シャント方向逆転の病態を見抜こう
看護師国家試験 第104回 午前 第61問 / 小児看護学 / 慢性疾患・障害のある子どもと家族への看護
国試問題にチャレンジ
肺高血圧が長期に持続し、肺血管抵抗が上昇することにより、短絡血流が主に左右短絡から右左短絡になった状態はどれか。
- 1.拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy)
- 2.総肺静脈還流異常症(total anomalous pulmonary venous return)
- 3.Fallot〈ファロー〉四徴症(tetralogy of Fallot)
- 4.Eisenmenger〈アイゼンメンジャー〉症候群(Eisenmenger syndrome)
対話形式の解説
博士
今日のテーマは肺高血圧で短絡が逆転する状態じゃ。
サクラ
左から右へのシャントが、いつの間にか右から左に変わるという現象ですね。
博士
心室中隔欠損などで長く左→右に血液が流れ続けると、肺血管が傷つき抵抗が上がっていくんじゃ。
サクラ
肺血管抵抗が体血管抵抗を超えると、流れが逆になるわけですね。
博士
その通り。これがアイゼンメンジャー症候群と呼ばれる病態じゃよ。
サクラ
逆転するとチアノーゼが出るのですか。
博士
静脈血が動脈系へ混ざるためSpO2は低下し、ばち指や多血症もみられるのじゃ。
サクラ
他の選択肢との違いも整理したいです。
博士
拡張型心筋症は心筋自体の収縮不全、総肺静脈還流異常症は肺静脈の戻り先の異常じゃな。
サクラ
ファロー四徴症は元から肺動脈狭窄で右→左ですね。
博士
そう、肺高血圧由来の逆転とは機序が違うのじゃ。
サクラ
早く外科治療すれば防げるのですね。
博士
肺血管病変が不可逆になる前の介入が鍵じゃ。覚えておくのじゃ。
POINT
アイゼンメンジャー症候群は、左→右短絡を伴う先天性心疾患の長期経過で生じる病態です。肺血管抵抗の上昇により短絡方向が右→左へ逆転し、チアノーゼ・多血症・ばち指などが出現します。不可逆化する前の早期手術が予後を左右します。臨床ではSpO2低下や心エコーでの推定肺動脈圧を継続観察し、感染や脱水による悪化を防ぐ援助が求められます。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:肺高血圧が長期に持続し、肺血管抵抗が上昇することにより、短絡血流が主に左右短絡から右左短絡になった状態はどれか。
解説:正解は4のEisenmenger〈アイゼンメンジャー〉症候群です。先天性心疾患で生じる左→右短絡が長期間続くと、肺血管が高い圧と血流に晒されて器質的に変化し、肺血管抵抗が体血管抵抗を上回ります。その結果として血流の向きが逆転し、右→左短絡となってチアノーゼをきたした状態を指します。
選択肢考察
-
× 1. 拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy)
心筋自体の障害により左室が拡張し、収縮力が低下してうっ血性心不全を生じる疾患であり、シャント疾患ではありません。
-
× 2. 総肺静脈還流異常症(total anomalous pulmonary venous return)
本来左房に戻るべき肺静脈が右房系へ還流する先天性心疾患で、出生直後からチアノーゼが出現します。短絡方向の逆転という機序ではありません。
-
× 3. Fallot〈ファロー〉四徴症(tetralogy of Fallot)
心室中隔欠損・肺動脈狭窄・大動脈騎乗・右室肥大を特徴とし、肺動脈狭窄により右室圧が上昇して当初から右→左短絡を呈する疾患です。肺高血圧由来ではありません。
-
○ 4. Eisenmenger〈アイゼンメンジャー〉症候群(Eisenmenger syndrome)
心室中隔欠損などの左→右短絡疾患で肺血管抵抗が著明に上昇し、シャント方向が右→左へ逆転してチアノーゼを呈する病態であり設問の記述と一致します。
短絡疾患を放置すると不可逆的な肺血管病変(叢状病変)が完成し、根治手術の適応外となります。早期の手術介入とSpO2・心エコーによる経過観察が重要です。覚え方は「左右シャント+肺高血圧→逆転=アイゼンメンジャー」。
左→右短絡疾患が長期化したとき、肺血管リモデリングにより右→左短絡へ転じる病態名を問う問題です。
「慢性疾患・障害のある子どもと家族への看護」の関連記事
-
退院後の障害児育児——母親をひとりにしないための地域の入口
退院後の障害児を持つ母親への相談窓口の選定を問う問題。育児・心理・経済を包括的に扱える地域の第一窓口として保…
114回
-
おねしょは叱らない!夜尿症ケアの三原則を学ぼう
一次性夜尿症の保護者指導の要点を問う問題。生活指導の三原則「起こさない・あせらない・怒らない」と、就寝前水分…
114回
-
ステロイドと闘う6歳男児へ伝える、たった一つの大切な習慣
小児ネフローゼ症候群でステロイド治療開始7日目、症状改善期にあるA君への指導内容を選ぶ問題。ステロイドによる易…
114回
-
新生児のチアノーゼと先天性心疾患
先天性心疾患のうち、肺血流が減少してチアノーゼを呈する型(右→左短絡)と左→右短絡型の区別を理解しているかが問…
113回
-
家族まるごと支える在宅看護 — きょうだい児と社会資源
小児の在宅療養支援における家族全体への視点(本人の意向尊重、きょうだい児支援、社会資源活用、介護負担分散)を…
112回