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検査拒否の背景にある不安を支える看護

看護師国家試験 第107回 午前 第112問 / 看護の統合と実践 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

107回 午前 第112問

Aさん( 38歳、男性 )。23時ころ、徒歩で来院した。Aさんは胸を押さえ苦しそうに待合室で座っており、救急外来の看護師が声をかけると、Aさんは日本語を少し話すことができ、外出中に急に胸が痛くなったと話した。Aさんは英語は話せないようだった。Aさんは日本語学校の学生であり、Aさんの指定した番号に電話したところ、Aさんの妻につながり、日本語でのコミュニケーションが可能であった。妻は1時間後に病院に到着できるということだった。この病院には、夜間にAさんの母国語を話せる職員はいなかった。 Aさんの妻が、Aさんの国民健康保険証を持って救急外来に到着した。妻から聴取した情報によると、Aさんは特に既往はないが、時々頭痛があり、母国で市販されていた鎮痛薬を常用していたとのことであった。心電図でST上昇が認められ、Aさんと妻は、医師から「入院して冠動脈造影< CAG >を受けないと命の危険があるかもしれない」と説明を受けた。しかし、Aさんは「たくさんの費用は支払えないし、学校を休むのが心配だ」と検査を受けることを拒んだ。 このときの救急外来の看護師の説明で優先されるのはどれか。

  1. 1.検査の手順を説明する。
  2. 2.学校は退学にならないことを説明する。
  3. 3.宗教に応じた食事対応ができることを説明する。
  4. 4.医療費は国民健康保険が適用されることを説明する。

対話形式の解説

博士 博士

さて、心電図でST上昇。医師は命の危険がある可能性を説明したのに、Aさんは検査を拒んでおる。

アユム アユム

「お金が払えない」「学校を休むのが心配」と言っていますね。

博士 博士

拒否の背景を読み解くことが看護のキモじゃ。一番強い不安はどれじゃ?

アユム アユム

経済的な部分だと思います。費用が払えないというのは切実な訴えです。

博士 博士

そこじゃ。妻が国民健康保険証を持参してきたのがポイントじゃ。

アユム アユム

あ、保険加入済みなら3割負担ですね。

博士 博士

さらに高額療養費制度を使えば、自己負担の上限が決まっておるのじゃ。

アユム アユム

それを伝えれば「たくさんのお金は払えない」という不安が減りますね。

博士 博士

その通り。経済面の見通しが立てば、命を守る検査への同意を得やすくなるのじゃ。

アユム アユム

学校の件はどうでしょう?退学にならないと説明するのは…

博士 博士

それは看護師の権限外じゃ。確証のない保証をすると信頼を損ねるぞ。

アユム アユム

宗教の話も本人が訴えていないので優先度は低いですね。

博士 博士

その通り。本人が表明している不安から順に解消するのが意思決定支援の基本じゃ。

アユム アユム

検査の手順説明は、同意が得られてからですね。

博士 博士

うむ。ソーシャルワーカーと連携して生活面の支援を組み立てるのも忘れずにのう。

POINT

本問は患者が医療を拒否した際の看護師の対応を問うものです。拒否理由の中で最も切実な不安を優先的に解消するのが原則で、Aさんの場合は国民健康保険の適用や高額療養費制度を説明することで経済的不安を具体的に軽減できます。学校や宗教の話題など本人が訴えていない事柄や、同意前の手順説明は優先度が低く、まずは受検を阻む根本の不安を取り除く対話が求められます。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:Aさん( 38歳、男性 )。23時ころ、徒歩で来院した。Aさんは胸を押さえ苦しそうに待合室で座っており、救急外来の看護師が声をかけると、Aさんは日本語を少し話すことができ、外出中に急に胸が痛くなったと話した。Aさんは英語は話せないようだった。Aさんは日本語学校の学生であり、Aさんの指定した番号に電話したところ、Aさんの妻につながり、日本語でのコミュニケーションが可能であった。妻は1時間後に病院に到着できるということだった。この病院には、夜間にAさんの母国語を話せる職員はいなかった。 Aさんの妻が、Aさんの国民健康保険証を持って救急外来に到着した。妻から聴取した情報によると、Aさんは特に既往はないが、時々頭痛があり、母国で市販されていた鎮痛薬を常用していたとのことであった。心電図でST上昇が認められ、Aさんと妻は、医師から「入院して冠動脈造影< CAG >を受けないと命の危険があるかもしれない」と説明を受けた。しかし、Aさんは「たくさんの費用は支払えないし、学校を休むのが心配だ」と検査を受けることを拒んだ。 このときの救急外来の看護師の説明で優先されるのはどれか。

解説:正解は4です。Aさんが検査を拒否している直接の理由は「費用が払えない」「学校を休むのが心配」という経済的・生活上の不安です。拒否の背景にある不安をひとつずつ取り除くのが意思決定支援の基本で、特に受検を左右する経済面は優先度が高い項目です。妻が国民健康保険証を持参していることから、Aさんは日本の公的医療保険に加入しており、原則3割負担で済み、高額療養費制度も利用できます。看護師が医療費に関して具体的な見通しを伝え、経済的な不安を軽減することが、検査同意への最も重要な説明となります。

選択肢考察

  1. × 1.  検査の手順を説明する。

    患者が検査自体を拒否している段階で手順の説明を重ねても納得には至りません。まずは拒否の原因となっている不安を解消する対話が優先です。

  2. × 2.  学校は退学にならないことを説明する。

    学校の処遇は看護師の権限外で、確証のない保証は不適切です。学校対応は本人と学校で調整する課題であり、医療者が断定的に説明すべきではありません。

  3. × 3.  宗教に応じた食事対応ができることを説明する。

    Aさんは宗教上の配慮について訴えていません。本人が表明していない不安に先回りして説明するよりも、実際に訴えている経済的不安への対応が先です。

  4. 4.  医療費は国民健康保険が適用されることを説明する。

    国民健康保険証を提示しているため保険適用で自己負担は軽減されます。高額療養費制度も使えることを伝えると、経済的不安を具体的に軽減でき、検査の受諾につながりやすくなります。

外国人であっても適法に3か月を超えて滞在する場合は国民健康保険や社会保険への加入が義務づけられ、自己負担は原則3割です。高額療養費制度は所得区分に応じ自己負担額の上限を設定しており、救急搬送・入院時の支払い不安を大きく軽減します。院内のソーシャルワーカー(MSW)との連携も有効です。

医療行為を拒否する患者に対し、拒否理由の背景を読み取り優先的に解決すべき不安を見きわめる意思決定支援能力を問う問題です。