外国人患者と病棟規則の衝突への対応
看護師国家試験 第104回 午後 第119問 / 看護の統合と実践 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(37歳、女性)は、アジアの出身で1か月前に日本人の夫(40歳)と娘(12歳)とともに日本に移住した。母国語以外に簡単な言葉であれば日本語と英語は理解できる。Aさんは、胸のしこりに気付き1週前に受診し、検査の結果、乳癌(breast cancer)と診断された。 入院初日。Aさんの同室の患者から、Aさんが使用している香水の香りが強く気分が悪くなるので何とかして欲しいという訴えがあった。病棟では香水の使用を禁止している。看護師が香水の使用をやめるように説明すると、Aさんは医師から何も言われていないと話した。 Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。
- 1.個室の利用を勧める。
- 2.同室の患者を説得する。
- 3.禁止されている理由を説明する。
- 4.医師の許可があればよいと説明する。
対話形式の解説
博士
Aさんは香水の使用が日常文化らしい。同室患者から苦情が出ておる。病棟では香水禁止じゃ。
サクラ
Aさんは医師から何も言われていないと話していますね。
博士
規則の存在を知らんかったのじゃろう。これは多文化看護の難しさじゃ。
サクラ
個室を勧めるのはどうですか?
博士
廊下にも香りが残る。経済的負担もあるし、規則違反を金で解決させる形になる。
サクラ
同室患者を説得するのは?
博士
違反しているのはAさんの方じゃ。被害者を説得するのは筋違いじゃのう。
サクラ
医師の許可があればよいというのは?
博士
病棟規則は他患者の安全のためで、医師の個別許可で覆るものではない。
サクラ
では禁止の理由を説明するのが正解ですね。
博士
その通りじゃ。化学療法中の嗅覚過敏、術後嘔気、化学物質過敏症など医療上の根拠がある。
サクラ
文化的に香水が日常のAさんには、頭ごなしに禁止と言うより理由を伝えることが大切ですね。
博士
多文化看護では尊厳を保ちながら、医療環境のルールを丁寧に伝えるのじゃ。
サクラ
母国語の対応表や通訳も使うとよいですね。
博士
無香料製品の紹介など代替案も用意すると、より受け入れやすい。
サクラ
文化を否定せず、理由と代替で協力を得る姿勢が看護師の役割なのですね。
POINT
病棟の香水禁止は化学療法による嗅覚過敏や術後嘔気、化学物質過敏症など医療上の必要性に基づきます。文化的背景の異なる患者にはその理由を丁寧に説明し、納得と協力を得ることが多文化看護の基本です。個室移動や医師の許可など回避的対応ではなく、規則の根拠を伝えると同時に無香料製品の紹介など代替案を提示し、患者の文化的尊厳と医療環境の保持を両立させます。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(37歳、女性)は、アジアの出身で1か月前に日本人の夫(40歳)と娘(12歳)とともに日本に移住した。母国語以外に簡単な言葉であれば日本語と英語は理解できる。Aさんは、胸のしこりに気付き1週前に受診し、検査の結果、乳癌(breast cancer)と診断された。 入院初日。Aさんの同室の患者から、Aさんが使用している香水の香りが強く気分が悪くなるので何とかして欲しいという訴えがあった。病棟では香水の使用を禁止している。看護師が香水の使用をやめるように説明すると、Aさんは医師から何も言われていないと話した。 Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。
解説:正解は 3 の禁止されている理由を説明することです。病棟で香水使用が禁止されているのは、化学療法や術後で嗅覚過敏や嘔気を起こしやすい患者が同居する医療環境特有の事情があるためです。文化的に香水使用が日常のAさんに対しては、規則の存在を伝えるだけでなく、その根拠を丁寧に説明し納得を得ることが多文化看護として最も適切な対応です。
選択肢考察
-
× 1. 個室の利用を勧める。
個室であっても廊下や共用部に香りが残り、根本的な解決にはなりません。経済的負担の問題もあり、規則違反を金銭で許容する形になるため不適切です。問題の本質は規則の理解と遵守にあります。
-
× 2. 同室の患者を説得する。
病棟規則を守るべきはAさんの側で、被害を受けている同室患者を説得するのは筋違いです。規則を守らせる相手が逆になっており、患者間トラブルの悪化を招きます。
-
○ 3. 禁止されている理由を説明する。
香水禁止は化学療法による嗅覚過敏、術後嘔気、アレルギー、医療機器への影響など医療上の必要性に基づきます。理由を説明し、文化的背景にも配慮しながら理解を求めることで納得した協力が得られ、多文化共生の看護につながります。
-
× 4. 医師の許可があればよいと説明する。
病棟規則は他患者の安全と療養環境の保持のために定められたもので、医師の個別許可で覆る性質のものではありません。医師の関与で解決する問題ではなく、規則の理由を説明するのが適切です。
多文化看護では患者の文化的習慣を尊重しつつ、医療環境で必要なルールを丁寧に説明することが基本です。香水・香料の使用制限は近年マスキング香害や化学物質過敏症の観点からも医療施設で広がっています。説明時には言語的配慮(通訳・対応表)とともに、否定ではなく理由提示と代替案(無香料製品の紹介など)で文化的尊厳を保ちます。
外国人患者の文化的背景と病棟規則の衝突場面で、看護師が取るべき対応を問う問題です。多文化看護と療養環境保持の両立が求められます。
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