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HIV感染症の最新知識2023─保健所での匿名検査と治療の現在地

看護師国家試験 第112回 午前 第33問 / 健康支援と社会保障制度 / 感染症と生活環境への対策

国試問題にチャレンジ

112回 午前 第33問

ヒト免疫不全ウイルス<HIV>感染症(human immunodeficiency virus infection)について正しいのはどれか。

  1. 1.令和2年(2020年)の新規感染者数は10年前に比べ増加している。
  2. 2.日本では異性間の性的接触による感染が最も多い。
  3. 3.早期に発見して治療を開始すれば完治する。
  4. 4.保健所でのHIV検査は匿名で受けられる。

対話形式の解説

博士 博士

今回はHIV感染症の問題じゃ。HIVとAIDSの違いを説明できるかな?

サクラ サクラ

HIVはウイルスで、AIDSはそのウイルスで引き起こされる病気…ですよね?

博士 博士

惜しい、もう一歩じゃ。HIVはヒト免疫不全ウイルスそのもの、AIDSはHIVによって免疫機能が破綻し、23種類の指標疾患のいずれかを発症した状態を指す。感染イコール発症ではないのじゃ。

サクラ サクラ

なるほど、HIV感染者がすぐAIDS患者になるわけじゃないんですね。

博士 博士

そうじゃ。適切な治療を続ければAIDS発症を長期間抑えられる。さて選択肢1の新規感染者数は増加しているかな?

サクラ サクラ

なんとなく増えていそうなイメージですが…

博士 博士

実は減少傾向じゃ。2010年は約1,075件、2020年は約750件と明らかに減っている。検査体制の整備と予防啓発が効いておるのじゃな。

サクラ サクラ

そうなんですね。選択肢2は日本では異性間が最多とあります。

博士 博士

これは誤り。日本では男性同性間の性的接触による感染が新規HIV感染者の約7割を占めておる。世界全体では異性間が主流なので、国ごとの違いを押さえるのがポイントじゃ。

サクラ サクラ

国によって感染経路の傾向が違うんですね。選択肢3の完治はどうですか?

博士 博士

残念ながら完治はしない。ただし抗レトロウイルス療法(ART)でウイルス量を検出限界以下に抑えられるようになり、HIV感染者の平均余命は一般人口とほぼ変わらなくなってきた。

サクラ サクラ

治らないけど、ちゃんと治療すれば普通に生活できるんですね。

博士 博士

さらに『U=U』という概念も知っておこう。Undetectable=Untransmittable、ウイルス量が検出限界以下なら性的接触で相手に感染させないという国際的合意じゃ。

サクラ サクラ

それは希望が持てる話ですね。選択肢4の保健所の検査は?

博士 博士

これが正解。全国の保健所でHIV検査は無料・匿名で受けられる。住所地以外でも可能で、予約時も匿名でよい。

サクラ サクラ

匿名だから、受けることへの心理的ハードルが下がりますね。

博士 博士

その通り。早期発見・早期治療が本人の予後と感染拡大防止の両面で重要じゃ。PEP(曝露後予防)やPrEP(曝露前予防)も近年広がっておる。

サクラ サクラ

看護師としてもHIV検査の情報提供ができるようにしておきたいです。

POINT

HIV感染症の問題では、疫学的傾向・感染経路・治療・検査体制の4点を押さえることが重要です。日本では新規感染者数は近年減少傾向にあり、感染経路は男性同性間の性的接触が最多で世界全体の傾向と異なります。現在の医療ではARTによりAIDS発症を抑え、感染者の平均余命は一般人口と遜色なくなりましたが、体内からのウイルス完全排除は困難で完治はしません。全国の保健所ではHIV検査を無料・匿名で実施しており、早期発見のためにこの検査体制を知っておくことは看護師の基本です。『U=U』やPrEPなど新しい概念も含め、偏見を排した正確な知識が支援の出発点となります。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:ヒト免疫不全ウイルス<HIV>感染症(human immunodeficiency virus infection)について正しいのはどれか。

解説:正解は 4 です。HIV検査は感染の早期発見・早期治療につなげるため、全国の保健所で無料・匿名で実施されている。匿名性の確保は受検者のプライバシーを守り、検査を受けるハードルを下げるために極めて重要であり、予約時も匿名でよい。

選択肢考察

  1. × 1.  令和2年(2020年)の新規感染者数は10年前に比べ増加している。

    2010年の新規HIV感染者報告数は約1,075件、2020年は約750件と減少傾向にあり、近年は新規報告数が減少している。

  2. × 2.  日本では異性間の性的接触による感染が最も多い。

    日本では同性間(特に男性同性間)の性的接触による感染が最も多く、新規HIV感染者の約7割を占める。世界全体では異性間が主流だが日本は傾向が異なる。

  3. × 3.  早期に発見して治療を開始すれば完治する。

    抗レトロウイルス療法(ART)によりウイルス量を検出限界以下に抑え長期予後を改善できるが、体内からHIVを完全に排除する治療法は確立されておらず完治はしない。生涯にわたる服薬継続が必要。

  4. 4.  保健所でのHIV検査は匿名で受けられる。

    全国の保健所ではHIV検査を無料かつ匿名で受けることができる。住所地にかかわらず受検可能で、プライバシー確保のため予約時も匿名でよい。

HIVはCD4陽性Tリンパ球に感染・増殖し、細胞性免疫を破綻させて日和見感染症や悪性腫瘍を引き起こす。感染経路は性的接触・血液・母子感染の3つ。現在はART(抗レトロウイルス療法)によりU=U(Undetectable=Untransmittable:ウイルス量が検出限界以下なら性的接触で他人に感染させない)の概念が広く受け入れられ、早期治療が本人と公衆衛生の両面で重要視されている。曝露後予防(PEP)や曝露前予防(PrEP)も普及しつつある。

HIV感染症の疫学(新規感染者数の推移・感染経路)と検査体制、治療の位置づけを総合的に問う問題。保健所での無料匿名検査は必修知識。