産褥期の排尿ケア!尿意がなくてもトイレに行く理由
看護師国家試験 第106回 午後 第102問 / 母性看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aさん(26歳、経産婦)は、夫(30歳)と長女(2歳)の3人で暮らしている。妊娠37週2日、これまでの妊娠経過に異常はない。9時に陣痛が開始し、10時に夫に付き添われ入院した。入院時、陣痛間欠9分、陣痛発作30秒であった。内診所見は子宮口2cm開大で、少量の羊水の流出を認めた。羊水混濁はなかった。21時30分に子宮口全開大、22時30分に3,200gの男児を正常分娩で出産した。会陰裂傷は第2度。23時に胎盤娩出し、子宮底の位置は臍高で硬く触れた。児のApgar〈アプガー〉スコアは1分後8点、5分後9点。分娩2時間後、子宮底の位置は臍下1横指で硬く触れた。分娩時出血量は360mL。 Aさんは、翌日1時に帰室した。5時、尿意はなかったが、トイレでの排泄を促し排尿がみられた。排尿後の観察で、子宮底の位置は臍下1横指で硬く触れ、悪露は赤色で量は中等量であった。会陰縫合部に異常はないが、痛みがあるため円座を使用している。 Aさんへの対応で適切なのはどれか。
- 1.「下腹部を温めましょう」
- 2.「水分摂取を控えましょう」
- 3.「腹筋を強化する体操をしましょう」
- 4.「尿意がなくても3〜4時間ごとにトイレに行きましょう」
対話形式の解説
博士
今日は産褥1日目のAさんのケアじゃ。分娩後の排尿ケアがテーマだぞ。
アユム
Aさんは5時に排尿できたようですが、尿意はなかったんですよね。どうして尿意がないんですか?
博士
よい質問じゃ。分娩時に胎児の頭が骨盤底を通過する際、膀胱や尿道、骨盤神経が圧迫を受ける。そのため産褥早期は尿意を感じにくくなる。
アユム
なるほど、神経が一時的に鈍くなるんですね。
博士
加えて会陰縫合部の痛みで排尿をためらう褥婦も多い。Aさんも第2度会陰裂傷の縫合部があり円座を使っているじゃろう。
アユム
尿意がないなら、我慢して膀胱に溜めてもいいんですか?
博士
いや、そこが危険なんじゃ。膀胱が充満すると子宮が押し上げられ側方に偏位し、子宮収縮が妨げられる。これが子宮復古不全や弛緩出血の原因となる。
アユム
じゃあ膀胱を空にしておくことが子宮復古に大事なんですね。
博士
その通り。産褥期の子宮復古3原則として『膀胱の空虚化』『早期離床』『早期授乳』を覚えておくとよい。
アユム
だから『尿意がなくても3〜4時間ごとにトイレに行きましょう』が正解なんですね。
博士
その通りじゃ。他の選択肢も確認するぞ。『下腹部を温める』はどう思う?
アユム
温めたら血行がよくなって復古にいい気がしますが…。
博士
それは危ない発想じゃ。Aさんは子宮底臍下1横指で硬く触れ、悪露も中等量で復古は順調。温罨法は血管拡張で出血を助長し復古不全を起こすリスクがある。
アユム
『水分摂取を控えましょう』はどうですか?
博士
これも誤り。水分制限は尿量減少で尿路感染や便秘、母乳分泌低下を招く。むしろ授乳期は十分な水分摂取が必要じゃ。
アユム
『腹筋を強化する体操』は?
博士
産褥早期は腹直筋離開や会陰部治癒中で腹筋強化は不適切。産褥体操はまず骨盤底筋群運動や呼吸法から段階的に始めるのじゃ。
アユム
産褥期の排尿ケアは子宮復古と感染予防のために定期的に行うんですね。覚えました!
POINT
産褥早期の排尿ケアは子宮復古と尿路感染予防の両面で重要です。分娩時の児頭通過による膀胱・尿道・骨盤神経の一時的な圧迫により尿意が減弱するため、褥婦は膀胱充満に気づきにくく、結果的に子宮収縮が妨げられて弛緩出血や子宮復古不全のリスクが高まります。したがって尿意の有無にかかわらず3〜4時間ごとに定期的に排尿を促すことが標準的なケアとなります。また会陰縫合部の痛みで排尿をためらう褥婦には円座や温水洗浄で痛み軽減を図り、排尿前後には子宮底の位置と硬度を必ず確認することが大切です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:Aさん(26歳、経産婦)は、夫(30歳)と長女(2歳)の3人で暮らしている。妊娠37週2日、これまでの妊娠経過に異常はない。9時に陣痛が開始し、10時に夫に付き添われ入院した。入院時、陣痛間欠9分、陣痛発作30秒であった。内診所見は子宮口2cm開大で、少量の羊水の流出を認めた。羊水混濁はなかった。21時30分に子宮口全開大、22時30分に3,200gの男児を正常分娩で出産した。会陰裂傷は第2度。23時に胎盤娩出し、子宮底の位置は臍高で硬く触れた。児のApgar〈アプガー〉スコアは1分後8点、5分後9点。分娩2時間後、子宮底の位置は臍下1横指で硬く触れた。分娩時出血量は360mL。 Aさんは、翌日1時に帰室した。5時、尿意はなかったが、トイレでの排泄を促し排尿がみられた。排尿後の観察で、子宮底の位置は臍下1横指で硬く触れ、悪露は赤色で量は中等量であった。会陰縫合部に異常はないが、痛みがあるため円座を使用している。 Aさんへの対応で適切なのはどれか。
解説:正解は 4 です。分娩時の児頭による骨盤内臓器の圧迫や会陰縫合部の痛みにより、産褥早期は尿意を感じにくく排尿が抑制されやすい。膀胱の過伸展は尿閉や尿路感染を招き、充満した膀胱は子宮の収縮を妨げて子宮復古不全や弛緩出血の原因となる。したがって、尿意がなくても3〜4時間ごとに定期的にトイレへ誘導し、意識的に排尿を促すことが適切なケアである。
選択肢考察
-
× 1. 「下腹部を温めましょう」
Aさんは子宮底が臍下1横指で硬く触れ悪露も正常範囲で、子宮復古は順調である。下腹部の温罨法は血管拡張による出血の助長や子宮復古不全のリスクがあり不適切。むしろ必要なら冷罨法を用いることもある。
-
× 2. 「水分摂取を控えましょう」
水分制限は尿量減少を招き、尿路感染や便秘、さらに母乳分泌の低下につながる。産褥期は母乳分泌のためにも十分な水分摂取が推奨される。
-
× 3. 「腹筋を強化する体操をしましょう」
産褥早期は腹直筋離開や会陰縫合部の治癒途中であり、腹筋を強化する体操は不適切。まずは産褥体操として骨盤底筋群運動や軽い呼吸法・下肢運動から段階的に進める。
-
○ 4. 「尿意がなくても3〜4時間ごとにトイレに行きましょう」
分娩時の骨盤神経圧迫や会陰部痛による尿意減弱が生じる時期。膀胱充満は子宮復古を妨げ尿路感染の誘因ともなるため、3〜4時間ごとに定期的に排尿を促すのが適切。
産褥期の子宮復古には『膀胱の空虚化』『早期離床』『早期授乳』が重要な3要素として知られる。膀胱が充満すると子宮が上方・側方に偏位し収縮が妨げられるため、排尿時には子宮底の位置と硬度を必ず再確認する。尿意減弱は分娩時の児頭による膀胱・尿道・骨盤底神経の圧迫が原因で、通常は数日で回復する。会陰部痛で排尿をためらう褥婦には円座の使用や温水での外陰部洗浄など排尿時の痛み軽減の工夫も併用する。
産褥早期における尿意減弱の生理と、膀胱充満が子宮復古に与える影響を理解し、定期排尿を促すケアが選べるかを問う問題。
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