散瞳薬の落とし穴!眼底検査前に「緑内障ありますか?」と聞く理由
看護師国家試験 第109回 午後 第52問 / 成人看護学 / 感覚器・運動器系
国試問題にチャレンジ
散瞳薬を用いて眼底検査を受ける成人患者への対応で適切なのはどれか。
- 1.検査中は室内を明るくする。
- 2.散瞳薬の点眼は検査直前に行う。
- 3.検査前に緑内障( glaucoma )の有無を確認する。
- 4.検査後 1 時間で自動車の運転が可能になると説明する。
対話形式の解説
博士
今日は散瞳薬を使った眼底検査の看護について学ぶぞ。選択肢の中で適切な対応は3番、検査前に緑内障の有無を確認することじゃ。
アユム
緑内障の確認?散瞳薬って瞳を開くだけの薬ですよね。どうして緑内障が関係するんですか?
博士
良い質問じゃ。眼の中では「房水」という水が絶えず作られ、虹彩と角膜の間の「隅角」というところから排出されておる。この流出がうまくいかず眼圧が上がる病気が緑内障じゃ。
アユム
なるほど。で、散瞳薬と何の関係が?
博士
散瞳薬を点眼すると瞳孔が開くと同時に虹彩の根元が隅角側にぐっと押し寄せられる。もともと隅角が狭い閉塞隅角緑内障の人だと、その隅角が完全に塞がってしまうのじゃ。
アユム
塞がると房水が逃げ場を失って…眼圧が急上昇するんですね!
博士
その通り。これが急性緑内障発作で、激しい眼痛・頭痛・嘔吐・視力低下を起こし、放置すれば失明する恐ろしい病態じゃ。だから検査前に緑内障既往を必ず確認する。
アユム
他の選択肢はなぜダメなんですか?
博士
1の明るい室内はダメじゃな。瞳孔が開いていると光が入り放題で眩しく、眼底像の観察にも支障が出る。検査は暗室で行うのが鉄則じゃ。
アユム
2の検査直前の点眼は?
博士
散瞳薬は効果発現に20〜30分かかるのじゃ。直前では瞳孔が十分に開かず眼底周辺部が見えない。検査の30分前に点眼するのが基本じゃ。
アユム
4の1時間後に運転OKは…さすがにダメそうですね。
博士
散瞳効果は3〜5時間続く。その間は羞明と近見困難で運転は極めて危険じゃ。検査当日は運転を避けてもらうよう必ず説明する。
アユム
患者さんへの声かけで気をつけることはありますか?
博士
検査後は眩しさを感じやすいのでサングラスがあれば持参してもらう、公共交通機関や家族の送迎で来院してもらう、しばらく手元が見えにくいことを事前に伝えるなど、生活指導まで含めたケアが大事じゃよ。
アユム
散瞳薬ひとつでも全身と生活への影響まで配慮が必要なんですね。勉強になりました。
POINT
散瞳薬を用いた眼底検査では、瞳孔括約筋の弛緩により虹彩根部が隅角側に押し付けられ、閉塞隅角緑内障の患者で急性緑内障発作を誘発する危険があります。そのため検査前に緑内障の既往を問診し確認することが最優先の看護となります。検査自体は暗室で行い、散瞳薬は20〜30分前に点眼して十分に効果が出た状態で実施し、検査後は3〜5時間にわたり羞明や近見困難が続くため自動車運転を避けるよう指導します。日常の眼科看護において散瞳薬の適応と禁忌、時間経過による作用の変化を正しく伝えられることは、患者の安全確保と検査精度の両立に直結する重要な知識です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:散瞳薬を用いて眼底検査を受ける成人患者への対応で適切なのはどれか。
解説:正解は3の「検査前に緑内障の有無を確認する」である。散瞳薬(トロピカミド、フェニレフリンなど)は瞳孔括約筋を弛緩させ瞳孔を人為的に開大させる薬剤だが、その際に虹彩根部が前房隅角側に押し付けられ、房水流出路である隅角が狭小化・閉塞する。特に閉塞隅角緑内障や狭隅角眼の患者では、この作用によって急性緑内障発作(急激な眼圧上昇・眼痛・頭痛・嘔気・視力低下)を誘発する危険があるため、散瞳薬を使用する前には必ず緑内障の既往を問診し、閉塞隅角型が疑われる場合は散瞳を避けるかピロカルピンなどで対応する必要がある。
選択肢考察
-
× 1. 検査中は室内を明るくする。
散瞳中は光が網膜に過剰に入って強い羞明を生じ、検査眼底像のコントラストも損なわれる。眼底検査は暗室で行うのが原則で、明るい室内は不適切である。
-
× 2. 散瞳薬の点眼は検査直前に行う。
散瞳薬は点眼してから十分に効果が出るまで20〜30分程度必要である。直前の点眼では瞳孔が開ききらず、眼底周辺部までの観察ができない。検査の20〜30分前に点眼するのが適切。
-
○ 3. 検査前に緑内障( glaucoma )の有無を確認する。
閉塞隅角緑内障の患者に散瞳薬を用いると隅角閉塞を助長し、急性緑内障発作を引き起こす危険がある。緑内障の既往とそのタイプを問診で必ず確認する必要がある。
-
× 4. 検査後 1 時間で自動車の運転が可能になると説明する。
散瞳の効果は3〜5時間、薬剤によっては半日程度持続し、羞明やピント調節障害が残る。この間の自動車運転は事故リスクが高く、検査当日は運転を避けるよう指導する。
散瞳薬には副交感神経遮断薬(トロピカミドなど)と交感神経刺激薬(フェニレフリン)があり、しばしば併用される。副作用として急性緑内障発作のほか、口渇、頻脈、顔面紅潮などの全身作用もみられる。検査後の注意点として、羞明に対するサングラスの使用、近くのものが見づらくなること、運転・危険作業を避けること、見え方が戻るまで数時間かかることを説明する。緑内障治療中の患者では、主治医と事前に相談し使用可否を判断する。
散瞳薬使用の最大の禁忌である閉塞隅角緑内障のスクリーニングが必要であることを理解させる問題。検査環境(暗室)、点眼タイミング(30分前)、検査後の運転制限(数時間不可)も合わせて押さえたい。
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