看護師国家試験 第111回 午後 第46問 / 健康支援と社会保障制度 / 感染症と生活環境への対策

国試問題にチャレンジ

111回 午後 第46問

ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症(human immunodeficiency virus infection)で正しいのはどれか。

  1. 1.空気感染する。
  2. 2.無症候期がある。
  3. 3.DNAウイルスによる。
  4. 4.血液中のBリンパ球に感染する。

対話形式の解説

博士 博士

今日はHIV感染症について学ぼう。ヒト免疫不全ウイルスがCD4陽性T細胞などを破壊し、免疫力を低下させる進行性疾患じゃ。

アユム アユム

感染経路を教えてください。

博士 博士

主な経路は3つじゃ。性行為による感染、血液感染、母子感染じゃな。空気感染や飛沫感染、経口感染はしないので、日常生活での接触で感染することはない。選択肢1は誤りじゃ。

アユム アユム

正解の2番、無症候期について詳しく教えてください。

博士 博士

HIV感染症は3段階の経過をたどる。まず感染後2〜4週の急性期に発熱や咽頭痛などインフルエンザ様症状が出る。次に数年から十数年続く無症候期、そして免疫が著しく低下するAIDS発症期じゃ。

アユム アユム

無症候期は本当に何も起こっていないのですか?

博士 博士

いや、症状がないだけで、体内ではウイルス増殖とCD4細胞の減少が着実に進んでおる。だから早期診断と治療開始が重要なのじゃ。

アユム アユム

HIVはDNAウイルスですか?

博士 博士

違うのじゃ。HIVはレトロウイルス科の一本鎖RNAウイルスじゃ。宿主細胞内で逆転写酵素を使ってRNAをDNAに変換し、宿主ゲノムに組み込まれる。選択肢3は誤りじゃ。

アユム アユム

DNAウイルスとRNAウイルスの区別はどう覚えればよいですか?

博士 博士

主なDNAウイルスはヘルペス族、アデノ、HBV、HPV、天然痘など。RNAウイルスはコロナ、インフル、ノロ、麻疹、HCV、HIVなど。迷ったら「風邪系はRNA」と覚えるとよい。

アユム アユム

HIVはBリンパ球に感染しますか?

博士 博士

違う、CD4受容体を持つヘルパーT細胞、マクロファージ、樹状細胞が標的じゃ。Bリンパ球にはCD4分子がない。選択肢4も誤りじゃ。

アユム アユム

AIDSの診断基準は?

博士 博士

CD4陽性T細胞数200/μL未満、またはニューモシスチス肺炎、カポジ肉腫、カンジダ症など23の指標疾患のいずれかを発症した場合じゃ。

アユム アユム

治療は進歩しているのですか?

博士 博士

うむ、抗レトロウイルス療法(ART)の進歩で、早期治療すればほぼ健常人と同等の寿命が期待できる慢性疾患となっておる。予防内服のPEPやPrEPも普及してきた。

アユム アユム

看護師として気をつけることは?

博士 博士

スタンダードプリコーション、つまり標準予防策を徹底することじゃ。血液・体液への曝露を防ぎ、針刺し事故時は速やかにPEPを開始する。患者の秘密保持も重要じゃよ。

アユム アユム

ありがとうございました。

POINT

HIVはレトロウイルス科のRNAウイルスで、CD4陽性T細胞やマクロファージに感染します。感染経路は性行為・血液・母子感染の3つで、空気感染はしません。急性期・無症候期・AIDS発症期の3段階をたどり、無症候期にも体内でウイルスは増殖を続けます。抗レトロウイルス療法の進歩により慢性疾患として管理可能となっています。正解は選択肢2です。

解答・解説

正解は 2 です

問題文:ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症(human immunodeficiency virus infection)で正しいのはどれか。

解説:正解は 2 です。HIV感染症はヒト免疫不全ウイルス(HIV)がCD4陽性Tリンパ球やマクロファージに感染し、免疫機能を徐々に破壊していく進行性疾患です。臨床経過は感染後2〜4週間の急性期、その後数年〜十数年続く無症候期、免疫機能低下により日和見感染症や悪性腫瘍を発症するAIDS発症期の3段階をたどります。無症候期にも体内ではウイルス増殖とリンパ球破壊が進行しているため、早期診断と抗レトロウイルス療法(ART)の開始が予後改善の鍵となります。

選択肢考察

  1. × 1.  空気感染する。

    HIVは空気感染・飛沫感染・経口感染はしません。主な感染経路は性行為による感染、血液感染(針刺し事故・輸血・注射器使い回しなど)、母子感染(経胎盤・産道・母乳)の3つです。日常生活の接触で感染することはありません。

  2. 2.  無症候期がある。

    急性期を過ぎた後、数年から十数年にわたり自覚症状のない無症候期(キャリア期)が続きます。この期間も体内ではウイルス増殖とCD4細胞の減少が進行しており、未治療のままだとAIDS発症期に移行します。

  3. × 3.  DNAウイルスによる。

    HIVはレトロウイルス科に属する一本鎖RNAウイルスです。宿主細胞内で逆転写酵素によりRNAをDNAに変換し、宿主ゲノムに組み込まれるのが特徴です。DNAウイルスにはヘルペスウイルスやアデノウイルス、HBVなどがあります。

  4. × 4.  血液中のBリンパ球に感染する。

    HIVはCD4分子を受容体として利用するため、CD4陽性Tリンパ球(ヘルパーT細胞)やマクロファージ、樹状細胞に感染します。Bリンパ球にはCD4分子がなく、HIVの主要標的ではありません。

AIDS発症の基準はCD4陽性T細胞数が200/μL未満、またはニューモシスチス肺炎、カポジ肉腫、カンジダ症、サイトメガロウイルス感染症など23の指標疾患(厚生労働省の基準)のいずれかを発症した場合です。現在は抗レトロウイルス療法(ART)の進歩により、早期治療でほぼ健常人と同等の寿命が期待できる慢性疾患となっています。妊婦のスクリーニングや針刺し後予防内服(PEP)、曝露前予防(PrEP)なども普及しています。

HIVの感染経路・ウイルスの性状(RNA vs DNA)・標的細胞・病期の特徴を総合的に問う問題です。