見逃さない、伝える、記録する。外来で出会う「もしかして虐待?」への向き合い方
看護師国家試験 第114回 午後 第62問 / 小児看護学 / 子どもと家族を取り巻く環境
国試問題にチャレンジ
保護者による子どもへの虐待に対する外来の看護師の対応で適切なのはどれか。
- 1.子どもの全身の観察では、保護者の同意を得る必要がある。
- 2.プライバシー保護のため、他職種との情報共有はしない。
- 3.子どもや保護者の発言内容や様子を記録に残す。
- 4.保護者の同席のもと子どもから話を聞く。
対話形式の解説
博士
今日は外来における児童虐待への対応がテーマじゃ。看護師は最初に子どもと接する職種の一つだから、サインを拾う最前線にいるのじゃよ。
アユム
虐待ってどんな種類があるんでしょうか?
博士
児童虐待防止法で定められておるのは、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待の4つじゃ。面前DVを子どもに見せるのも心理的虐待にあたるぞ。
アユム
外来でどんなサインに注目すればいいですか?
博士
受傷機転と所見が合わない、説明がころころ変わる、受診が遅れている、新旧入り混じった打撲痕、不自然な熱傷、年齢に見合わない発育不良などはレッドフラッグじゃ。子どもの怯えた目線や保護者を伺う様子も大事なサインじゃな。
アユム
選択肢1の「全身の観察に保護者の同意を得る」というのは丁寧そうに聞こえますが…?
博士
通常診療として必要な観察は同意の有無で省略するものではない。特に虐待が疑われる場面では子どもの安全確保が最優先で、観察を渋ることはむしろ重大な所見の見落としにつながるのじゃ。
アユム
選択肢2の「他職種と情報共有しない」はどうですか?プライバシーは大事だと思いますが…。
博士
通告や情報共有は児童虐待防止法上、守秘義務違反にはならんのじゃ。むしろ通告は法的義務で、医師、MSW、児童相談所、警察、保健所、学校など多職種・多機関で動かないと子どもは守れん。
アユム
なるほど、守秘義務は子どもの命より上ではないんですね。
博士
その通りじゃ。そして選択肢3の記録こそ看護師の重要な役割。子どもの言葉は要約せず、できるだけそのままの表現で残すのが鉄則じゃ。「パパに叩かれた」と言ったら「パパに叩かれた」と書く。
アユム
「不適切な養育が疑われる」みたいな抽象表現ではダメということですね。
博士
その通り。傷の場所・形・大きさ・色調・新旧の混在、写真撮影の有無まで具体的に。これが後の医学的判断や司法手続きを支える根拠資料になるのじゃ。
アユム
選択肢4の「保護者同席で子どもから話を聞く」というのは、子どもが安心できそうにも思えますが…。
博士
加害者である可能性のある相手が目の前にいると、子どもは正直に話せん。別室で、信頼できる大人がそばにいる環境で、年齢に応じた言葉で穏やかに聴くのが原則じゃ。誘導尋問にならぬよう注意するのも大切じゃぞ。
アユム
外来看護師は気づいて、記録して、つなぐ役割なんですね。
博士
その通り。一人で抱え込まず、院内虐待対応チームや児童相談所(189)に速やかにつなぐ姿勢が、子どもの命を救うのじゃ。
POINT
児童虐待が疑われる場面で外来看護師に求められるのは、客観的な観察と記録、そして多職種連携です。子どもや保護者の発言は本人の言葉そのままで残し、損傷の所見も部位や色調まで具体的に記載することで、医学的判断や通告後の手続きを支える根拠となります。全身観察は通常の診療行為であり保護者同意の有無に左右されず、聞き取りは保護者と分けて個別に行うのが原則です。虐待を「疑った」段階で市町村や児童相談所への通告義務が生じる点は、看護師が必ず押さえておきたい法的知識です。最前線にいる看護師の気づきが、子どもの安全と将来を守る第一歩となります。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:保護者による子どもへの虐待に対する外来の看護師の対応で適切なのはどれか。
解説:正解は 3 です。虐待が疑われる場合、看護師には子どもや保護者の発言・態度・身体所見を、主観を交えず客観的に記録する役割がある。聴き取った言葉はそのままの表現で残し、損傷の部位・形状・新旧、保護者の説明と所見の整合性などを詳細に記録することが、その後の通告、医学的判断、児童相談所や警察での対応、法的手続きを支える根拠となる。
選択肢考察
-
× 1. 子どもの全身の観察では、保護者の同意を得る必要がある。
受診時の全身観察は診療行為として通常行われるアセスメントであり、虐待が疑われる場面では子どもの安全確保が最優先となるため、保護者の同意の有無に左右されない。
-
× 2. プライバシー保護のため、他職種との情報共有はしない。
虐待事例は医師、ソーシャルワーカー、児童相談所、行政、警察など多機関・多職種での連携が不可欠で、児童虐待防止法上、通告は守秘義務違反にあたらない。
-
○ 3. 子どもや保護者の発言内容や様子を記録に残す。
発言内容を本人の言葉のまま記録し、損傷部位や行動上の特徴を客観的に残すことは、判断や法的対応の根拠資料として極めて重要である。
-
× 4. 保護者の同席のもと子どもから話を聞く。
加害者の可能性がある保護者が同席すると子どもが本当のことを話せないため、別室・個別で聴取するのが原則である。
児童虐待防止法では身体的虐待・性的虐待・ネグレクト・心理的虐待の4類型が定められ、虐待を受けたと「思われる」段階で市町村・児童相談所への通告義務が発生する(同法第6条)。受傷機転と所見の不一致、説明の変遷、受診の遅れ、説明できない多発外傷、発育不良などはレッドフラッグである。記録は時刻・部位・大きさ・色調まで具体的に残し、可能であれば写真記録も取得する。
虐待が疑われる場面における外来看護師の役割と、客観的記録の重要性、多職種連携の原則を問う問題である。
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